【2023.7.18】マルティン・ガルシア・ガルシア 公演感想 @ミューザ川崎シンフォニーホール

コンサート日記
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こんにちは。いりこです。
7月18日(火)ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川)にて行われた、マルティン・ガルシア・ガルシアのピアノソロ公演に行ってきました。

公演に行かれた方とも、行かれてない方とも、感動を共有できたら嬉しいです。

ショパンコンクール第3位 マルティン・ガルシア・ガルシア

スペイン出身のピアニスト、マルティン・ガルシア・ガルシア。
私が初めて知ったのは、2021年のショパンコンクールでした。

他の参加者とは一線を画す、
汗だくで楽しそうにピアノと向き合う姿に一目ぼれ。
見事3位入賞とコンチェルト賞を獲得されました。

筆者は今回で3回目の参戦。すっかりファン。

▼公式HP
https://martingarciagarcia.com/

▼日本ツアー楽しみ投稿をしてくれています♪

↓協奏曲公演の興奮に任せた記事(2022年11月)。

↓ソロ公演の興奮に任せた記事(2023年6月)。

↓実は4日後のソロ公演にも参戦予定(笑)
こちらのメインはリスト「ロ短調ソナタ」(2023年7月)。

プログラム/チケット情報

神奈川芸術協会HP

2023年7月18日(火) 19:00開演 ミューザ川崎シンフォニーホール

プログラム 

  • ショパン:
    4つのマズルカ Op.33
    舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
    24の前奏曲 Op.28 より
    第13番嬰ヘ長調/第3番ト長調/第2番イ短調/第14番変ホ短調
    ピアノソナタ第2番 変ロ短調「葬送」Op.35
  • ブラームス:ピアノソナタ第3番 ヘ短調 Op.5

ショパンとブラームス。

ショパンマズルカ・舟歌・前奏曲・ソナタと多岐に亘ります。
(日本ツアー前半では、マズルカ・ワルツ・ポロネーズと舞曲多めでした)
さらにブラームスのピアノソナタ第3番という贅の限りを尽くしたプログラム。

マズルカ・舟歌のリズム感、抒情感は素晴らしいものがありましたので、今回も楽しみ。
前奏曲から抜粋。コンペティションの3次予選でも、前奏曲から数曲抜粋して「前奏曲」としてしまう独特のセンスを見せてくれました。
そしてピアノソナタ2番。コンペでは3番を演奏していましたので、初めて聴きます。

実は、4日後にもソロを見に行くんですが、
今回のみの曲目は、ブラームス「ピアノソナタ第3番ヘ短調
ブラームス弱冠20歳の作品にして、人生最後のピアノソナタとした大傑作です。

前回ガルシアのソロ公演にて、シューマンの「交響的練習曲」を聴いたとき、
大規模で重厚な曲がハマる人だなあと感じ、
今回(と次:リストのロ短調ソナタ)の公演のチケットを買いました。

チケット 

S席:6,000円
A席:5,000円
P席:4,000円

ショパン:4つのマズルカ Op.33

マズルカは、ショパンの故郷ポーランドの民族舞踊で、3拍子。
1拍目にアクセントが来るワルツと違って、
2・3拍目にアクセントが置かれるため、
より民族的・土着的といいますか、躍動的なダンスが目に浮かびます。

ショパンは生涯50曲以上書いていて、
生前とうとう帰国が叶わなかった祖国の音楽を発信し続けると同時に、
日記のような作品だと言われています。
ショパンコンクールでも課題曲に指定され、
特別賞「マズルカ賞」が設置されていることから分かるように、
ショパンの音楽を語るうえで不可欠なジャンルです。

このOp.33の4曲、2番以外はテンションが低かったりほの暗かったり。
そのおかげで、鼻歌が楽しめるプログラムとなっております笑。

その2番はほんとうに楽しそうに、踊って弾いていました。
最後の「レ」まで跳ねるような音で華麗なフィニッシュです。

1番、3番の中間部や2番など、
リズミカルで長調の明るい響きの方が訴求力があり、
涙が誘われる気がしました。ガルシアの不思議な魅力のひとつです。

4番はゆっくりはっきりと、ずいぶん現実的な太い音が印象的でした。

そして切れ目なしに「舟歌」へと向かいます。

ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

舟歌(Barcarolle)は、ヴェネツィアのゴンドラの舟歌を模した性格の作品。
波ともゴンドラ漕ぎの様子とも取れる特徴的なリズムの上に、
伸びやかな唄が歌われます。
一聴すると「伴奏+メロディ」というシンプルな作りに見えますが、
中間部の大波+小波+旋律という3声が緻密に絡み合う構造など、
技術的にも難しい曲です。

