こんにちは。いりこです。
11月29日(土)所沢市民文化センター ミューズ アークホール(埼玉県)にて行われた、クリスティアン・ツィメルマン(ツィマーマン)のソロ公演に行ってきました!
今シーズン、プログラムの全貌は当日に発表されるという、巨匠初の試み!行かれた方とも、行かれてない方とも、この感動を共有できたら嬉しいです。


1975年ショパンコンクール第1位 クリスティアン・ツィメルマン(ツィマーマン)
なんといっても1975年ショパン国際コンクール、史上最年少18歳の若さで優勝。
そしてマズルカ賞・ポロネーズ賞と特別賞も総なめ。
地元ポーランド出身優勝は20年ぶり3人目の快挙となりました。
ショパンコンクールの審査員は務めていませんが、ソナタ賞の創設者・プレゼンターと、後進への影響力も多大なピアニストです。
演奏はというと、とにかく細部まで手入れの行き届いた完成度!
「完璧すぎて疲れる」との声を目にするほどですが、それの何が問題なのでしょうか。ただの誉め言葉でしょうか。むやみにコンサートや録音を連発せず、ほんとうに純度の高い作品のみを世に出しています。ブラームスのコンチェルトなんて、これほど全ての音を鳴らしている音源は他にないんじゃないかと思うほど。
とはいえ音源数は少なくないので、質と量とを両立するという離れ業。
御年68歳、全盛期ほどの輝きはありませんが、小さいころから彼の演奏を聴いて育った筆者、人生を懸けて推すと決めたピアニストです。“引退”(先の予定は入れないといった趣旨?)発言もあったようですので、推せるときに推します。
▼過去の公演記事はこちら
【2023.11.22】クリスティアン・ツィメルマン(ツィマーマン) 公演感想 @川商ホール 第1(鹿児島)
▼2025年待望の新譜「ブラームス:ピアノ四重奏曲第2番&第3番」は英『グラモフォン賞 2025』を受賞!
▼ブラームスの協奏曲
▼筆者が好きなポスト、厳格な演奏とのギャップ萌え
プログラム/チケット情報
2025年11月29日(土) 17:00開演
所沢市民文化センター ミューズ アークホール(埼玉県)
プログラム
- シューベルト: 4つの即興曲 Op. 90, D899
- ドビュッシー:アラベスク第1番
- ドビュッシー:月の光(ベルガマスク組曲より)
- プレリュード & Co (その仲間たち) – アーティスト・セレクション
こだわりの強いツィメルマンらしく、リサイタルのプログラムもなかなか発表されないでおなじみですが、今年は日本ツアー初日の前日にやっと発表されました、笑。
しかし!待った甲斐もあり、今回のリサイタルはツィメルマン自身が「新たな視点から独自のプログラム構成に挑む」、非常に実験的かつ画期的な試みとなっています。70歳という新たな年代に向かう節目での挑戦!これは聴き逃がせません。
チケット
S席:8,700円(メンバーズ倶楽部会員 7,700円)
A席:7,300円(メンバーズ倶楽部会員 6,500円)
シューベルト: 4つの即興曲 Op. 90, D899
さて楽しみなツィメルマン×シューベルト。
第2部のプレリュードセレクションが「全曲演奏主義」からの脱却を意図していながら、ここでは4曲セットで演奏。ちょっとした皮肉?ま、筆者としては全曲好きなので一度に聴けるのはただのご褒美です。
全体的にテンポはかなり速め。
1番冒頭、右手だけのフレーズのときに、左手をピアノの上にそっと置いたまま弾くスタイル、彼もこんな弾き方をするんだと個人的に新鮮。
2番のスケールは序盤こそ少し手こずっていたものの、後半は修正されていましたね。3番は個人的に第1部のハイライトで、じんわり身体が温まってくるような響き。4番は細かい音も軽々とした弾いていましたね。
年齢をまったく感じさせない運動神経。これで世の会社の大抵のお偉いさんより年上だと思うと、凄まじい活力。
録音のかっちりした印象から力が抜けていて、しかし至極の音色は健在!
