【2025.5.26~31】エリザベート王妃国際音楽コンクール ピアノ2025 ファイナル/最終結果

エリザベート王妃国際音楽コンクール
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こんにちは。いりこです。

ショパンコンクール予備予選の盛り上がりも冷めやらぬ中、5月5日からベルギー・ブリュッセルでエリザベート王妃国際音楽コンクールが開催されます。

2025年は大コンクールイヤー!
こちらの記事でまとめた15のコンクールのうち7つが開催されます。そして10月には、つい先日予備予選が行われた最高峰ショパン国際コンクールの本大会も控えます。

バッハ国際ロン=ティボー国際に続いて、早くも3つ目のコンクールです。

記事執筆が出遅れておりますが、レベルの高さに楽しんで聴いています。

12名にまで絞れらたファイナル!セミファイナルから1週間の準備期間を経て、課題の未発表の協奏曲+選択の協奏曲という、最後の最後までタフな大会です。

12名全員注目なのですが、日本勢は6名中4名、亀井聖矢久末航桑原志織吉見友貴さんが残りました!
筆者の注目は、Arthur Hinnewinkel, Sergey Tanin, Valère Burnon, Nikola Meeuwsenさん、注目だらけで大忙しです。

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エリザベート王妃国際音楽コンクール 概要

【公式HP】(フランス語・英語)https://queenelisabethcompetition.be/en/
【公式YouTube】https://youtube.com/@queenelisabethcompetition
※ライブ配信・アーカイブは公式HPのみ!

ショパン国際、チャイコフスキー国際と並んで世界三大ピアノコンクールと称されているコンクール。

三大コンクールの中で最も歴史が古く、また他2つと異なり特定の作曲家を冠していないのが特徴で、比較的公平だとみなされるようです。

ピアノのほかに、ヴァイオリン・声楽・チェロ(以前は作曲)部門があり、各部門順番で毎年開催されています。

優勝者には第1回ギレリスをはじめ、アシュケナージ、エル=バシャ、入賞者にはベルマン、ペトロフ、内田光子、カツァリスとなかなか豪華なお名前が並んでいます。前回2021年には務川 慧悟(第3位)/阪田 知樹(第4位)が入賞して話題になりました。

  • 概要
    開催地:ブリュッセル(ベルギー)
    開催間隔:各部門4年に1度(前回:2021年5月(2020年から延期)、次回:2025年)
    歴史:ピアノ部門第1回1938年
  • 主な優勝者・入賞者
    優勝者:エミール・ギレリス(1938)、ウラディミール・アシュケナージ(1956)、アブデル・ラーマン・エル=バシャ(1978)、ジョナタン・フルネル(2021)

    入賞者:ラザール・ベルマン(1956年第5位)、ニコライ・ペトロフ(1964年第2位)、内田 光子(1968年第10位)、シプリアン・カツァリス(1972年第9位)、務川 慧悟(2021年第3位)、阪田 知樹(2021年第4位)

スケジュール

第1次予選(60名):2025年5月5日(月)~ 5月10日(土)

セミファイナル(24名):2025年5月12日(月)~ 5月17日(土)

ファイナル(12名):2025年5月26日(月)~ 5月31日(土)
5月26日(月)20:15(日本時間 翌3:15)
5月27日(火)20:15(日本時間 翌3:15)
5月28日(水)20:15(日本時間 翌3:15)
5月29日(木)20:15(日本時間 翌3:15)
5月30日(金)20:15(日本時間 翌3:15)
5月31日(土)20:15(日本時間 翌3:15)

とにかく長丁場!セミファイナル・ファイナルの両方で未出版の課題曲が差し込まれるなど、質・量ともにタフなたたかいとなります。

プログラム

ファイナル(12名)

  • An unpublished work (10 to 15 minutes long), Music for the Heart, written specially for the final of this piano session by Kris Defoort
    /「Music for the Heart」(本大会のために作曲されたクリス・デフォールト作曲の未出版の課題曲、10-15分)
  • A concerto of their own choice, with the Brussels Philharmonic under the baton of Kazushi Ono.
    /自由選択の協奏曲(大野 和士指揮、ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団