「3回失恋しないと弾けない」という(根拠のない?)言説を耳にするほど、
非常に内容が充実した最晩年の傑作で、「歌モノ」というより物語性がある作品。
が、彼はやはり朗らかな鼻歌を歌いながら船を進めてくれました。

一音目の低音から、なんと深く温かい音。
そしていやらしくない自然なドラマ性。
聴いていて心と体が温まってくる感覚です。

しかし、演奏はそういった感覚的な心地よさのみならず、
緻密なハーモニーの積み重ねや内声部の歌い方など、
とてつもない研究に基づく合理性も感じました。
(それもセンスでできちゃうのかもしれませんが)

24の前奏曲 Op.28 より 第13番嬰ヘ長調/第3番ト長調/第2番イ短調/第14番変ホ短調

話は遡って2021年、ガルシアはショパンコンクールの3次予選で、
前奏曲から数曲抜粋して3次予選プログラムの「前奏曲」とし、
メインディッシュのピアノソナタにつなげていました。
プログラムづくりにもこだわりを感じます。

今回はコンクールのどれとも違う曲を演奏。
そして、今回はピアノソナタ2番(コンクールは3番)へとつなぎます。

第13番、
流れる穏やかな左手の伴奏の上に、甘いメロディが乗っていきます。
これぞショパンといった醍醐味。

ただ、なんとなくメロディーが浮いてしまっている気がしました。

第3番、
高速で往来を繰り返す伴奏と、小気味のいいメロディ。
ペダル多めで若干濁っていたのが気になりました。

第2番、
不穏に蠢く重音、口数も少なく不安定。
ゆったりとしたテンポで、協調するメロディラインがコロコロ変わり
新鮮な響きがおもしろかったです。

第14番、
こちらも無窮動的で不穏な曲。
ゆったりと、しかし豪快に、
本来は「雨だれ」という、おおらかなメインディッシュへ効果的に橋渡しをする曲ですが、
今回はピアノソナタ2番というメインディッシュへ、緊張感を持ったまま繋ぎます。

演奏のすばらしさもさることながら、
プログラム構成も練られていておもしろい。

そしてやはり演奏が素晴らしい。
ぜひ全曲演奏を聴いてみたいです。

もちろんここは切れ目なしで次のソナタへ。

ピアノソナタ第2番 変ロ短調「葬送」Op.35

メインディッシュその1。
ガルシアはコンペで3番を弾いていたので、今回初めて聴きます。

短調で激しい主題から、最後は長調で華やかに幕を閉じる第1楽章
テンポは意外と早めで訴求力があります。
穏やかな第2主題との対比が際立ちました。

提示部(と再現部)最後の和音・オクターブの連続で
なんだか楽しそうに小気味よく弾いている姿が印象的でした笑。

第2楽章、ショパンお得意の”深刻な”スケルツォ。
オクターブ連発でかっこいい。
こちらも意外と早め(というかゆっくりじゃない)。

主題を繰り返すごとに表情が変わり、最後はタメ多めで劇的に。

そして第3楽章、葬送行進曲
こちらは最初から音量全開なのが新鮮でした。
これも主題を繰り返すごとに表情がコロコロ変わります。

メロディが浮いてる感じがまだしたのですが、
ここでは不気味さにつながっており、いい演出だなと感じます。

登っていく長調の部分が終わり、短調の行進に戻るところのパッセージで
後半左手をオクターブで弾いていました。
2回ともそうしてたので意図的なんだと思います。そんな版があるのかな?

無窮動な4楽章。
お葬式のあとのお墓に吹く風のように、
あるいは霊的なものがウロチョロしているかのように、
不思議な時間が流れます。

終始ペダル使用でもやもやとした雰囲気。
ところが新しい、不気味なメロディラインを浮かび上がらせるように弾いていて、
こちらも斬新でした。
今まで意識していなかった登場人物にスポットライトが当たっていたかのようです。

昔からよく聞いていた曲ですが、期待にもれず独特な解釈で弾いてくれました。
恣意的に聞こえず説得力があるのが、また不思議なところです。

ブラームス:ピアノソナタ第3番 ヘ短調 Op.5

休憩を挟んで、メインディッシュその2ブラームス。

がるちゃん、ジャケットを脱ぎ(笑)、
白シャツに黒い蝶ネクタイが映える。

ブラームスを特徴付ける「重厚・堅固さ」はもちろん、
「情熱・もろさ・恋」といった若いエッセンスも存分に感じる、
唯一無二の作品だと思っています。

そして「運命の動機」の3連符が1楽章から登場し、
3・4楽章でもふんだんに使用されます。
(特に4楽章は、構成要素の半分は占めてます)
ソナタ1番の主題がベートーヴェンの
ハンマークラヴィーアソナタ(29番)に似てたりしますが、
ブラームスのベートーヴェンリスペクトを感じます。