そしてなんといってもあの演奏姿。。。優美な燕尾服に、綺麗な白髪、なにより背筋をピンと伸ばし不動悠然と演奏する姿は、見た目だけでも絵になります。
最近のピアニスト(なんて言葉は使いたくないですが)には少なくなりましたね。「音」以外で表現を補助するタイプも多い気がします。
ドビュッシー:アラベスク第1番/月の光(ベルガマスク組曲より)
他の公演でちらほら噂は耳にしていましたが、第1部にこの2曲が追加されていました!ピアノ学習者大歓喜!!!
とにかく速い、速い……のに、メロディが自然に浮かび上がってくるから迷子にならない、この方に身を任せれば安心だという感があります。しかし、どうしたらこんな小さく柔らかく、しかし芯のある音が出せるのか。。。
綺麗な白髪、エレガントな弾き振る舞い。
一方で、少しぽっちゃりしたお腹に、最後の音を鳴らした後に手をふわっと上げて余韻を待つ姿が本当にキュート。カーテンコールも両手を大きくあげて受け止めてくれてギャップ萌え。
プレリュード & Co (その仲間たち) – アーティスト・セレクション
※ネタバレを(最小限に努めますが)含みます!
さて目玉の第2部(公式の発表がない限り詳細は載せないようにしたいと思いますのでご了承ください)。
単純にピアノがうまいですね。最近コンクールを聴きだして、今年は最高峰ショパンコンクールなんかもありましたが、若手ピアニストとはまた別の世界観。
・・・
1部から通してドビュッシーが多め。ショパンも5曲くらいあったでしょうか。そしてバッハが3曲もありましたね!
個人的にはバッハ。最後の超単純な主和音によって、会場の空間・時間がリセットされるような感覚がありました。中でも「パルティータ1番」、ただただ美しいし、いろいろ思い出のある曲です。それまで我慢していたのですが、あの変ロ長調が始まった瞬間に涙腺が崩壊してしまい、堪えるのに必死で記憶がほとんどありません……。お聴きになっていた方、感想教えてください、笑。
何より惹かれたのは、和音・弱音の鳴らし方。
「ピアノを完璧に制御している」というより、「ピアノが彼に懐いている、あるいはぞっこんになっている」ような音の出方なんですよね。彼の頭の真ん中にあるイメージを、ピアノが自ら汲み取って喜んで再現しているような。じゃないと、旋律がppなのに、その他のパートもちゃんと鳴っていて、じんわり響いてくるなんて、どういう仕組みで音を重ねているのか本当に分かりません笑。
即興曲2番と同じく、ショパンの前奏曲16番だけ少し残念でしたが、まあ、今のツィメルマンにそこを求めていません。
そして今回のコンサートのコンセプト、ずーーーっと聴いていられます。ホームパーティーで「なんか弾いてよ〜」とお願いしたら、ずっと応えてくれているみたいな雰囲気。
小品だからこその洒脱なリラックス感と、現役最高峰の巨匠だからこその求心力。この絶妙なバランスがずっと続き、後半はあっという間に終わりました。
そして最後はラフマニノフの「鐘」。「まだそんな引き出し残っていたのか…!」と驚く重厚な音色。そして演奏後、静かにピアノの蓋を閉めてフィニッシュ。アンコールなんて必要ない、完璧な締めくくりでした。
ツィメルマンのおすすめ音源
ツィメルマンにはラヴェルが合いそうだけど、一部に追加された2曲も含めてドビュッシーが一番多く取り上げられました。前奏曲は1巻+2巻全曲録音されていますし、今回も特に鮮烈な演奏でした。
それからシューベルトですね。即興曲は今回取り上げられたD899に加えD935も収録されています。それから最後のソナタ2つもすばらしい。リーズ国際の牛田智大さんで話題になった最後のソナタ21番ももちろんですが、個人的には20番イ長調が大好き。
さいごに
いやはや、シューベルトは相変わらず素晴らしかったですが、やはり第2部の体験ですね。
一応当日にプログラムは配られましたし、これまでの公演情報もちょこちょこ目にしていましたが、今回は事前に頭に入れず、ツィメルマンが意図した「一期一会」に乗っかりたいと思って聴いていました。
1曲目から聴いたことない作曲家でしたが(笑)、ドビュッシー、ショパン、バッハにラフマニノフと、結構有名どころを押さえながら、ガーシュウィンのジャズ色まで差し込んでくれました。
ちょっと、チケットが余っている公演探して行こうかと本気で考え中。。。
さらに12月以降の公演のプログラムは12/8公開だそうなので、こちらも楽しみです。





コメント