【2026.6.12】飯森範親×パシフィックフィルハーモニア東京 公演感想 @東京芸術劇場 コンサートホール

コンサート日記
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こんにちは。いりこです。
2026年6月12日(金)、東京芸術劇場 コンサートホールにて行われた、パシフィックフィルハーモニア東京 第181回定期演奏会に行ってきました!

オケ単体の公演はあまり機会がないのですが、東京芸術劇場の改装後、行ってみたかったのでちょうどよかった!

公演に行かれた方とも、行かれてない方とも、この感動を共有できたら嬉しいです♪

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音楽監督・飯森範親とパシフィックフィルハーモニア東京

まずは指揮者、飯森 範親(いいもり のりちか)さんは、桐朋学園大学でジャン・フルネや小澤征爾らに師事し、ベルリン・ミュンヘンに留学した、日本を代表する指揮者のひとり。

東京交響楽団の専属指揮者やドイツ・ヴュルテンベルク・フィルの音楽総監督などを経て、山形交響楽団や日本センチュリー交響楽団など国内オーケストラで要職を歴任。山形響とのハイドン交響曲全曲演奏・録音という一大プロジェクトを2025年に完結させた実力派です。日本人作曲家の作品や、あまり演奏されないレパートリーを積極的に取り上げる姿勢でも知られ、今回のような凝ったプログラムは、まさに飯森さんならでは、という感じ。

そしてパシフィックフィルハーモニア東京は、1990年創立の「東京ニューシティ管弦楽団」を前身とし、2022年に飯森さんが音楽監督に就任したのを機に、現在の名称へ改称したオーケストラです。

2026年度の定期演奏会のテーマは「Listen the WORLD 〜心の境界線を超えて」。世界各地の自然や文化を旅するようなプログラムが並んでいて、今回の“世界一周”のような選曲も、このテーマに沿ったものなんですかね。

▼公式HP
https://ppt.or.jp/

プログラム/チケット情報

公演情報:東京芸術劇場

2026年6月12日(金) 19:00開演 東京芸術劇場 コンサートホール(東京都)

プログラム

  • ウォルトン:ヨハネスブルグ祝典序曲
  • マイケル・ブレイク:クウェラ
  • リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 Op.34
  • 矢代秋雄:交響曲

イギリスのウォルトンによる南アフリカの首都「ヨハネスブルク」の名を冠した祝典序曲、南アフリカ出身の現代作曲家マイケル・ブレイク、そしてリムスキー=コルサコフのスペイン情緒……と、世界各地の色彩を巡ったうえで、最後は日本を代表する管弦楽の名作・矢代秋雄の交響曲で締めくくる。趣向を凝らした聴きごたえのあるプログラムです。

チケット

S席:7,500円
A席:6,000円
B席:5,000円
C席:4,000円

ウォルトン:ヨハネスブルグ祝典序曲

1曲目から、いきなり祝祭感たっぷり!

イギリスの作曲家ウィリアム・ウォルトンが、1956年、南アフリカ・ヨハネスブルグの70周年を記念して書いた華やかな祝典序曲。打楽器も交えて躍動する、オープニングにぴったりの一曲です。

“アフリカらしい”異国情緒を横目に感じながらも、それ以上に洗練されて、キラキラして、映画音楽のようなワクワク感が前に出ていて、開演の高揚にぴったりでした。

マイケル・ブレイク:クウェラ

続いては、南アフリカの作曲家マイケル・ブレイク(1951年〜)の「クウェラ」。「クウェラ」とは、ズールー語で「立ち上がれ」を意味する言葉。1950年代の南アフリカの街角で生まれた、ティン・ホイッスル(ブリキ笛=ペニーホイッスル)によるストリート音楽を指します。

今回演奏されたのは弦楽オーケストラのための編曲版で、この日が日本初演となった一曲。コンサートではめったに出会えない、珍しいレパートリーです。その後YouTubeなどで探してみますが、なかなかこの曲見つけられず、、、一期一会だったんだなと少し悲しい。

実はこれが、今日の公演でいちばん印象に残った一曲でした。

独特でジャジー、どこか“チル”なリズム感。聴いている分には心地いいですが、いざ演奏する側にまわったら、このリズムを自分のものにするのはきっと相当大変なはず、、、

そして終盤、かすれるように鳴る弦楽器がなんとも印象的で。プログラム中いちばん短い曲だったのに、いちばん深く刺さって帰ってきました。

▼指揮の飯森さん自身も、この曲についてX(旧Twitter)で語っています。

リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 Op.34

ロシア五人組のひとり、リムスキー=コルサコフが1887年に書いた、まばゆいばかりのオーケストレーションが光る名曲。後のドビュッシーや、「管弦楽の魔術師」ことラヴェルが模範としたオーケストレーションの名手で、彼自身も「管弦楽法の魔術師」呼ばれているそうです(知らなかった)。