The twelve finalists move to the Queen Elisabeth Music Chapel in the order established by the drawing of lots, at the rate of two a day.
/抽選で決まった順に、12名のファイナリストは1日2名ずつクイーン・エリザベス音楽院へ移動する。

The week spent at the Music Chapel is intended to allow a peaceful environment in which to prepare for the final and study the compulsory unpublished work.
/音楽院での1週間は、本選の準備および課題の未発表作品を個別に学ぶための静かな環境を提供する。

The final round will begin one week after the first finalists have entered the Music Chapel.
/ファイナルは、最初のファイナリストが音楽院に入ってから1週間後に開始される。

During their stay the finalists must not communicate with anyone not involved in the Competition’s administrative services.
/音楽院での滞在中、ファイナリストはコンクール関係者以外との接触が禁止される。

5月26日(月)20:15(日本時間 翌3:15)

Yuki Yoshimi (Japan, Year of birth: 2000) ※予選[5.6] ※セミファイナル・協奏曲[5.12] ※セミファイナル・リサイタル[5.15]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Sergey Prokofiev: Concerto n. 3 in C major op. 26
/プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26

さて長かったコンクールもファイナル。開幕を飾るのは吉見さん。
プロコフィエフの3番はコンクールの定番で、疾走感のある曲ですが、落ち着いた演奏が好みだったりします。吉見さんはよく弾けていて、好みのタイプでした。欲をいえば、もう少しスリリングさも欲しいかなというくらい。

Nathalia Milstein (France, Year of birth: 1995) ※予選[5.6] ※セミファイナル・協奏曲[5.13] ※セミファイナル・リサイタル[5.16]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Johannes Brahms: Concerto n. 2 in B flat major op. 83
/ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83

この方も割とスケールが大きく伸びやかなピアニストという印象はありましたが、それにしてもこの曲を弾きこなすのはものすごい器量が必要なんだなと感じます。

5月27日(火)20:15(日本時間 翌3:15)

Rachel Breen (United States of America, Year of birth: 1996) ※予選[5.6] ※セミファイナル・協奏曲[5.13] ※セミファイナル・リサイタル[5.16]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Sergey Rachmaninov: Concerto n. 3 in D minor op. 30
/ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30

プロコフィエフにラフマニノフに、最難関の曲が並びます、改めてすごい大会ですね。
この方はロマン派をバリバリ演奏するイメージがなかったので楽しみでしたが、やっぱり数あるピアノ協奏曲の中でも最難関筆頭のこの曲のハードルの高さを感じます。暗譜がとんでいて気の毒でした。

Valère Burnon (Belgium, Year of birth: 1998) ※予選[5.6] ※セミファイナル・協奏曲[5.13] ※セミファイナル・リサイタル[5.16]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Sergey Rachmaninov: Concerto n. 3 in D minor op. 30
/ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30

ラフマニノフ3番が続きます。この方はやっぱり荒さはありますが、なんでしょうね、妙に弾き込まれます。弾けてないんじゃなくて、もっと高いところを見ているからミスがでちゃう感じ?ロマンチックな音色の作り込みも素晴らしく、このスタイルとしてはありな演奏でした。地元ということで声援もすごかったですが、それに見合う演奏だったと思います。

5月28日(水)20:15(日本時間 翌3:15)

Nikola Meeuwsen (The Netherlands, Year of birth: 2002) ※予選[5.6] ※セミファイナル・協奏曲[5.14] ※セミファイナル・リサイタル[5.17]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Sergey Prokofiev: Concerto n. 2 in G minor op. 16
/プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.16

プロコフィエフの2番。3番ほど演奏されないし華やかではないですが、特に1楽章は半分をカデンツァ(ピアノソロ)が占めちゃう、内省的というか独特な曲で好きなんです。
コンクールでもほぼほぼ聴かないので、若いピアニストの演奏を聴いたことがなかったのですが、このピアニストはこういうダークな雰囲気に弾き込まれます。内省的と言っちゃいましたが、かなり技巧的でグロテスクな爆発的なパワーがあり、若さも相まって印象的な演奏でした。