いちいち重音だったり、和音が重厚だったり、オクターブだったりと、
かっこいいですが音を押さえるだけで大変そう。
しかしあくまで「音楽的に必要な技巧」になっているのが
若さと老成さが両立しているところかなと思います。

一言でまとめると難しそうな曲です。。。

1楽章、
ピアノの音域を低音の端から端まで、強音で一気に駆け上がるという、
初っ端からドラスティックなテーマを突きつけられます。

が、ここは椅子に座るや否や、さらっと弾いてします(あんぐり)。

全体的に丁寧に、大人の落ち着きで弾き進めます。
メロディが浮いてる感覚はなくなり、馴染んできた印象。

ただ元来ミスタッチが目立つピアニストで、
こっちも承知の上なんですが、あんまり続くとちょっともったいない気がします。
(まあでもスケジュール詰まりまくりですからね!
ぼちぼち休んでほしいと切に思います笑。)

2楽章、これはもう非の打ちどころがなかったのではないでしょうか!

まず弱音と、和音のコントロールが抜群。

変ニ長調での問答のような箇所。
別世界に住む二人、結ばれることのない二人の、
束の間の会話みたいで切ないと思っていましたが、
ここが非常に温かい。
その後の、搔き立てるような焦燥感のある伴奏のところ、
切なくも、根底には彼の人柄、優しさ、おおらかさが流れていました。

終始鳥肌が立ちっぱなしの10分間でした。。。

切れ目なく第3楽章スケルツォ。
ここはペダル少な目で軽めのタッチ。

第4楽章、2楽章のテーマが短調で再放送。
そして「運命の動機」が曲の半分を占めます。
もやもや、あるいは絶望感をもって最終楽章へ。

付点のリズムが特徴的ですが、弾き飛ばさずに丁寧に弾き進めます。
落ち着いたアプローチが逆にドラマ性を掻き立てている印象でした。

この曲、最後に長調で煌びやかに終わるのが救われますよね。

最後は会場全体が全能感というか、
勝利をつかんだような一体感に包まれているように感じました。

彼は何というか、ストーリーテラーとして優秀だと感じます。
そして人の人生や苦悩も一緒に背負ってくれる器の大きさ。

いやー来てよかった笑。

アンコール – 5曲も弾いてくれました♪(ミューザHP)

  • モンポウ:「歌と踊り」第4番
  • ショパン:ワルツ第6番「小犬のワルツ」Op.64-1
  • ラフマニノフ:「音の絵」(絵画的練習曲)第5番 Op.39-5
  • リスト:「巡礼の年第2年:イタリア」より「婚礼」S.161
  • ショパン:ワルツ第4番 「猫のワルツ」 Op.34-3

なんと5曲!
1曲目は知らないなーモンポウとかかなー
前回も弾いてくれたしーと思ったらモンポウ。
ボリュームの大きい曲が続いたので、
スコーンとした曲を弾いてくれて胃もたれしませんでした。

あとはリストの「婚礼」!え!
本プログラムの曲やん!贅沢すぎひん??

大好きなラフマニノフの音の絵、
そして有名なショパンのワルツを2つ。

「子犬のワルツとか有名な曲はありがたいよねー」
という声を帰りに耳にしました。

「にわか」を置き去りにしない優しですね。
贅沢なデザート5品でした。

さいごに

前回のソロ公演に引き続き、
ドラマ性の強い曲を堪能できました。

別に泣いてはないのですが、体が火照っています。
だいぶ興奮してたみたいです。

ちょっと席は遠かったのですが、
それでも鼻歌、豊かな表情、タップする足音、
すべてを体験することができました。

踊りだしそうな演奏姿と勢いはライブならではですね。

そしてアンコールも5曲。
19:00開演で、終わったのが21:37頃という笑。
なんともサービス精神旺盛です。お身体には気を付けてほしいです。

長々と書いてしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。

ところで、みなさんは、どうやってクラシックのコンサート情報を集めてらっしゃいますか?
自分で調べてみて、情報集めるのに一苦労でした。お知恵があればお教えいただきたいです!

↓今年のツアー他公演の感想はこちら♪

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