こんにちは。いりこです。
11月9日(土)から、世界的にも注目度がうなぎ上りの浜松国際ピアノコンクールが2大会ぶりに開催されています!
モントリオール国際音楽コンクール、ゲザ・アンダ国際ピアノコンクール、リーズ国際ピアノコンクールに続いて、今年4つ目のコンクールを取り上げることになります。またリーズ国際同様、来年に控えるショパン国際コンクールの予選免除が与えられる重要な大会です。
遅ればせながらキャッチアップしていきたいと思いますので、6年ぶりの浜松国際を一緒に楽しんでいけたらと思っております!
87名の参加者による5日間に及んだ第1次予選も終わり、一気に24名まで絞られた第2次予選が始まります。日本勢からは5名(佐川 和冴、小林 海都、谷 昂登、藤平 実来、鈴木 愛美)が進出しています。
第2次予選も最終日、谷 昂登、ファン・ イートン、藤平 実来、コルクマズ・ジャン・ サーラム、鈴木 愛美さんらが登場します!
浜松国際ピアノコンクール概要
公式HP(日本語・英語):https://www.hipic.jp/
公式YouTube:https://www.youtube.com/user/HIPICofficial
開催期:2024年11月9日(土)~ 11月24日(日)
我らがニッポンで行われている国際コンクール。こちらで紹介しているコンクールと比べると格段に歴史が浅いのですが、ブレハッチ、チョ・ソンジンと、ショパン国際コンクール覇者を輩出するなど、すでに優勝・入賞者たちの活躍が目覚ましい大注目のコンクールです。
恩田陸さんの小説「蜜蜂と遠雷」のモチーフにもなった大会であるほか、上位2名はショパン国際コンクール本大会へ直接駒を進めることができる(ビデオ審査・予備予選が免除される)ことからも、今大会が重要視されていることが分かります。
- 概要
開催地:浜松市(静岡県)
開催間隔:3年に1度(前回:2018年(2021年中止)、次回:2024年11月)
歴史:第1回1991年
- 主な優勝者・入賞者
優勝者:アレクサンダー・ガヴリリュク(2000)、アレクセイ・ゴルラッチ(2006)、チョ・ソンジン(2009)、アレクサンダー・ガジェヴ(2015)
入賞者:上原 彩子(2000年第4位)、ラファウ・ブレハッチ/アレクサンダー・コブリン(2003年第2位)、牛田 智大(2018年第2位)
スケジュール
第1次予選(87名):2024年11月9日(土)~ 13日(水)
第2次予選(24名):2024年11月15日(金)~ 17日(日)11月15日(金)10:30, 12:20, 15:15, 17:05
11月16日(土)10:30, 12:20, 15:15, 17:05
11月17日(日)10:30, 12:20, 15:15, 17:05 結果発表: 19:00
第3次予選(12名):2024年11月19日(火)~ 20日(水)
本選(6名):2024年11月23日(土)~ 24日(日)
2週間に及ぶ長丁場です。
プログラム
第2次予選(24名)
(1) と (2) を演奏する。演奏時間は合計40分以内とし、演奏順は任意とする。
(1) 下記の古典派作品、ロマン派作品、近・現代作品より、2つ以上の異なる時代区分から、2作品以上(出版されている作品に限る)を選択し演奏する。ただし、第1次予選で演奏する曲は除外する。
古典派 | ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン |
---|---|
ロマン派 | シューベルト、メンデルスゾーン、ショパン、シューマン、リスト、フランク、ブラームス、サン=サーンス、チャイコフスキー、グリーグ |
近・現代 | フォーレ、ドビュッシー、スクリャービン、ラフマニノフ、シェーンベルク、ラヴェル、バルトーク、プーランク、メシアン、ヴェーベルン、ベルク、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、シマノフスキ、武満徹、三善晃、間宮芳生、矢代秋雄 |
(2) 第12回浜松国際ピアノコンクールのために作曲された日本人作曲家(猿谷紀郎氏)による新作品(5~7分程度)。新作品の楽譜はコンクールの3ヶ月前に予備審査を通過した者に送付する。なお、コンクール前にこの新作品を公開演奏することを禁じる。
11月17日(日)10:30
ユ・ ソンホ/YOO Sung Ho(韓国、1996) (第3次予選進出) ※第1次予選[11.12]
F. J. ハイドン:アンダンテと変奏曲 へ短調 Hob.XVII:6
/F. J. HAYDN: Andante and Variation in f minor Hob.XVII:6
S. ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.36(1931)
/S. RACHMANINOV: Piano Sonata No.2 in b flat minor Op.36 (1931)
猿谷紀郎:Division 28 for piano
/SARUYA Toshiro: Division 28 for Piano
