こんにちは。いりこです。
2026年7月、マリオットの特典宿泊に必要なポイントが上がりました。上げ幅は平均5〜10%。公式発表はありませんが、複数の海外のマイル系ブログで取り上げられました。
値上げの理由は、マリオットからは説明されていません。ただ、この夏に出た2つのニュースを並べると、背景が見えてきます。
ひとつはマリオット。ホテルを運営するオーナー51社が、マリオット本社に連名で抗議の書簡を送りました。
もうひとつはヒルトン。ホテルがポイントの原資として払うお金を、すでに引き下げていたことがわかりました。
別々のニュースですが、扱っているものは同じです。ホテルがポイントのために払うお金。
それが重すぎるとホテル側が訴えたのがマリオット。重いからと会社が先に軽くしたのがヒルトンです。もめている最中か、すでに手を打ったか。段階が違うだけで、抱えている問題は同じですね。
2つのケースを順に見ていきます。
【ケース1】マリオット|オーナー51社が「負担が重すぎる」とマリオット本社に抗議
2026年6月、米ウォール・ストリート・ジャーナル(日経新聞のアメリカ版のような存在)が報じ、各紙が後を追いました。以下はその報道にもとづく内容です。マリオットのホテルを運営するオーナー51社が、CEOのアンソニー・カプアーノ氏と会長のデビッド・マリオット氏に、連名の書簡を送ったという内容です。
51社が抱えるホテルは、合わせて約1,000軒。決して小さな声ではありません。
言い分ははっきりしています。「ホテル側はプログラムのコスト負担が増え続け、マリオットは収入の取り分を増やし続けている」。
なぜホテルが苦しいのか
会員がポイントで泊まると、その割引分を実際にかぶるのはホテルです。部屋を掃除して、朝食を出して、光熱費を払うのはホテル。なのに支払いはポイント。
マリオット本社から補償は出ます。ただオーナー側は「エクスペディアのような予約サイト経由で泊まってもらったときと同じ水準まで払ってほしい」と求めています。裏を返せば、いまはそこに届いていないということですね。
いっぽうで、マリオット本社は潤っています。マリオットの提携クレジットカードから入る手数料収入は、2026年に35%増えて10億ドル近くになる見込み。マリオットの公式発表によると、Bonvoyの会員数は2026年3月末で約2億8,300万人。2025年の1年間だけで約4,300万人増えています。
そしてここが本丸。いまのポイントは、ホテルに泊まらなくても貯まります。スーパーやガソリンスタンドでカードを切って貯めたポイントで、ホテルに泊まる。マリオット本社には顧客がクレカを使った手数料が入り、オーナーにはポイント宿泊の負担だけが残る。オーナーが怒っているのは、この一点です。
マリオット側は「オーナーの懸念は真剣に受け止めている」として、混み合う日の補償を引き上げたこと、プログラムの財務情報をオーナーに初めて開示したことを挙げています。
【続報】マリオットの答え|オーナーの負担を約5%軽くした
この記事を書いているあいだに、続きが出ました。2026年8月3日に発表された、マリオットの第2四半期決算です。
51社の抗議に対して、マリオットが実際に何をしたのか。決算説明会で語られたのは、次の3つでした。
- オーナーが払う料率を、年初に世界共通で約5%引き下げた。マリオットは「業界でいちばん低い水準」と説明しています
- 混み合う日にポイントで泊まられたときの、オーナーへの払戻を引き上げた。51社が求めていたのは、まさにここでした
- ブランド基準をゆるめて、運営コストそのものを下げた
オーナーの言い分は、かなりの部分が通ったことになります。
いっぽうで本社側は、JPモルガン・チェースとアメリカン・エキスプレスとの提携クレジットカード契約を、あらためて長期で結び直しました(こちらは公式発表に明記されています)。説明会では、これで2026年に約3,000万ドル、2028年までには年1億〜1億2,500万ドルの上積みになると説明しています。会員数も、6月末で2億9,500万人を超えました。
ヒルトンとまったく同じ形です。オーナーの負担は軽くなり、本社に入るカードの手数料は増える。では、その差はどこが埋めるのか。残っているのは、会員のポイントだけです。
【ケース2】ヒルトン|ホテルが払うポイントの原資を、すでに引き下げていた
ヒルトンの話が出たのは、2026年7月28日の決算説明会です。公式のプレスリリースには書かれていないので、この点は先にお断りしておきます。CEOが投資家向けの場で説明した内容として、複数の業界メディアが報じています。
出てきたのは2つ。しかもどちらも、これから始まる話ではなくすでに動いている話でした。
- ホテルがヒルトン・オナーズに払うプログラム手数料を、世界共通で0.3%ポイント引き下げ(2026年1月から適用済み)
- 米国・カナダで「RISE」を導入。お客さまの満足度スコアが高いホテルは、さらに0.5%ポイント割引。すでに米国のホテルの約半数が対象
合わせるとホテルの利益率が0.75〜1.0%ポイント改善する、という説明でした。人件費も光熱費も保険料も上がり続けていて、ホテルの手元が苦しい。そこに手を打った、という文脈です。米国のホテルの約半数が、すでに両方の恩恵を受けているとのこと。
