【新譜CD】マルティン・ガルシア・ガルシア「EVEN-TIDE (イーヴンタイド) ~ 夕まぐれ ~ ショパン & ブラームス」

作品・CD紹介
https://primaclassic.com/martin-garcia-garcia-even-tide/
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こんにちは。いりこです。

2024年10月に発売された、マルティン・ガルシア・ガルシア(ピアノ)2作目のアルバム。

ショパンブラームス、そして彼と同郷スペインの作曲家モンポウの作品が収録された話題のアルバムです。


マルティン・ガルシア・ガルシア

2021年ショパン国際ピアノコンクールにて第3位コンチェルト賞を獲得したマルティン・ガルシア・ガルシア

スペイン出身、あのモジャモジャ頭でいかにも明るそうな見た目と、鼻歌を歌いながら踊るように演奏するスタイルが印象的なピアニスト。演奏も独特なため、“雰囲気”で弾いているような第一印象を抱く方も多いのではないかと思います。

しかし、聴いていくうちに、非常に丁寧で現実的な演奏をするピアニストだと思うようになりました。CDで音だけ聴くと、よりそんな感じがします。鼻歌は相変わらず収録されていますが!笑

まず決して弾き飛ばさない。
全体的にゆっくりなテンポで、ソステヌートペダル(右ペダル)を多用せず、一音一音いたわるように、あるいは解剖していくような演奏で、情報量が多いです。

聴いていると、誰が弾いているのかが気にならない、つまり、作曲家の音楽が聴こえてきて、演奏家の存在が感じられない……それが最高のピアニストなのではないでしょうか。

来日中のピアニスト、マルティン・ガルシア・ガルシアにインタビュー!|ガルシア・ガルシアが考える最高のピアニストとは? 楽器との関係や時間の重要性を語る
2021年に開催されたショパン国際ピアノコンクールで第3位に入賞し、一躍人気者となったマルティン・ガルシア・ガルシアが初...

僕のスタンスは、作品の素晴らしさを見いだして伝える“翻訳者”になること。楽譜や即興音楽の存在意義を、できるだけ明確に聴衆に届けることが仕事だと思ってるんだ。

まるでスペインの輝く太陽。期待のピアニスト・ガルシア・ガルシアはユーモアも抜群|ぴあクラシック公式サイト〜poco a poco〜
まるでスペインの輝く太陽。期待のピアニスト・ガルシア・ガルシアはユーモアも抜群|

また以前Xで、「太陽」だのなんだのといった形容詞がつくことを嫌っているポストがあったように記憶しています。外側が目につきますが、自身の本質はそこではないという気持ちがあるのでしょう。

こうした深く丁寧なアプローチと、見た目から伝わる派手さの合わせ技がユニークでクセになるピアニストで、筆者の中では最多の4回コンサートに足を運んでおります!笑

▼このブログを始めてから2つ目のコンサートがガルシアの協奏曲公演でした。
【2022.11.6】マルティン・ガルシア・ガルシア ピアノ協奏曲ほか 公演感想 @サントリーホール(東京)
【2023.6.2】マルティン・ガルシア・ガルシア 公演感想 @ザ・シンフォニーホール(大阪)
【2023.7.18】マルティン・ガルシア・ガルシア 公演感想 @ミューザ川崎シンフォニーホール
【2023.7.22】マルティン・ガルシア・ガルシア 公演感想 @山形テルサホール

▼2025年の公演情報はこちら

▼国際ピアノコンクールについてはこちら
【最高峰】国際ピアノコンクール15選 まとめ
【2025】第19回ショパン国際ピアノコンクール まとめ

収録曲/感想


CD1
ショパン:
舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.35 「葬送」

CD2
ブラームス:ピアノソナタ第3番 ヘ短調 Op.5
ショパン:前奏曲 嬰ハ短調 Op.45
モンポウ:歌と踊り 第4番

【使用ピアノ】ファツィオリ 【録音】2023年8月 ワルシャワ

ショパンのソナタ。遅めのテンポで耳に残る特徴的な演奏だと思います。ごまかしのないまっすぐな演奏です。

ブラームスも特徴的。これだけ激情的な曲も1音1音丁寧です。これだけ落ち着いたテンポで、逆にスケールが大きく聞こえてくるから不思議なものです。

第2楽章が特に好み、温かい。現実的というか、より個人的というか。
「ただただ美しい幻想世界に連れて行ってくれる」というよりは、すぐそばで寄り添い話を聞いてくれているような安心感。

この音の流れ方、音の積み重ね方は、やはり感覚的なものだけでは再現できないと思います。理にかなっている、そんな土台の上に、ガルシアの温かい音が積み重なった唯一無二の産物だと感じます。

不安色が強い第4楽章も、身近で個人的な分、余計に残酷に響きます。
「これはただの芸術作品だ」と、自分事から切り離せない。1人の人生が終わりかけているように、運命の動機が痛烈に響きます。

ブラームスに関して人に薦めるときには、キーシンやカッチェン、廃盤となったツィマーマンの演奏など、巨大なブラームス像が迫ってくる演奏が1番いい気がしています。ただこの演奏は、「最上の家庭料理」とでもいいましょうか、素材を知り尽くしたシェフが素材の良さを最大化したような良さがあり、とても心地よく響きます。

そして!最後の小品、ガルシアと同郷スペインのモンポウ。この曲はアンコールでも聴けましたが、あっけらかんながら郷愁あふれる曲で、このアルバムジャケットの夕焼けの情景が思い浮かびます。メインのソナタ2曲の後、食後のデザートとしても最適な爽快感!


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