【2023.10.6】アレクサンドル・カントロフ 公演感想 @横浜みなとみらいホール

コンサート日記
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こんにちは。いりこです。
10月6日(金)横浜みなとみらいホールにて行われた、アレクサンドル・カントロフのピアノソロ公演に行ってきました。

待ちに待った、およそ2か月ぶりのコンサート♪

公演に行かれた方とも、行かれてない方とも、感動を共有できたら嬉しいです。

みなとみらい駅直結、徒歩5分。クロークはありました。
とにかく無駄がなく、本日のポスターも張ってない。。。すこし寂しい。

チャイコフスキーコンクール優勝 アレクサンドル・カントロフ

フランス出身のピアニスト。

世界三大コンクールの一角;
チャイコフスキー国際コンクールに22歳で出場し、
ピアノ部門優勝(藤田真央さんが2位)、
併せて全部門のから選ばれるグランプリを獲得した逸材です。
そして同大会でフランス人初の優勝者。

いつか聴いてみたいと思っていて、
今回タイミングがありましたので聴いてみたところ、
やっぱり素晴らしい(当たり前)。

彼の演奏はなんというか、どんな曲も「シンプル」に聞こえてきます。
しかも、超絶技巧で捻じ伏せるでもなく、
緻密な楽曲分析の苦労が見えるわけではなく、
「もともとそんなに難しい曲じゃないんじゃないの?」
と思ってしまうほど、自然で余白のある優雅な演奏スタイルが特徴です。

ひょろっとして頼りなさそう(失礼)な出で立ちと、
特徴的な軽いタッチがクセになります。

▼公式HP
https://www.alexandre-kantorow.com/

▼2019年チャイコフスキーコンクールのアーカイブ(公式HP)
https://tch16.medici.tv/en/replay/#filter?candidate=234

プログラム/チケット情報

神奈川芸術協会HP

2023年10月6日(金) 13:30開演 横浜みなとみらいホール(神奈川県)

プログラム 

  • ブラームス:ピアノソナタ第1番 ハ長調 Op.1
  • J.S.バッハ(ブラームス編):シャコンヌ(左手のための)
  • シューベルト(リスト編):さすらい人/水車小屋と小川~「美しき水車小屋の娘」から
  • シューベルト(リスト編):春への想い・街・海辺で~「白鳥の歌」から
  • シューベルト:幻想曲「さすらい人」ハ長調 D.760

がっちりめの曲が並ぶ、楽しみなプログラムです。

個人的にはブラームスのソナタ1番!
一時期、取り憑かれたように聴いていて、
勢い余って楽譜まで購入しましたが、難敵すぎてあえなく退散笑。
いつか弾いてみたい曲の一つです。
そしてブラームスは、カントロフにとっても思い入れのある作曲家だそう。
チャイコフスキーコンクールでも、本選2曲目にはブラームスの2番を演奏していました。

そのほかシャコンヌさすらい人幻想曲など、
軽快なイメージのあるカントロフがどんな風に演奏するのか楽しみです。

シューベルトの歌曲は単純に聴いたことがないので楽しみ。

チケット 

全席指定:5,000円
舞台後方席:3,000円

ブラームス:ピアノソナタ第1番 ハ長調 Op.1

まず、この会場の開演前のベルが、銅鑼?
読経のときの鳴り物のような音が数回鳴るという独特さ。

気を取り直してカントロフ、ブラームスソナタ。

大家ブラームス、若き日の、
記念すべき作品番号1は、ピアノソナタハ長調。
とはいえ作曲されたのは、作品4スケルツォよりも後だそうですが、
自信作としてこの曲を「作品1」として出版したとか(Wikipedia)。

若きブラームスが、畏敬するベートーヴェンの亡霊と必死で闘い、ある部分は「似て非なる」結果を見事獲得し、だがある部分では (中略) 継承を自ら肯んじた作品

—池辺晋一郎、『ブラームスの音符たち』p. 156 (ってWikiediaに載ってます)

ほんとにその通り。
ドイツ的な堅固で伝統的な響きはありながら、
4楽章制で交響曲顔負けの大スケール、
爽やかなハ長調で展開され、
若いエネルギーに突き動かされるように広音域を駆けめぐる
ダイナミックなこの作品は、まさに鳥肌モノ。

特に終楽章は、
メインテーマの終わりがキラキラしていて一々かっこいい、
かと思えば時折顔を見せるメランコリックな一面、
そして圧倒的な水量のコーダ(終結部)
数多あるピアノソナタの中でもかなり好きな楽章です。

さてカントロフの演奏は、
音源から想像してたよりしっとりした音。
2階席ですぐ上が天井(3階席)だったこともあるのかも。

登壇してすぐに演奏はじめる感じとか、
いわゆる「芸術家」的なユニークな演奏スタイル。
気怠そう、かと思いきや急にスイッチが入ったり。

その割に、
難所もあいまいにせずにきちんと飛び越えてみせる安心感と、
内声部や旋律の処理にも細かく気を遣っていて、
観客がどこに注目すればいいのか分かりやすい演奏など、
きちんとしてる(当たり前)。

