こんにちは。いりこです。
2024年10月27日(日)ロイ・トムソン・ホール(トロント)にて行われた、トロント交響楽団の公演に行ってきました。
▼TTC地下鉄セント・アンドリュー (St Andrew) 駅直結、今回は初めてのマチネ(昼公演)でした




会場にはカナダ出身のピアニスト、グレン・グールドのピアノが置いてあります。
晩年の「ゴルトベルク変奏曲」の収録に使用したそうです!
演奏者
ジャナンドレア・ノセダ(指揮)×トロント交響楽団
今回の指揮者はジャナンドレア・ノセダ。イタリア出身で、トロント交響楽団では2002年に初共演、それ以来、定期的に共演を重ねてきたようです。
現在ナショナル交響楽団の音楽監督を務め、ロンドン交響楽団の首席客演指揮者としても活躍するノセダ。情熱的でダイナミック、そして緻密な表現に注目。
当ブログでおなじみのトロント交響楽団は、かつて小澤征爾さんが指揮したこともある、100年以上の歴史をもつオーケストラ。トロントという街を体現するかのような、多様な音を持ちながらまとまりのいい音を出す素敵なオケです。
ティモシー・チューイ(ヴァイオリンソロ)
カナダ生まれ、アメリカ育ち。16歳でモントリオール交響楽団と共演し、ヨーゼフ・ヨアヒム国際ヴァイオリンコンクールで第1位、エリザベート王妃国際コンクール第2位に輝くなど、国際的に評価の高いヴァイオリニストです。
▼なんと2025年6月に来日!チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏予定です
プログラム/チケット情報
2024年10月27日(日) 15:00開演 ロイ・トムソン・ホール(トロント)
プログラム
- ペトラッシ:管弦楽のための協奏曲第2番
- ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト長調 Op.26
- ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 Op.27
ペトラッシ:管弦楽のための協奏曲第2番
20世紀イタリアを代表する作曲家、ゴッフレード・ペトラッシの「協奏曲第2番」は、オーケストラのための協奏曲を8曲も手掛けた彼の中でも、特に洗練された構成を持っています。
この曲は4つの楽章を持ちながらも単一楽章として展開され、透明感のある響きとダイナミックな展開が特徴です。冒頭は「春の抽象的な表現」とも言われ、寒さの中から生命が芽吹くような雰囲気を持ちます。ローマの田園地帯の民謡を思わせる旋律や、夢幻的な「夜の音楽」、そして最後は春の訪れを告げるエネルギッシュなクライマックスへと向かいます。
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト長調 Op.26
さて、個人的にはお目当てにしてきた、ブルッフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」。
ピアノ中心に聴いているとまず出会うことのないマックス・ブルッフ、この曲は唯一知っているブルッフの曲なのですが、非常にドラマチックで情熱溢れる名曲!一度聞いただけでファンになると思います。
ブルッフは「ヴァイオリンはピアノよりも美しく旋律を歌うことができる。旋律こそが音楽の魂だ。」と語ったそうです。ピアノは音が減衰していく仕組みなので、「歌う」という点は弦楽器の大きな魅力ですね。音程の不安定さも、人間味があり心に刺さるものがあります。
特徴的なのが、通常メインとなる第1楽章が「前奏曲」となっており、アタッカ(切れ目なし)で第2楽章につながっていきます。つまり、通常箸休め的な緩徐楽章である第2楽章がこの曲メインとなるわけです。
聴いてみると、極上に美しい旋律。ひたすらに平穏、神々しいまでに美しい。まさにヴァイオリンが「歌う」ための旋律で、形式上のみならず、名実ともにこの曲のメインを張る楽章です。全3楽章の中で1番長いし。
そして何といっても第3楽章。初めて聞いたとき「ブラームスのヴァイオリン協奏曲と似てるなあ」という感想でした。重音で熱狂的な旋律、ジプシー風で疾走感のあるリズムは、3大ヴァイオリン協奏曲の一角であるブラームスを彷彿とさせます、、、とか思っていたら、このブルッフはブラームスより10年以上も早く作曲されていました笑
ティモシー・チューイの演奏も、美しい旋律を見事に歌い上げ、終楽章の勢いそのまま、スタンディングオベーションに包まれていました。
ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 Op.27
ロシアの大作曲家ラフマニノフの交響曲。
ラフマニノフを語る上で必ず取り上げられるのがこの「交響曲」。若い頃から意欲を見せていた「交響曲第1番」の初演が大失敗に終わり、数年間作曲の筆が止まるほどの精神的ダメージを受けたというエピソードです。
その後、かの「ピアノ協奏曲第2番」の大大大成功で名声を確固たるものにしますが、この「交響曲」というジャンルの新作には勇気が必要だったことでしょう。
第1楽章、これぞラフマニノフと言わんばかりの、映画音楽のような、雪が降り積もる荒涼とした大地が目に浮かぶようなスケール感に一気に惹き込まれます。ハリーポッターとかで流れていても違和感がありません。
構造的には循環形式をとっているこの曲、全体を統一する主題が冒頭から提示されます。
第2楽章、金管が鳴り響く好戦的なスケルツォ。めちゃくちゃかっこいい!こちらはRPGゲーム音楽にでも出てきそうです。リズムに急かされて進んでいきますが、対比をなす第2主題がこれまた美しい!ラフマニノフです。
第3楽章はこの曲のキモ!聴いてみると驚き、耳馴染みがいいというか、実際にどこかで聴いたことがあるような。とにかく美しく切ない主題が繰り広げられます。あの上昇していく旋律には自然と体が熱くなります。あと目頭も。。。
第4楽章、打って変わって祝祭的なアレグロ。大イベントも終わりに近づいてきたようです。
先の楽章で出会った主題達が回想的に続々と登場し発展していきます。あの感動的な3楽章の旋律もふと浮かび上がっては展開していき、ボルテージが上がったところで大サビ、大らかな主題をゆっくり感動的に歌ったあと、コーダ(終結部)で加速し上昇下降を繰り返し、「タッタタタン」で終わる。これぞラフマニノフ!会場はスタンディングオベーション!!!

▼山田 和樹×バーミンガム市交響楽団によるラフマニノフ「交響曲第2番」
さいごに
長々と書いてしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。昨年10月のコンサートを、年をまたいで記事に起こすという体たらくぶり(笑)
今回は、ブルッフのヴァイオリン協奏曲1番にラフマニノフの交響曲2番と、「知ってる曲」であるのはもちろん「好きな曲」が並んだのは嬉しいポイントでした。
2曲とも100年、150年と弾き継がれてきただけある名曲です。また明るく元気いっぱいのフィナーレというのはやっぱり元気をもらえます!
トロントでのコンサートも残り1記事!
コメント