こんにちは。いりこです。
7月22日(土)山形テルサホールにて行われた、マルティン・ガルシア・ガルシアのピアノソロ公演に行ってきました。
公演に行かれた方とも、行かれてない方とも、感動を共有できたら嬉しいです。
なんだかピアノが奥ぅの方ぉにありましたが、なぜでしょう・・・?
ショパンコンクール第3位 マルティン・ガルシア・ガルシア
スペイン出身のピアニスト、マルティン・ガルシア・ガルシア。
私が初めて知ったのは、2021年のショパンコンクールでした。
他の参加者とは一線を画す、
汗だくで楽しそうにピアノと向き合う姿に一目ぼれ。
見事3位入賞とコンチェルト賞を獲得されました。
筆者は今回、4日ぶり4回目の参戦。すっかりファン。
▼公式HP
https://martingarciagarcia.com/
▼日本ツアー楽しみ投稿をしてくれています♪
↓協奏曲公演の興奮に任せた記事(2022年11月)。
↓ソロ公演の興奮に任せた記事(2023年6月)。
↓実はこの4日前のソロ公演にも参戦してきました(笑)
こちらのメインはブラームスの「ピアノソナタ3番」(2023年7月)。
プログラム/チケット情報
2023年7月22日(土) 15:00開演 山形テルサホール
プログラム
- ショパン:
4つのマズルカ Op.33
舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
24の前奏曲 Op.28 より
第13番嬰ヘ長調/第3番ト長調/第2番イ短調/第14番変ホ短調
ピアノソナタ第2番 変ロ短調「葬送」Op.35 - リスト:
「巡礼の年第2年:イタリア」 より 「婚礼」
ピアノソナタ ロ短調 S.178
ショパンとリスト。
同じ時代(ショパンが1つ先輩)、同じ場所(パリ)で活躍し、
ロマン派の時代にピアノ道ド真ん中を突っ切った天才2人です。
ピアノ愛好家にとって憧れの的ですし、
クラシックに詳しくない人でも聞いたことある名前かと思います。
ショパンはマズルカ・舟歌・前奏曲・ソナタと多岐に亘ります。
(日本ツアー前半では、マズルカ・ワルツ・ポロネーズと舞曲多めでした)
さらにリストの巡礼の年-婚礼、ロ短調ソナタという2大巨頭プログラム。
マズルカ・舟歌のリズム感、抒情感は素晴らしいものがありましたので、今回も楽しみ。
前奏曲から抜粋。コンペティションの3次予選でも、前奏曲から数曲抜粋して「前奏曲」としてしまう独特のセンスを見せてくれました。
そしてピアノソナタ2番。コンペでは3番を演奏していましたので、初めて聴きます。
実は4日前の公演を見に行くんですが、
今回(と翌日北海道公演)のみの曲目は、リスト「ピアノソナタ ロ短調」。
前回ガルシアのソロ公演にて、シューマンの「交響的練習曲」を聴いたとき、
大規模で重厚な曲がハマる人だなあと感じ、
今回(と前回:ブラームスのソナタ3番)の公演のチケットを買いました。
チケット
全席指定:4,000円
ショパン:4つのマズルカ Op.33
マズルカは、ショパンの故郷ポーランドの民族舞踊で、3拍子。
1拍目にアクセントが来るワルツと違って、
2・3拍目にアクセントが置かれるため、
より民族的・土着的といいますか、躍動的なダンスが目に浮かびます。
ショパンは生涯50曲以上書いていて、
生前とうとう帰国が叶わなかった祖国の音楽を発信し続けると同時に、
日記のような作品だと言われています。
ショパンコンクールでも課題曲に指定され、
特別賞「マズルカ賞」が設置されていることから分かるように、
ショパンの音楽を語るうえで不可欠なジャンルです。
このOp.33の4曲、2番以外はテンションが低かったりほの暗かったり。
そのおかげで、鼻歌が楽しめるプログラムとなっております笑。
その2番はほんとうに楽しそうに、踊って弾いていました。
最後の「レ」まで跳ねるような音で華麗なフィニッシュです。
1番、3番の中間部や2番など、
リズミカルで長調の明るい響きの方が訴求力があり、
涙が誘われる気がしました。ガルシアの不思議な魅力のひとつです。
4番はゆっくりはっきりと、ずいぶん現実的な太い音が印象的でした。
途中の山場でも、テンポを上げずに丁寧に、
フレーズ一つ一つに心配りされていました。
そして切れ目なしに「舟歌」へと向かいます。
ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
舟歌(Barcarolle)は、ヴェネツィアのゴンドラの舟歌を模した性格の作品。
波ともゴンドラ漕ぎの様子とも取れる特徴的なリズムの上に、伸びやかな唄が歌われます。