4楽章、音源ですらテンポが落ちたり、
テンポを上げると音を拾いきれなかったりと、
散漫な印象を受けるものも多いですが(それだけ難しそう、、、)、
快活なテンポかつ音もきっちり押さえた、臨場感たっぷりの好みの演奏でした。

そしてやはり魅力は優しく色気のある音色。
硬めの曲の中で、ふと現れるロマンチックに彼の音がバッチリあっている。

1楽章・終楽章コーダで加速し、
さすがに追いつけてない印象はやや残りましたが、
独自性がありながら説得力のある演奏でした。

そして息を吸い込む音と足音が響き、
「ライブだなあ」という臨場感もありました。

J.S.バッハ(ブラームス編):シャコンヌ(左手のための)

シャコンヌといえば、絢爛なブゾーニ編が有名ですが、
ブラームスもピアノ編曲しており、
右手を負傷したクララが弾けるように左手のみで演奏できるようにしたとかしてないとか。
必然的に音数が減るおかげで、原曲の雰囲気に近いと言われています。

語彙力なくて失礼しますが、ほんとに左手だけで弾いてる。
20分近く切れ目なく惹きつけられる没入感。
とにかく集中力がすごかった。

そして音量が抑えられてる分、
彼の息を吸い込む音がよく聞こえるライブ感。

ブラームスは、ややセンスに頼って弾いてるような箇所も感じたが、
ここまでそぎ落とされた曲だと、
ほんとうに細部まで手が行き届いているのがよく分かる。
こちらも息つく暇がない。。。

それにしてもバッハすごい。
単純な音だけで、こんなに壮大な世界を展開する。
それを編曲したブラームスも、見事に体現したカントロフにも、あっぱれ!

原曲も聴いてみなきゃ。

シューベルト(リスト編):さすらい人/水車小屋と小川~「美しき水車小屋の娘」から/春への想い・街・海辺で~「白鳥の歌」から

休憩をはさんで、シューベルト/リストの歌曲。

(プログラムの記載だと「さすらい人 (Der Wanderer)」も
歌曲集「美しき水車小屋の娘」からの1曲、みたいに見えますが、
「12の歌曲」の方ですかね???)

大曲が並んだ前半でしたが、後半は彼の情緒性が発揮されます。
ロマンチックでメランコリックで、そしてやっぱり没入感。
ここは5曲一息に演奏。

本日のプログラムを大きく全体でとらえると、
ちょうど緩徐楽章のような位置、なのかな?

そしてなんとそのまま、
集中を維持したまま次の「さすらい人幻想曲」へ。

シューベルト:幻想曲「さすらい人」ハ長調 D.760

先輩、、これ、20分以上ありますよ。。。
すでに20分休みなしですけど、このままいって大丈夫すか?

という(余計な)心配が先立ちました。それくらいの集中力。

曲は、ハ長調のソナタのような幻想曲。
爽やかですが、かなり技巧的で華やかな曲です。
シューベルト自身がうまく演奏できず、
「こんな曲は悪魔にでも弾かせてしまえ」といら立ちをあらわにしたとか笑。

また2楽章には、先述の歌曲「さすらい人」から主題が引用されており、
一度にどちらも楽しめるプログラム構成も粋ですよね。

ここでも彼の際立ったテクニックに圧倒されました。
演奏を生で聴くのは初めてですが、
オクターブは連発するわ、アルペジオで端から端まで駆け回るわ、大忙し。

非常に緩急のある曲ですが、いろんな表情を見せながら
見事に弾き切ってくれました!ブラボー!

アンコール(公式HP)

  • リスト:「巡礼の年 第2年:イタリア」より ペトラルカのソネット104番
  • ストラヴィンスキー=アゴスティ:「火の鳥」より 終曲

快く2曲も弾いてくれました!
特に「火の鳥」は、2019年チャイコフスキーコンクールでも演奏していましたね!

超絶技巧も軽々だなあという印象が強く残った選曲でもありましたが、
今回、あの「きらきら~」が鳴り始めた瞬間鳥肌が立ちました。

激アツでした。。。。。。

さいごに

急遽の参戦となりましたが、来てよかった。
若々しい感じもしないし、かといって老成した感じもしない、
独特のバランス感覚をもった素晴らしいピアニストだなと感じました。

会場は、2階席の真ん中はすぐに天井なので、
次に席を取るとしたら1階席かな。。。
1階席も後方は天井なので注意。
ピアノソロだったら2階席の横側の前の方もありかも。

長々と書いてしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。

ところで、みなさんは、どうやってクラシックのコンサート情報を集めてらっしゃいますか?
自分で調べてみて、情報集めるのに一苦労でした。お知恵があればお教えいただきたいです!

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