Sergey Tanin (Russian Federation, Year of birth: 1995) ※予選[5.7] ※セミファイナル・協奏曲[5.14] ※セミファイナル・リサイタル[5.17]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Sergey Prokofiev: Concerto n. 3 in C major op. 26
/プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26

筆者イチオシの一人。プロコ3番。
タイプとしては吉見さんのように安定した演奏で、さすが筆者の好みにバシッとはまります。加えてスリリングさや疾走感も持ち合わせており、録音で聴いてきた中でも上位に入るような演奏で、素晴らしかったです。予選の演奏から推していたピアニスト、ぜひ上位に入ってほしい!

5月29日(木)20:15(日本時間 翌3:15)

Arthur Hinnewinkel (France, Year of birth: 2000) ※予選[5.8] ※セミファイナル・協奏曲[5.14] ※セミファイナル・リサイタル[5.17]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Robert Schumann: Concerto in A minor op. 54
/シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54

ブラームス・ラフマニノフ・プロコフィエフがひしめくハイレベルなこのコンクールな中で、少し軽めの愛に溢れるシューマンのコンチェルト、選曲ですでに印象に残りますね。ファイナルでシューマンを聴いたのもこれが始めてかな?久々に聴くと、特に3楽章のコーダは涙が出そうなくらい美しい、メロい。。。
このピアニストもずっと印象に残っている一人で、さまざまなタイプの曲をハイレベルで提供してくれます。

Jiaxin Min (China, Year of birth: 1996) ※予選 [5.8] ※セミファイナル・リサイタル[5.12] ※セミファイナル・協奏曲[5.15]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Sergey Prokofiev: Concerto n. 3 in C major op. 26
/プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26

プロコ3番も3人目、これまた面白い演奏でした。正直そこまで印象になかったのですが、端正な前2人に比べて、よりシニカルでひょうきんな個性が際立っていました。技術的にも安定していて、落ち着いたテンポで解剖するように演奏していたのが印象的で、好みの演奏でした。

5月30日(金)20:15(日本時間 翌3:15)

Shiori Kuwahara (Japan, Year of birth: 1995) ※予選[5.9] ※セミファイナル・リサイタル[5.13] ※セミファイナル・協奏曲[5.16]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Johannes Brahms: Concerto n. 2 in B flat major op. 83
/ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83

彼女のブラームスは合うだろうなと思いつつ、実際よかったのですが、やっぱり難曲だけあって精一杯な感じはしました。

Mirabelle Kajenjeri (France, Year of birth: 1998) ※予選[5.9] ※セミファイナル・リサイタル[5.13] ※セミファイナル・協奏曲[5.16]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Sergey Prokofiev: Concerto n. 3 in C major op. 26
/プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26

この人はずっとどう聴けばいいのか分からずここまで来てしまいましたが、音は弾けるような快活さがあり、ユーモアに溢れる演奏、選曲が良かったです。ただテンポが安定せずハラハラする場面も少なくなかったです。

5月31日(土)20:15(日本時間 翌3:15)

Masaya Kamei (Japan, Year of birth: 2001) ※予選[5.10] ※セミファイナル・リサイタル[5.14] ※セミファイナル・協奏曲[5.17]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Camille Saint-Saëns: Concerto n. 5 in F major op. 103
/サン=サーンス:ピアノ協奏曲第5番 「エジプト風」 ヘ長調 Op.103

この曲は大好きだし、ただコンクールで聴いたことがないので、久々に聴けてうれしいです。こんな童心というか、冒険心をくすぐる曲を晩年に書いちゃうサン=サーンスの感受性には改めてすごいなと思います。
そして亀井さんの軽やかでキラキラした音が、情景豊かなこの曲とマッチして爽やかでした。少し一本調子でそれ以上のものを感じない気もしますが、これは好みの問題だと思います。2022年ロン=ティボーの優勝曲でもあり弾きこなしていました。