一聴すると「伴奏+メロディ」というシンプルな作りに見えますが、中間部の大波+小波+旋律という3声が緻密に絡み合う構造など、技術的にも難しい曲です。
「3回失恋しないと弾けない」という(根拠のない?)言説を耳にするほど、
非常に内容が充実した最晩年の傑作で、「歌モノ」というより物語性がある作品。
ーーー 深い1音目が鳴り響くと、
そこは船頭マルちゃんのゴンドラの上でした。
「ここは僕たちしかいない特別な場所だよ」
そんなバカな話があるわけないと思いましたが、
無意識に押し殺していた心の声が解放されていくのを感じました。
そこに船頭マルちゃんの温かい歌声がじんわり染み込んできます。
慰めるでも励ますでもなく、
ただただ共感してくれる懐の深い彼の歌声に
体が熱くなっていくのを感じました。
寄り添ってくれる人がいる。
その感覚だけで自己肯定感がふつふつと湧き上がります。
気づけば舟は沖合まで来ており、波が高くなってきました。
しかし船頭マルちゃんはここぞとばかりに歌声を張り上げ、
楽しんですらいるようでした。
大丈夫、マルちゃんとなら必ず乗り越えられる、どこまででも行ける。。
波に揺られながら、過去の出来事が頭に浮かんできましたが、
なんだか全てがはるか昔のことのように思えました。
私はこれから、自分で人生の舵をとれるという確信が芽生えていました。
どれくらい時間が経ったでしょうか。
気がつくとホールに座っていて、会場が拍手に包まれているところでした。
あらら、眠りかぶってせっかくの演奏を聞き逃しちゃったかな。
しかし、夢の中で船頭マルちゃんがくれた温もりだけは体に残っていました。ーーー
、、、お粗末さまでしたm(_ _)m
コーダ(終結部)にて、
目まぐるしく調性が変わり、響きも不安定になっていく中、
通低音として鳴り響く嬰へ音が、北極星のような道標になっているような印象を受けました。
24の前奏曲 Op.28 より第13番嬰ヘ長調/第3番ト長調/第2番イ短調/第14番変ホ短調
話は遡って2021年、ガルシアはショパンコンクールの3次予選で、
前奏曲から数曲抜粋して3次予選プログラムの「前奏曲」とし、
メインディッシュのピアノソナタにつなげていました。
プログラムづくりにもこだわりを感じます。
今回はコンクールのどれとも違う曲を演奏。
そして、今回はピアノソナタ2番(コンクールは3番)へとつなぎます。
第13番、
流れる穏やかな左手の伴奏の上に、甘いメロディが乗っていきます。
これぞショパンといった醍醐味。
第3番、
高速で往来を繰り返す伴奏と、小気味のいいメロディ。
前回、ペダル多めで若干濁っていたのが気になりましたが
今日はすっきり聞こえました。
第2番、
不穏に蠢く重音、口数も少なく不安定。
ゆったりとしたテンポで、協調するメロディラインがコロコロ変わり
新鮮な響きがおもしろかったです。
第14番、
こちらも無窮動的で不穏な曲。
ゆったりと、しかし豪快に、
本来は「雨だれ」という、おおらかなメインディッシュへ効果的に橋渡しをする曲ですが、
今回はピアノソナタ2番というメインディッシュへ、緊張感を持ったまま繋ぎます。
演奏のすばらしさもさることながら、
プログラム構成も練られていておもしろい。
そしてやはり演奏が素晴らしい。
ぜひ全曲演奏を聴いてみたいです。
もちろんここは切れ目なしで次のソナタへ。
ピアノソナタ第2番 変ロ短調「葬送」Op.35
メインディッシュその1。
ガルシアはコンペで3番を弾いていたので、今回初めて聴きます。
短調で激しい主題から、最後は長調で華やかに幕を閉じる第1楽章。
テンポは意外と早めで訴求力があります。
初っ端から赤べこのように体を前後させ、もはや弾きづらそう笑。
穏やかな第2主題との対比が際立ちました。
提示部(と再現部)最後の和音・オクターブの連続で
なんだか楽しそうに小気味よく弾いている姿が印象的でした。
前回とは体のノリ方が若干違うようでした。
毎回音楽を感じながら動いているだけなのでしょうかね。
そして前触れもなく、音量とテンポアップで風に吹かれたような感覚になります。
第2楽章、ショパンお得意の”深刻な”スケルツォ。
オクターブ連発でかっこいい。
こちらも意外と早め(というかゆっくりじゃない)。
主題を繰り返すごとに表情が変わり、最後はタメ多めで劇的に。
そして第3楽章、葬送行進曲。
こちらは最初から音量全開なのが新鮮でした。
これも主題を繰り返すごとに表情がコロコロ変わります。
フレーズごとに音を切り、しっかりと歩みを進めていくような演奏です。
前回同様、
登っていく長調の部分が終わり、短調の行進に戻るところのパッセージで
後半左手をオクターブで弾いていました。
2回ともそうしてたので意図的なんだと思います。そんな版があるのかな?