ひとつ、ややこしい言葉の注意を。日本語で「ロイヤルティ」と書くと2種類あります。今回下がるのは会員プログラムへの拠出金(loyalty=愛顧)のほうで、ブランドの使用料(royalty)は据え置きです。ここを混ぜると話が逆になってしまうので、念のため。
ブランド別に見ると、下げ幅がはっきり違う
オーナーがヒルトン本社に払う拠出金の割合です(分母は会員が泊まったときの宿泊料金)。数字はView from the Wingが加盟店向け資料を比較して報じたもので、ヒルトンの公表値ではありません。
| ブランド | 2025年の料率 | 2026年の料率 |
|---|---|---|
| ヒルトン | 4.3% | 4.0% |
| ハンプトン・バイ・ヒルトン | 4.9% | 4.6% |
| ヒルトン・ガーデン・イン | 3.6% | 3.3% |
| ホームウッド・スイーツ | 2.5% | 1.7% |
ホームウッド・スイーツだけ下げ幅が大きくて、3割を超える減額。そして同じタイミングで、ホームウッド・スイーツの基本のポイント付与が1ドルあたり10ポイントから5ポイントへ、半分になりました(2026年1月8日以降の予約分)。こちらも同メディアの報道です。
オーナーの負担が減り、会員のもらえるポイントも減った。これは「これから下がるかもしれない」という予想ではなく、もう起きたことです。
2つのケースに共通する構図|ポイントはなぜ薄まるのか
ホテルが「重い」と訴えたマリオットと、会社が先に軽くしたヒルトン。対応は違いますが、動いているお金は同じところにあります。
マリオットやヒルトンの本社は、ポイントを配るほど儲かります。提携クレジットカードの手数料は、会員がカードを使うほど入ってくるから。ホテルに泊まってもらう必要すらありません。
ホテルを持つオーナーは、ポイントで泊まられるほど苦しくなります。部屋のコストは現金で出ていくのに、入ってくるのは本社からの補償だけ。
この不満をやわらげようとすると、道は2つしかありません。本社の取り分を減らすか、オーナーの負担を減らすか。マリオットもヒルトンも、選んだのは後者でした。
ただ、オーナーの負担が減っても、配られるポイントの量が減るわけではない。原資は細り、ポイントは増える。1ポイントあたりの裏付けは、薄くなります。
ここは、事実と見立てを分けておきます。手数料の引き下げもRISEの導入も、ヒルトンが説明した事実。「だからポイントの価値が下がる」のほうは、One Mile at a TimeやView from the Wingといったマイル系メディアが立てている推測です。ヒルトンが「ポイントを改悪します」と言ったわけではありません。
とはいえ、マリオットは7月に平均5〜10%上げ、ホームウッド・スイーツの付与は半分になりました。推測を裏づける材料のほうは、すでに出そろっている気がします。。。
ブランドの看板を降ろすホテルも出てきた
この夏、もうひとつ気になる動きがありました。ブランドの看板そのものを外すホテルです。
2026年7月30日、ヴェネツィアの「ホテル・ダニエリ」が「Danieli, Venezia, A Four Seasons Hotel」として開業しました(名称・開業日はフォーシーズンズ公式リリースで確認)。営業200年、ヴェネツィア最古のホテルです。サンマルコ広場もドゥカーレ宮殿もすぐそば。
このダニエリ、直前までマリオットの「ラグジュアリーコレクション」でした。マリオットの看板を降ろして、フォーシーズンズに掛け替えたということになります。看板ホテルと呼んでいい1軒です。
日本でも似た動きがありました。ダブルツリーbyヒルトン那覇首里城が、2026年12月31日の宿泊をもってヒルトンとしての営業を終えます。
念のために書いておくと、どちらも理由は公表されていません。契約の満期かもしれないし、オーナーの経営判断かもしれない。手数料の話と結びつける材料は、いまのところありません。
ただ、会員から見た意味は同じです。看板が変われば、そのホテルで貯めることも、ポイントで泊まることもできなくなる。「いつか泊まりたい」と思って貯めていた1軒が、ある日リストから消えることがある、ということ。
ポイントとの付き合い方を、どう変えるか
ここまでを踏まえて、会員側にできることを考えます。
まず前提として、ポイントは預金ではありません。
銀行に100万円を預けておけば、来年も100万円です。ポイントは違います。何ポイントで泊まれるかを決めるのは発行元で、しかも今回のマリオットのように、発表なしで変わることがある。持ち主にできることは、何もありません。
つまりポイントは、勝手にインフレする通貨のようなもの。持っているだけで、静かに目減りしていきます。
ポイントを貯めてはいけない理由
今回の2つのケースから見えてくるのは、次の3つです。
- 原資が細れば、必要ポイントは上がる。マリオット本社とオーナーの綱引きの結果が、会員の負担として出てくる
- 値上げは、告知なしで来る。7月のマリオットがまさにそれ。身構えることができない
- 使う先そのものが消えることがある。ホテルがブランドを抜ければ、そこでは使えない
3つに共通しているのは、どれも会員の側にはどうにもできないということ。だから打てる手は、貯め方ではなく持ち方のほうにあります。
