こんにちは。いりこです。
2025年、ピアニストのチョ・ソンジンがラヴェル生誕150年を記念したプロジェクトを発表しました。
プロジェクトの第1弾として、ソロ・ピアノ作品全集が2025年1月17日にリリースされました。第2弾は、ボストン交響楽団と共演した「ラヴェル・ピアノ協奏曲全集」が2025年2月21日に発売予定です。
チョ・ソンジン
もはや説明不要、若くして巨匠の仲間入りを果たさんとしているチョ・ソンジン。
2009年浜松国際コンクールで最年少優勝(15歳)、2011年チャイコフスキー国際コンクール第3位(17歳)、そして!2015年ショパン国際ピアノコンクール優勝(21歳)。。。
圧倒的に輝かしい経歴がありながら、クラシックの本場ヨーロッパで研鑽を続けており、作品を尊重したアプローチが特徴。しかし、一見優等生的な顔の裏には、遊び心や、ときに獰猛なまでのパッションを併せ持つピアニストです。
2024年のツアーでラヴェルを取り上げていましたが、筆者は参加できず。。。今回録音で、しかもソロピアノ作品を網羅しているという、なんともテンションの上がる企画です。
モーリス・ラヴェル
モーリス・ラヴェル (Maurice Ravel, 1875-1937) は、フランス近代音楽を代表する作曲家。「管弦楽の魔術師」と呼ばれており、「ボレロ」「展覧会の絵(ピアノ原曲からの編曲)」に代表されるオーケストレーションが有名ですが、ピアノ作品も至極。ストラヴィンスキーが「スイスの時計職人」と評した緻密な作曲技法と豊かな情感・色彩感を融合させた作品を多く生み出しました。
彼のピアノ作品は、超~~高度な技巧的課題をクリアしつつ、洗練された和声と独特の色彩感を表現しなければなりません。
特に有名な3つの組曲「鏡」「夜のガスパール」「クープランの墓」は、組曲中の1曲1曲を記事にしたいほど名曲揃い。特にバロック音楽の形式を継承しながらも、ラヴェル独自の美意識が光る最後の独奏曲「クープランの墓」はどのように演奏するか楽しみ。
収録曲/感想
ラヴェル:
グロテスクなセレナード
古風なメヌエット
亡き王女のためのパヴァーヌ
水の戯れ
ソナチネ 嬰ヘ短調
組曲「鏡」
夜のガスパール
ハイドンの名によるメヌエット
高雅で感傷的なワルツ
前奏曲 イ短調
ボロディン風に
シャブリエ風に
組曲「クープランの墓」
これは、、、ラヴェル全集の新しい決定盤だと思います。
特に衝撃だったのが、最後の「クープランの墓」、中でも1曲目「プレリュード」。
「クープランの墓」はラヴェルの古典主義的な作風が色濃く反映され、バロック的な響きが魅力的な曲集です。その中でも、無窮動な音の連続で伝統に立脚しつつ、ラヴェル特有の斬新で洗練された響きが際立っている「プレリュード」。その妙をチョ・ソンジン先生が見事に再現しています。
なんかこう、古典と近代、理知と夢想といった相反する要素が、絶え間ない16分音符に乗って押し寄せてきて、あまりの情報量に圧倒されて頭がクラクラしそうでした。しかし、軽快でクリアなタッチでバランスが取れており、特に装飾音符がなんとも自然に組み込まれているのがもうお見事、あっという間の3分間でした。
終曲の超難曲「トッカータ」では鋭いタッチをみせ、超高速パッセージの中に浮かび上がるメロディも美しかったです。組曲「鏡」の「道化師の朝の歌」でのタッチも印象的でした。もちろん流麗な曲で見せるなめらかなタッチも健在。死角なし!
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