1次予選は、筆者がシェーンベルクに耐性が無さ過ぎて感想を持てなかったピアニスト笑。このラウンドでようやく全貌が見えましたが(誰のせい)ハイドンのような音数少ない短調の表現、ラフマニノフの圧倒的な技量、細部まで完成度の高いピアニストでした。
リー・ ズーシャオ/LI Zixiao(中国、1994) ※第1次予選[11.12]
F. ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.35
/F. CHOPIN: Piano Sonata No.2 in b flat minor Op.35
L. v. ベートーヴェン:幻想曲 Op.77
/L. v. BEETHOVEN: Fantasy Op.77
猿谷紀郎:Division 28 for piano
/SARUYA Toshiro: Division 28 for Piano
ベートーヴェン→ショパンの順。朴訥としたベートーヴェンもステキでしたし、ショパンのソナタはちょっとだけ大げさな気はしましたが、「あとは好みの問題」と言えるほどの演奏レベルだったと思いますし、表現したい音楽がしっかり聴こえてくる演奏でした。
11月17日(日)12:20
チェン・ ズーシー/CHEN Zixi(中国、2002) ※第1次予選[11.12]
F. ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.35
/F. CHOPIN: Piano Sonata No.2 in b flat minor Op.35
O. メシアン:「幼子イエスにそそぐ20のまなざし」より 幼な子イエスの口づけ
/O. MESSIAEN: Le baiser de l’Enfant-Jésus from “20 Regards sur l’Enfant-Jésus”
猿谷紀郎:Division 28 for piano
/SARUYA Toshiro: Division 28 for Piano
ショパンのソナタ2番が連続したので比べちゃいましたが、より繊細で美しい演奏、スケールが小さいといえば小さい。3楽章葬送行進曲の中間部や、続くメシアンの内省的で美しい表現はピカイチでした。
谷 昂登/TANI Akito(日本、2003) ※第1次予選[11.13]
S. プロコフィエフ:風刺 Op.17
/S. PROKOFIEV: Sarcasms Op.17
J. ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Op.35
/J. BRAHMS: Variations on a Theme by Paganini Op.35
猿谷紀郎:Division 28 for piano
/SARUYA Toshiro: Division 28 for Piano
プロコフィエフの「風刺」は日本人のみ3人が選択していましたので不思議でした。ピティナ・ピアノ曲事典には谷さんの演奏動画が上がっていたので、谷さんの影響??少なくとも2020年から長いことレパートリーに入っていたようです。パガニーニの変奏曲はナイストライでした。
11月17日(日)15:15
ファン・ イートン/HUANG Yi-Teng(台湾、1998) ※第1次予選[11.13]
C. ドビュッシー「映像 第1集」より ラモーをたたえて
/C. DEBUSSY: Hommage à Rameau from “Images Book I”
F. ショパンピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 Op.58
/F. CHOPIN: Piano Sonata No.3 in b minor Op.58
猿谷紀郎:Division 28 for piano
/SARUYA Toshiro: Division 28 for Piano
ショパンのソナタが続きますが、こちらは3番。3楽章なんかは綺麗でしたが、やや間に合ってない印象はありました。
藤平 実来/FUJIHIRA Miku(日本、1999) ※第1次予選[11.13]
J. ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ Op.24
/J. BRAHMS: Variations and Fugue on a Theme by Handel in B flat major Op.24
A. スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第4番 嬰ヘ長調 Op.30
/A. SCRIABIN: Piano Sonata No.4 in F sharp major Op.30
猿谷紀郎:Division 28 for piano
/SARUYA Toshiro: Division 28 for Piano
序盤でやや緊張が見えてひやひやしましたが、すっかり持ち直してからは安心して聴いていました。ヘンデル×ブラームスの変奏曲は素敵ですね!バロックのあっけらかんとした感じとブラームスの重層感。スクリャービンも美しかったです。