- 貯める前に、使い道を決める。「あのホテルに泊まる」を先に決めて、そこに必要な分だけ貯める
- 貯まったら、早めに使う。寝かせるほど不利になるので、迷ったら使う側に倒す
- 家計の資産に数えない。ポイント残高を「実質いくら」と貯金のように計算しない
ホテルのポイントに限らず、ポイント全般に言えることでもあります。有効期限、発行元の経営、使える店の減少……。そのあたりは、それだけで一本ぶんの話になるので、あらためてまとめます。
ちなみに7月には、JALとマリオットの相互ステータスマッチも始まっています。こちらは「貯める」より「持っている資格を交換する」話なので、性格が違います。
よくある質問(FAQ)
Q. マリオットのポイントは改悪されたの?
A. 2026年7月、特典宿泊に必要なポイント数が広い範囲で上がりました。上げ幅は平均5〜10%とされています。マリオットからの公式発表はなく、マイル系ブログのLoyaltyLobbyが変更に気づき、One Mile at a Timeが2026年7月8日に報じたことで明らかになりました。
Q. マリオットのオーナーは何に抗議したの?
A. 2026年6月、マリオットのホテルを運営するオーナー51社(合計約1,000軒)が、CEOと会長に連名の書簡を送りました。ポイント宿泊の割引分をオーナーが負担する一方で、マリオット本社は提携クレジットカードの手数料収入を伸ばしている、という不均衡への抗議です。米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じました。
Q. ヒルトンの手数料引き下げで、オナーズのポイントも下がるの?
A. ヒルトンは「ポイントを改悪する」とは言っていません。説明された事実は、ホテルが払うプログラム手数料を2026年1月から0.3%ポイント引き下げたこと、米国・カナダで「RISE」による追加の割引を始めたことの2つです。「原資が減れば1ポイントの価値も下がる」というのは、マイル系メディアの見立てです。
Q. ホテルがブランドを抜けると、貯めたポイントはどうなる?
A. ポイントそのものが消えるわけではありません。消えるのは「そのホテルで貯める・使う」という選択肢です。一般的には、ブランドを離脱した時点でポイント加算や会員特典の対象外になります。
Q. ホテルのポイントはいつ使うのが正解?
A. 使い道が決まっているなら、早いほうが有利です。必要ポイント数は発行元の判断で上がることがあり、下がる保証はありません。目的を決めずに貯め続けるのが、いちばん不利な持ち方になります。
まとめ
本社とオーナーのあいだでお金の取り合いが起きていて、その調整のしわ寄せが、いちばん立場の弱い会員のポイントに寄ってくる。マリオットとヒルトン、2つのケースから見えたのはその構図でした。
ポイントの価値は、使ったときにだけ確定します。貯めている間は、ずっと誰かの都合の上に乗っているだけ。
次の旅を、少し前倒しにしてもいいかもしれません!
【参考】(2026年8月時点)
・Asian Hospitality「Marriott franchisees oppose Bonvoy costs」(米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道をもとにした記事)
・LoyaltyLobby「Marriott Bonvoy 5% To 10% Flash Points Devaluation」(2026年7月7日)
・LoyaltyLobby「Marriott Hotel Owners Demand Higher Award Night Reimbursement Rate」(2026年6月16日)
・One Mile at a Time「Marriott Bonvoy Points Devaluation」(2026年7月8日)
・One Mile at a Time「Hilton Cuts Loyalty Fees Hotel Owners Pay」
・View from the Wing「Hilton Cut What Hotels Pay Into Honors By Up To 32%」(ブランド別の料率)
・Marriott 公式「Second Quarter 2026 Results」(2026年8月3日)
・One Mile at a Time「Marriott Bonvoy Economics Get Worse」
・Four Seasons 公式「Now Open: Danieli, Venezia, A Four Seasons Hotel」(2026年7月30日)
・Marriott 公式「First Quarter 2026 Results」(2026年5月6日)
・Hilton「Hilton Reports Second Quarter Results」(2026年7月28日)
・One Mile at a Time「Danieli, a Four Seasons Hotel, Venice」




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