【2026.5.31】小林愛実 ピアノリサイタル感想 @福岡シンフォニーホール

コンサート日記
この記事は約8分で読めます。
本サイトで紹介している商品等の外部リンクには、アフィリエイト広告を利用しているものがあります

こんにちは。いりこです。
5月31日(日)アクロス福岡 福岡シンフォニーホールにて行われた小林愛実のピアノリサイタルに行ってきました。

公演に行かれた方とも、行かれてない方とも、この感動を共有できたら嬉しいです♪

ブログと連携したXアカウントを開設しました!

記事の更新情報などを、よりタイムリーに発信

フォローで最新情報をゲット!👉 @iriko_music

2021年ショパンコンクール第4位 小林 愛実

1995年生まれ、山口県宇部市出身のピアニスト。3歳でピアノを始め、7歳でオーケストラと共演という、絵に描いたような神童として早くから注目を集めてきました。

筆者が彼女を初めて聴いたのは2021年の第18回ショパン国際コンクール。2015年第17回でもファイナリストに進出し、そして満を持して臨んだ2021年で見事第4位入賞を果たしました。前回もファイナリスト、今回も入賞という連続ファイナリストの快挙。日本人としては2005年以来の入賞でもあり、第2位の反田恭平とあわせて日本でも大きな話題になりました。その後2023年、その反田恭平とのご結婚を発表されたのも記憶に新しいところです。

筆者が小林愛実の演奏でいちばん惹かれるのは、その音色のなめらかさ。轟音を鳴らすタイプではないのですが、渦のように体にまとわりついて、いつの間にか持っていかれるような推進力・説得力があるんです。デュナーミク(音量)の幅はけっして大きくないのに、その限られた幅の中の層がものすごく細かく統制されていて、重層的でバラエティ豊か。特に第3ステージの「24の前奏曲」全曲が圧巻で、あの渦に巻き込まれる感覚は今でも忘れられません。

▼2021年ショパンコンクールを振り返った記事はこちら

プログラム/チケット情報

公演情報:アクロス福岡 福岡シンフォニーホール

2026年5月31日(日) 14:00開演 @アクロス福岡 福岡シンフォニーホール(福岡県)

プログラム

  • ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
  • ラヴェル:ボロディン風に/シャブリエ風に
  • ラヴェル:クープランの墓
  • シューベルト:ピアノソナタ 第20番 イ長調 D.959

ショパンの舟歌で幕を開け、ラヴェルの小品2作から晩年の名作「クープランの墓」へ、そして最後はシューベルト最晩年の大作ピアノソナタ第20番で締めくくられる構成。

特にクープランの墓シューベルトの20番は筆者の大好きな曲!にもかかわらず、コンサート・コンクールで聴く機会も少ないので、それを一挙に聴ける贅沢なプログラム!!ワクワクが止まりません。

チケット

全席指定:5,500円

ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

幕開けはショパン晩年の名曲「舟歌」。

冒頭から長い時間を取り、彼女の真骨頂である音の流れと緻密なコントロールを感じる演奏。一音一音が丁寧に磨かれていて、純粋な音楽性と物語性のバランスが取れたさすがの演奏でした。

一方で正直に書くと少し気になる瞬間も。
中間部、複雑な内声の上に、オクターブユニゾンで紡がれるメロディ、これがふと(意図的ではなさそう)上下入れ替わって聴こえたりして、なんだか一貫性が途切れるように感じる箇所も。
それから、この曲の性格上いちばん味わいたい低音―舟を漕ぐような揺れや、中間部では寄せては返す波―が、意識して鳴らしている部分以外はあまりこちらまで飛んでこず、そこは意識の端っこでずっと感じていたい要素だっただけに、少し物足りなさも。まあこれは会場や席の影響もあるのかもしれません。

ラヴェル:ボロディン風に/シャブリエ風に

ボロディン、シャブリエという2人の作曲家の作風をラヴェルが模した、遊び心のある小品2つ。
ここは素直によかったです。肩の力がふっと抜けた洒落た佇まいで、続く「クープランの墓」への良い助走になっていました。

ラヴェル:クープランの墓

  • 前奏曲
  • フーガ
  • フォルラーヌ
  • リゴドン
  • メヌエット
  • トッカータ

筆者にとってははじめて生で聴いたこの曲。期待が大きかったぶん、聴きどころも課題も両方くっきり見えたセクションでした。

なんといっても前奏曲ほんとうに魔法のよう、ファンタジーの世界でした。現実的で古典的な音色と、フランス、というかラヴェル特有の色彩とが同時に立ちあらわれて、それが彼女の一枚もののシルクようにまとわりつく音色で絡め取られていくような体験は鳥肌もの!