無窮動な4楽章。
お葬式のあとのお墓に吹く風のように、
あるいは霊的なものがウロチョロしているかのように、
不思議な時間が流れます。
終始ペダル使用でもやもやとした雰囲気。
ところが新しい、不気味なメロディラインを浮かび上がらせるように弾いていて、
こちらも斬新でした。
その新メロディライン、途中「あれ、この曲長調(明るい)だった?」と認識させられましたが、それもすぐにかき消されてしまいました
昔からよく聞いていた曲ですが、期待にもれず独特な解釈で弾いてくれました。
恣意的に聞こえず説得力があるのが、また不思議なところです。
リスト:「巡礼の年第2年:イタリア」 より 「婚礼」
休憩を挟んで、メインディッシュその2リスト。
「巡礼の年」は、第1年~3年、第2年補遺の4集ある組曲。
リストが20代から60代まで作曲した幅広い作品が楽しめます。
第2年は「イタリア」の名の通り、
第1年同様マリー夫人と旅したイタリア旅行に着想を得て作曲されています。
最後の「ダンテを読んで:ソナタ風幻想曲」が有名。
この「婚礼」は第1曲目で、
早年の「名人芸」「超絶技巧」的イメージからかけ離れた、
「宗教的」で「清らか」なまま進みます。
とはいえオクターブの連続で演奏は大変そう。
曲の根幹をなすテーマ、
何かいいことが起こりそうな啓示的な響きで静かに幕を開けます。
神の使い:マルティン降臨。
ショパンの時にはなかなか出さない表情で、
神々しくキラキラした音色を連発するマルちゃん。
リスト:ピアノソナタ ロ短調 S.178
ほんとのメインディッシュ。
リスト嫌いの評論家でも、
この曲だけは評価しているとかいないとか。
っていう話を聞いたことあるようなないような。。。
「ピアノソナタ」としてはかなり異色で、
なんといっても単一楽章。
1曲全体でソナタ形式とみることもできれば、
1曲の中で第1~第4楽章に相当するような場面の切り替わりがある。
最後は主要なモチーフが、登場順と逆の順番で回想され、
時が巻き戻っていくような感覚になります。
最後はロ長調で穏やかに息を引き取ります。
、、、なんて細かい話を抜きにしても、
魅力的なメロディー盛りだくさん、
そして、あくまで音楽的な超絶技巧もたくさん、
非常にドラマチックでかっこいい曲です。
先ほどの「婚礼」しかり、
ショパン演奏時とは全く違う音作り。
ノーモーションから最大風速まで一瞬で達する感じ。
予測できない自然現象て感じでしょうか。
スピーカーだったら音割れするんじゃないかな。
これは録音でなくライブで体験すべし、ですね。
ショパンのソナタともブラームスのソナタとも違うと感じたのは
野生味あふれるワイルドさ、湿っぽく艶やかな妖艶さ、でしょうかね。
もともとミスタッチは多いピアニストですが、
最もクライマックスのオクターブがなかなか当たらず、、、
若干、こちらの集中力が「ふにゃふにゃ」っとなるのが玉に瑕。
しかしこれも聞き手(というか筆者)のマクロな視点が必要なんでしょう。
実際、それを考慮しても
ドラマ性・構成力、集中力・求心力は凄まじいものがありました。
CD録音ばっかり聞いてた弊害ですね。気を付けます。
よく知ってる曲ということもあり、
これまでに聞いた中で最も印象的な演奏になりました。
これからも付いていきます兄さん!(ガルちゃんは意外と年下。。。)
アンコール – 4曲も弾いてくれました♪(山形テルサHP)
- モンポウ:「子供の情景」より 1.街路での叫び
- モンポウ:「子供の情景」より 3.遊び
- モンポウ:「歌と踊り」第6番
- ショパン:ワルツ第6番「小犬のワルツ」Op.64-1
相変わらずサービス精神旺盛です。
モンポウから3曲と、ショパンの「子犬のワルツ」。
モンポウはガルシアと同郷スペイン出身の20世紀の作曲家。
一般的な知名度は高くないですが、
筆者が参加したソロコンサートでは毎回披露してくれています。
しかも今回は3曲!
冒頭に触れた、ピアノがだいぶ奥の方にあるおかげで
カーテンコールに応えてくれている場所からピアノが遠く、
「アンコール弾いちゃうよん」のおちゃめな動作が長めに楽しめ、
会場からも思わず笑い声が漏れていました笑。
また最後の子犬のワルツが鳴り始めると、
会場のあちこちから「わッ」という歓声があがり、
「にわか」への優しさをみせてくれたマルちゃんでした。
さいごに
前回のソロ公演に引き続き、
ドラマ性の強い曲を堪能できました。
ちょっと席は遠かったのですが、
それでも鼻歌、豊かな表情、タップする足音、
すべてを体験することができました。
踊りだしそうな演奏姿と勢いはライブならではですね。
なんともサービス精神旺盛ですが、お身体には気を付けてほしいです。
(翌日には北海道でのコンサートのはず、、、大変。。。)
長々と書いてしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。
ところで、みなさんは、どうやってクラシックのコンサート情報を集めてらっしゃいますか?
自分で調べてみて、情報集めるのに一苦労でした。お知恵があればお教えいただきたいです!
↓今年のツアー他公演の感想はこちら♪
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