11月17日(日)17:05
コルクマズ・ジャン・ サーラム/Korkmaz Can SAĞLAM(トルコ、1999) (第3次予選進出) ※第1次予選[11.13]
F. ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
/F. CHOPIN: Barcarolle in F sharp major Op.60
A. スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第3番 嬰へ短調 Op.23
/A. SCRIABIN: Piano Sonata No.3 in f sharp minor Op.23
猿谷紀郎:Division 28 for piano
/SARUYA Toshiro: Division 28 for Piano
この方もタイムオーバーになりながら通過していました。印象的な演奏だっただけによかったです。さてこのラウンドの舟歌。より”歌”に重点が置いてあるような演奏で、柔らかい音色でメロディが絶えず心地よく流れてくる感じ。好みを言えば、より客観的でバラード的な物語性のある演奏が好きなのですが、1次の演奏を聴いているのでこのピアニストに関しては納得です。スクリャービンは1次から続けて選曲でしたが、よくマッチしていたと思います。
鈴木 愛美/SUZUKI Manami(日本、2002) (第3次予選進出) ※第1次予選[11.13]
J. ブラームス:8つの小品 Op.76
/J. BRAHMS: 8 Pieces Op.76
G. フォーレ:ヴァルス・カプリス 変ニ長調 Op.38
/G. FAURE: Valse-caprice in D flat major Op.38
猿谷紀郎:Division 28 for piano
/SARUYA Toshiro: Division 28 for Piano
1次予選では特別印象に残ったわけではないのですが、今回はすごかった。まずブラームス、全くもって派手じゃない、通しで30分かかる8曲の小品集をメインに据える肝の座りよう。あの広いホールでピアノ1台、ミスしたらすぐにわかるような音数の少ない曲たちを30分弾き続ける集中力・胆力。そして演奏自体も素晴らしかったです。ほんとに1音1音に意識が張り巡らされているのが伝わってきます。「こりゃベテランに違いない」と思いきや22歳ですか。。。これは日本勢の中でも注目です。
・・・
3日間にわたる第2次予選も終了しました。総じて前半の方が勢いがあるなあという印象。1次で印象強かったコルクマズ・ジャン・ サーラムさんもまあ残ってほしいな。鈴木 愛美さんが1次以上に印象に残りました。
結果発表~第2次予選~
第3次予選進出者(12名)[演奏日]
マクシミリアン・ クロマー/Maximilian KROMER(オーストリア、1996) [11.15]
佐川 和冴/SAGAWA Kazusa(日本、1998) [11.15]
ロバート・ ビリー/Robert BILY(チェコ、1997) [11.15]
小林 海都/KOBAYASHI Kaito(日本、1995) [11.15]
JJ ジュン・リ・ ブイ/JJ Jun Li BUI(カナダ、2004) [11.16]
ライアン・ ジュウ/Ryan ZHU(カナダ、2003) [11.16]
ヴァレール・ ビュルノン/Valère BURNON(ベルギー、1998) [11.16]
ヨナス・ アウミラー/Jonas AUMILLER(ドイツ、1998) [11.16]
ソン・ ユトン/SUN Yutong(中国、1995) [11.16]
ユ・ ソンホ/YOO Sung Ho(韓国、1996) [11.17]
コルクマズ・ジャン・ サーラム/Korkmaz Can SAĞLAM(トルコ、1999) [11.17]
鈴木 愛美/SUZUKI Manami(日本、2002) [11.17]
課題の現代曲の作曲家、猿谷さんのご講談興味深かったです。数学的なアプローチから、音楽が人間最後の砦だというお話まで、もう一回聴いてみよう。。。
ちょっと課題曲が全く測定不能ですので何とも、、なところはありますが、注目していた3名、小林 海都、JJ ジュン・リ・ ブイ、ライアン・ ジュウさんは今回も揃って第3次予選に進出!強し!!
新しい推しのヨナス・ アウミラーさんも順当に、マクシミリアン・ クロマー、ロバート・ ビリー、ヴァレール・ ビュルノン、コルクマズ・ジャン・ サーラム、鈴木 愛美あたりが次のラウンドも楽しみです。楽しみなピア二ストが多いのも今大会の魅力。
日本勢も小林さん、佐川 和冴、鈴木さんの3名が3次予選に進出しました。谷 昂登、藤平 実来さんも大健闘でした。
ヤン・ ヴィドラシュさんは個人的に強烈に印象に残ってます。このご縁で日本公演に来てくれることを願っています。ロマン・ フェディウルコさんもかなりよかったですが、やや当落線上かなあという感じがあり、残念ですが惜しかったという結果になりました。
そして繰り返しますが、ほぼすべてのピアニストがストレスなく楽しめる演奏でした。