「焼く」は英語で5つ?bake・roast・grill・broilの使い分け【ちょこっと英会話】

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こんにちは。いりこです。

前回、“fried egg” が「目玉焼き」のことだと知って驚いた話を書きました。油をひいて火を通せば、英語ではぜんぶ “fry”。揚げても、炒めても、目玉焼きでも “fry” です。

では、その目玉焼きを日本語ではなんと言うか。「焼く」です。

日本語の「焼く」は、なかなかの働き者。パンも、ケーキも、肉も、魚も、餅も、ぜんぶこの一語で片づきます。

英語はそうはいきません。決め手は火がどこから来るか。まわりからか、近くにあるか、下からか、上からか。そこで “bake” / “roast” / “grill” / “broil” / “toast” に分かれます。

しかも “grill” にいたっては、イギリスとアメリカで火の向きが逆! 同じ綴りの、同じ単語なのに、です。

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ひと目でわかる|「焼く」の早見表

  • bake(まわりから・オーブンの中)|“to cook inside an oven, without using added liquid or fat”|オーブンの中で焼く(液体も油脂も足さない)
  • roast(まわりから・オーブンか直火)|“to cook food in an oven or over a fire”|オーブンか直火で焼く
  • grill(下から・網の上)|“to cook food over fire or hot coals, usually on a metal frame”|火や炭の上、たいてい金網にのせて焼く
  • broil(上から・強い熱の下)|“to cook something under a very hot surface in a cooker”|加熱器具の中で、とても熱い面の下に入れて焼く ※イギリス英語では、同じ意味で “grill”
  • toast(近くにある)|“to make bread or other food warm, crisp, and brown by putting it near a high heat”|強い熱の近くに置いて、こんがりさせる
  • fry(火ではなく油)|“to cook food in hot oil or fat”|熱した油で火を通す ※前編で扱った1語

ケンブリッジ英英辞典(Cambridge Dictionary)より

火が「まわり」から:bake と roast は油で分かれる

オーブンの中では、熱は上下左右から回ってきます。同じ場所で焼くのに動詞が2つあるのは、油を足すかどうかで分かれるからです。

“bake” の定義には、ひとつだけ条件がついています。“without using added liquid or fat”——液体も油脂も、足さずに

いっぽう “roast” は “to cook food in an oven or over a fire” だけ。足すな、とはどこにも書かれていません。それどころか、ケンブリッジが並べている例文は油だらけです。

  • “Just roast the chicken in the oven and baste it in oil and lemon.”|鶏をオーブンで焼いて、油とレモンをかけながら
  • “I roasted the vegetables with some olive oil.”|野菜をオリーブオイルで焼いた

ケンブリッジ英英辞典(Cambridge Dictionary)roast の例文より

同じオーブンでも、油をまとわせるかどうかで名前が変わる。生地をそのまま入れれば “bake”、鶏に油を塗って入れれば “roast” です。

前編の “fry” は「油で火を通す」でした。 “bake” はその真裏で、油を足さない。 “fry” と “bake” は、油を挟んで背中合わせに立っています。

面白いのは、じゃがいもだけ両方に出てくること。ケンブリッジには “baked potato” も “roast potatoes” も載っています。定義どおりに読めば、丸ごとオーブンに放り込むのが “baked potato”、油をからめてこんがりさせるのが “roast potatoes”。同じ芋でも、油の有無で呼び名が割れます。

“roast” にはもうひとつ、ナッツやコーヒー豆を煎る意味もあります。ローストビーフとコーヒーのローストが同じ単語なのは、そのためです。

火が「近く」にある:toast

“toast” の定義でいちばん効いているのは、near という前置詞です。“by putting it near a high heat”——強い熱の近くに置く。網にのせるでも、油をひくでもなく、ただ近づける。

名詞の “toast” は “sliced bread made warm, crisp, and brown by being put near a high heat”。スライスしたパンと限定されています。日本語の「トースト」と、ほぼそのまま重なりますね。

動詞のほうは bread or other food なので、パン以外にも使えます。

ちなみに同じ見出しの中には、グラスを掲げるほうの “toast”(乾杯)も並んでいます。

火が「下」か「上」か:grill と broil はイギリスとアメリカで逆

残る2語は、どちらも火と食材が向き合う焼き方です。ちがいは火の位置だけ。ところが、ここがいちばんややこしい。

ケンブリッジで “grill”(動詞)を引くと、料理の意味が2つ出てきます。

  • “to cook food over fire or hot coals, usually on a metal frame”|火や炭ので、たいていは金網にのせて焼く
  • (イギリス英語/アメリカでは “broil”)“to cook something under a very hot surface in a cooker”|加熱器具の中で、とても熱い面のに入れて焼く

ケンブリッジ英英辞典(Cambridge Dictionary)より

ひとつめは火が下、ふたつめは火が上。同じ “grill” という単語で、火の向きが正反対になります。

この2つを分けているのが、イギリスとアメリカです。上から当てる熱を、イギリスは “grill” と呼び、アメリカは “broil” と呼ぶ。アメリカ英語の “grill” は、庭の網のほうだけです。