スペインの民俗的な旋律とリズムを散りばめた、全5曲からなる華麗な作品です。各楽器のソロが次々と活躍する、オーケストラの“ショーケース”のような一曲。

  • 第1曲 アルボラーダ
  • 第2曲 変奏曲
  • 第3曲 アルボラーダ
  • 第4曲 情景とロマの歌
  • 第5曲 アストゥリアのファンダンゴ

そしてどこをとっても耳に残る親しみやすい魅力的なメロディーが続きます。スペインの民謡を素材に、魔術師が料理したわけですから、名曲確実ですよね。

第1曲「アルボラーダ」からパーカッション全開!でリズムもメロディも底抜けに明るい!!!燦々と照りつける南欧の日差しを感じる印象的な幕開けです。第3曲でも同じテーマですが、イ長調→変ロ長調になって、ソロの活躍も目立ち上品なお色直し

そしてその間の第2曲「変奏曲」がまた憎らしいほど扇情的。個人的には一番好きなパートです。絶妙な半音階のモチーフもエモいですし、最後の変奏では唐突なハ長調は一気に体を持っていかれます。多幸感あふれる5分間。

そしてそして、第4曲「情景とロマの歌」”The スペイン” ”フラメンコ”といった趣の情熱的な曲。緊張感を最高まで高めて第5曲「アストゥリアのファンダンゴ」に突入します。第4曲のモチーフもふんだんに使って、カスタネット全開でまさにフラメンコの世界!最後にはアルボラーダも高速で再現されながら走り抜けます。

それにしても、どうしてこんなに“スペイン”を感じるのでしょうか。ビゼーの「カルメン」にも通じる、あの独特の音階……。

じつはこれ、スペイン風の音楽でよく使われるのがジプシー音階とも呼ばれるフリギア旋法で、隣り合う音が半音でぐっと迫ってくるのが特徴。さらに「ラ→ソ→ファ→ミ」と下りていって落ち着くアンダルシア終止が加わると、一気に“スペインっぽさ”が立ちのぼります。理屈がわかると、あの高揚感の正体が少し見えてきて面白いです。

矢代秋雄:交響曲

締めくくりは、日本の作曲家・矢代秋雄(1929〜1976)が1958年に書き上げた「交響曲」。日本フィルハーモニー交響楽団の委嘱による作品で、フランス仕込みの精緻な書法と、フランクを思わせる循環形式(全曲を共通の主題が貫く構成)が緻密に組み上げられた、日本のオーケストラ作品を代表する名作です。

  • 第1楽章 アダージョ ― モデラート
  • 第2楽章 スケルツォ:ヴィヴァーチェ
  • 第3楽章 レント
  • 第4楽章 アダージョ ― アレグロ・エネルジコ

大曲だけあって、聴きごたえはたっぷり。まず印象的だったのが打楽器の多さで、どこか日本のお祭り囃子を思わせる響きがありました。とくに第2楽章は、同じリズムが執拗なまでに一貫して流れていくのが、ぐっと耳に残ります。

そして第3楽章。これがもう、、、「恐怖」。「火の用心、カッカッ」の、あの拍子木のような“カッ”という音を出す打楽器まで登場し、パーカッション5人がかりで組み上げるリズムが、ひたすら一貫して流れ続ける。それがだんだん小さく、遠くへ去っていく——霊的、というか。真夜中の森で、得体のしれない狐の面をかぶった行列のそばに居合わせ、「私」は見つからないよう息をひそめている、そんな感覚で、ずっと緊張を強いられっぱなしでした。前半の楽しさとはまるで別世界の、忘れられない時間になりました。

おすすめ音源

今日のオーケストラ、飯森さん✕パシフィックフィルハーモニア東京の音をおうちでも、という方へ。

今回のような珍しい曲も、音楽配信サービスなら気軽に予習できます。各社の料金・音質・特徴はこちらの記事で比較しています。

さいごに

普段はピアノ・リサイタル中心の筆者にとって、ひさびさのオーケストラのみの公演。前半はとにかく楽しく、後半はずしりと深い、振れ幅の大きな一夜でした。

いちばん刺さったのは、マイケル・ブレイクの「クウェラ」。そして矢代の交響曲・第3楽章のあの恐ろしさは、しばらく忘れられそうにありません。飯森範親×パシフィックフィルハーモニア東京が、世界各地の“色”を見事に描き分けてくれた、贅沢なプログラムでした。

▼2026年6月のおすすめコンサートはこちら

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