Wataru Hisasue (Japan, Year of birth: 1994) ※予選[5.10] ※セミファイナル・リサイタル[5.14] ※セミファイナル・協奏曲[5.17]
Kris Defoort: Music for the Heart
/デフォールト:ミュージック・フォー・ザ・ハート
Johannes Brahms: Concerto n. 2 in B flat major op. 83
/ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83

ブラームス3人目にしてようやく安心感!優しさや品を保ちながらこの超難曲を演奏するには、あまりに技術的ハードルが高いんだろうなと感じていましたが、今大会では一番それを体現されていました。和音のつかみ方、弱音の滑らかさ、この曲はテンポの落ち着きが大人の成熟さにつながるような気がしています。もう少しスケールが大きいか、ミスで気が散るところがなくなるか、どちらかほしいなという気はしました。

ファイナル/大会 まとめ

お疲れさまでしたm(_ _)m
1か月にわたって開催されたエリザベート王妃コンクール、ファイナルも12名でしっかり5日間行われました。

最終結果

最終順位
第1位:Nikola Meeuwsen (The Netherlands, Year of birth: 2002)
第2位:Wataru Hisasue (Japan, Year of birth: 1994)
第3位:Valère Burnon (Belgium, Year of birth: 1998)
第4位:Arthur Hinnewinkel (France, Year of birth: 2000)
第5位:Masaya Kamei (Japan, Year of birth: 2001)
第6位:Sergey Tanin (Russian Federation, Year of birth: 1995)

賞金
第1位:INTERNATIONAL QUEEN ELISABETH GRAND PRIZE
25,000ユーロ(約450万円)
第2位:BELGIAN FEDERAL GOVERNMENT PRIZE
20,000ユーロ
第3位:COUNT DE LAUNOIT PRIZE
17,000ユーロ
第4位:PRIZE OF THE GOVERNMENTS OF THE BELGIAN COMMUNITIES
12,500ユーロ
第5位:BRUSSELS-CAPITAL REGION PRIZE
10,000ユーロ
第6位:CITY OF BRUSSELS PRIZE
8,000ユーロ

Audience awards: Valère Burnon
wins the Musiq3 Prize and the Canvas-Klara Prize, both worth € 2.500.
VRT CANVAS / Klara-Prijs:2,500ユーロ
(ベルギーの放送局 Klara および VRT CANVASの視聴者による投票)
Prix Musiq3:2,500ユーロ
(フランス語圏の公共放送 Musiq3 および La Troisの視聴者による投票)

順位の感じ方は個人差があるかもしれませんが、入賞者6名全員文句なし!推しのピアニストが並びました。レベルの高さはもちろん、公平なコンクールという前評判通りだなと感じます。

優勝は二コラ・メーウセンエリザベート王妃音楽院で学んでいるようです。小粋なベートーヴェン、モーツァルトの協奏曲から、リサイタル・プロコフィエフでのダークな求心力まで、個性が際立つ印象的なピアニストでした。このスタイルで優勝する説得力も大したものです。ぜひ日本にも来て生で聴いてみたいですね!

第2位はわれらが久末航さん!日本人最高位タイという快挙です。2024年ゲザ・アンダ国際で初めてお見かけしましたが、日本人ピアニストの王道と言っていいでしょうか、優しく上品で、大会通して安定した演奏を披露してくれました。選曲も他と被らない作り込んだプログラムも印象的。

第3位はヴァレール・ ビュルノンこの方もなかなかヨーロッパスタイルですが、2024年浜松国際から応援していたピアニスト、大胆な中にも統制が効いていて、品・まとまりがあります。ソロでは予選のリャプノフのエチュードなんか鮮やかで、今大会ですてきな協奏曲が聴けたのが良かったです。

第4位、筆者イチオシだったアルテュール・ヒネヴィンケル。

第5位は亀井聖矢さん。

第6位

個人的には、優勝者メーウセンさん含めヨーロッパスタイルの演奏が多い大会で、自分の聴き方もかなり柔軟になったような気がします。

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