辞書の例文も、動詞だけ入れ替えて同じ文が並んでいます。

  • “I’ll grill the bacon rather than fry it.”|ベーコンは焼くよ、揚げないで(イギリス英語)
  • “I’ll broil the bacon rather than fry it.”|同じ文のアメリカ英語版
  • “Dad was grilling chicken in the back yard.”|父さんが裏庭で鶏を焼いていた(英米共通・網焼き)

ケンブリッジ英英辞典(Cambridge Dictionary)より

名詞も同じ形で割れています。イギリスの “grill” は加熱器具の中の、高温になる面(アメリカでは “broiler”)。英米共通の “grill” は火の上の金網

困るのはレシピを読むときです。イギリスのレシピの Grill for 5 minutes は上火、アメリカのレシピの Grill は屋外の網。同じ綴りを見て、まったく違う道具を出すことになります。

(ケンブリッジのアメリカ英語版は “broil” を “to cook something with the heat coming from directly above or below it” と書いていて、真下からの熱も含めています)

日本語の「グリル」が、どちらの意味でも通じてしまうのもややこしい。バーベキューの網もグリル、魚焼きグリルもグリル。日本語のグリルは、英語の2つの意味を両方かかえこんでいるわけです。

【寄り道】ステーキの焼き加減、英語だとこう言う

焼き方の動詞がわかっても、レストランではもうひとつ聞かれます。“How would you like your steak?”——焼き加減です。

  • rare|“not cooked for very long and still red”|火を通す時間が短く、中はまだ赤い
  • medium rare|“cooked so that it is still slightly red in the middle”|中がまだ少し赤い
  • medium|“cooked so that it is no longer red in the middle”|中に赤みが残っていない
  • well done|“cooked so that it is firm and has a grey-brown colour all the way through”|中まで火が通って締まった、灰褐色の状態

ケンブリッジ英英辞典(Cambridge Dictionary)より(いずれも肉についての語義)

答え方は “Medium rare, please.” で通ります。辞書の例文も “I’d like my steak medium rare, please.” です。

あいだを取った “medium-well” も、ハイフン付きで見出しに立っています。“cooked so that it has a small amount of pink in the centre”——中心にわずかにピンクが残る状態です。

ついでに。well done には「よくやった」の意味もあって、ケンブリッジでは同じページに並んでいます。ステーキの注文でこの単語を口にしても、ほめてはいません(笑)

まとめ:「焼く」を決めるのは火の向き

日本語の「焼く」は、火がどこから来るかを問いません。英語は問います。

  • まわりから(オーブンの中)… “bake” と “roast”。分かれ目は油を足すかどうか
  • 近くにある… “toast”
  • 下から(網にのせる)… “grill”
  • 上から(強い熱の下に入れる)… “broil”。イギリスでは同じ意味で “grill”

単語を1つずつ覚えるより、火がどっちから来ているかを思い浮かべるほうが早いです。

そして、この物差しから外れるのが前編の “fry”。火の向きではなく、油で火を通すのが “fry” でした。日本語ならどちらも「焼く」で済むのに、英語は毎回どちらかを選ばされる。英語の台所は、火の向きにきびしい。

くわしくは:▶ チャーハンも目玉焼きも“Fried”?「揚げ物」だけじゃない“Fry”と“Deep-fry”の違い【ちょこっと英会話】

こういう「あれ?」に気づくために:おすすめの英会話練習

grill と broil の違いは、こうして辞書を並べれば整理できます。困るのは、レシピではなく目の前で言われたとき

知識として知っていることと、その場で口から出ることは、まったく別の話です。埋まるのは英語を使う回数だけ。

日本語が上手な相手ほど、こちらのレベルを察して汲み取ってくれます。優しさではあるのですが、上達の相手としては物足りない。だからこそ、ちゃんと直してくれる相手にお金を払う価値があるわけです。

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参考

よくある質問(Q&A)

Q. 「オーブンで焼く」は bake と roast のどっち?

A. 油も水も足さずにオーブンへ入れるなら bake、肉や野菜に油をまとわせて焼くなら roast です。ケンブリッジ英英辞典が「足さない」と書いているのは bake のほうだけで、roast の例文はどれも油を使っています。

Q. イギリスの grill とアメリカの grill は同じもの?

A. 違うことがあります。アメリカ英語の grill は火や炭の上の網、イギリス英語の grill はそれに加えて、加熱器具の中で上から当てる熱も指します。アメリカでその上火にあたるのは broil です。

Q. トースターで焼くのは toast でいい?

A. パンなら toast です。定義は「強い熱の近くに置いて、温かく、パリッと、こんがりさせる」。動詞は bread or other food が対象なので、パン以外にも使えます。

Q. ステーキの焼き加減はどう答える?

A. rare / medium rare / medium / medium-well / well done が、辞書に見出しのある区切りです。“How would you like your steak?” と聞かれたら、“Medium rare, please.” のように返します。

Q. fry との線引きは?

A. 油をひいて火を通せば fry、オーブンで油も水も足さなければ bake。分かれ目は油です。fry のほうは前編にまとめています:▶ チャーハンも目玉焼きも“Fried”?「揚げ物」だけじゃない“Fry”と“Deep-fry”の違い【ちょこっと英会話】

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