いつか自分でも弾いてみたいなあと思わせてくれました。

そして比較的内省的なフーガ〜メヌエットでの繊細で静謐な世界観は、やはり彼女の領域だなと改めて感じます。その中でもフォルラーヌ!まず鬱々としながら舞踏的なリズムも一貫して流れるこの曲が絶品なのですが、うまいこと弾いてくれてました。

一方で終曲トッカータ、これが難しいところ。
そもそもこの曲集、異質で超絶技巧のフィナーレと、それまでの柔らかな表現と、その両方を乗りこなさないといけないのがピアニスト泣かせなのかな。しかもその割に華やかには映りにくい(6曲だとちょっと長いし)ので、なかなか取り上げられづらいのかな、とも感じます。こういう曲をガッチリ弾ききれるかどうかで、レパートリーの幅も決まってくるのかも。

今回の演奏もどこか精一杯で、メロディラインが消えてしまいがち。。ただの技巧曲ではなく、メロディも和声もかなりエグいことをしていて、そこがとってもとってもかっこいい曲なのですが、まあ、ライブ演奏に求めすぎなのかもしれませんし、会場や席の影響もあるかもです。

とはいえトッカータも破綻してなかったですし、何より前奏曲はじめそれまでの演奏が素晴らしすぎましたので、大いにお釣りがくる名演でした!

シューベルト:ピアノソナタ 第20番 イ長調 D.959

  • 第1楽章 Allegro
  • 第2楽章 Andantino
  • 第3楽章 Scherzo: Allegro vivace
  • 第4楽章 Rondo: Allegretto

泣きました。。。

まず、筆者の大好きな曲
シューベルト最晩年のソナタ第20番 D.959です。勝利感に満ちた行進チックの堂々たる出だしから印象的で、自信満々のようでいて、根っこには内省の色が強く流れている。その不思議なバランス感覚がたまらない曲です。

個人的にぐっとくるのは、各楽章の振れ幅。へこんで暗い第2楽章(嬰ヘ短調)は、突如、他責で自暴自棄になってあたり散らかすような中間部の豹変ぶりが壮絶で、常軌を逸しています笑。明るく軽やかな第3楽章スケルツォでも、イ長調で楽しくやっていたのに急にハ短調の下降スケールでガッと荒くなる一瞬があって、その人間らしさが、ベートーヴェンやモーツァルトでは摂取できないシューベルトならではの魅力です。そして第4楽章は「歌曲王シューベルト」をいかんなく感じる、人の体温に似た温かみの主題。ただ温かいだけの長調ではなく、曇り・くすぶり・憤り……そういったものをシームレスに経験していく、まさにひとの人生に寄り添ってくれるような曲だと感じています。

そしてここが彼女の本丸、という演奏でした。
第1楽章から、これまでの曲以上に一層ピアノがよく響いている。間のとり方、そしてさすがの弱音のコントロールはやはりピカイチ。彼女はシューベルトをよく収録しているイメージがありましたが、なるほどと納得させられる部分の多い演奏でした。

そして第4楽章……これはちょっと涙が溢れてしまいました(笑)。はじめて生で聴くシューベルトの20番、それを小林さんのピアニズムで余すところなく届けてもらえて、もう感無量です。。。

アンコール

  • シューマン:トロイメライ(「子どもの情景」Op.15 より)
  • シューマン=リスト:献呈

シューベルトで人生の山も谷もたっぷり味わったあとに、胃にやさしい2曲
シューマンの「トロイメライ」と、こちらもシューマンの歌曲をリストがピアノ用に編曲した「献呈」という、なんとも沁みる選曲です。

ここはもう文句なしで、彼女の素晴らしさが全面に出ていました。献呈なんか聴くと、リストも合いそうというか、ぜひ聴いてみたいなあという気持ちにさせられました。

小林愛実のおすすめ音源

シューベルト:4つの即興曲 Op.142/ピアノソナタ 第19番 ハ短調 D.958/ロンド イ長調 他(2024年)

3年ぶりとなった2024年の最新録音は、オール・シューベルト。なんと今回弾くピアノソナタ第20番 D.959の“ひとつ前”にあたる第19番 ハ短調 D.958を収めた一枚です。小林愛実がシューベルト作品としてはじめて手がけた、留学時代からの縁の深い曲なのだとか。今日のシューベルトに心を持っていかれたら、ぜひこの最新盤も。

※Amazon Musicをはじめ各音楽配信サービスの料金・音質の比較はこちらの記事でまとめています。プログラムの予習にも便利ですよ。

ショパン:前奏曲集 他(24の前奏曲/幻想ポロネーズ/幻想即興曲)(2021年)

2021年のショパンコンクール直前、新潟・魚沼の小国カルチャーホールで録音されたスタジオ盤。経歴のところでも触れた、あの第3ステージで圧巻だった「24の前奏曲」がじっくり味わえます。今日の舟歌でショパン弾きとしての彼女に惹かれたら、こちらもぜひ。

さいごに

全体を振り返ると、やはりシューベルトのソナタ第20番が圧巻でした。後半、彼女の本丸であるシューベルトに入ってからの説得力はやはり別格。弱音のコントロールと、内省的な歌、、彼女の最大の魅力がぎゅっと詰まった一夜でした。そしてアンコール2曲の温かさ……。
いつか今日のシューベルト20番も、ぜひ録音で残してくれたらなあと願わずにいられません。。。

最後までお読みいただきありがとうございました。公演に行かれた方とも、行かれてない方とも、一緒に小林愛実のピアノを味わえたら嬉しいです♪

▼今日のプログラムを予習したり、いろんなピアニストの演奏を聴き比べたいときは、音楽サブスクがとっても便利。料金・音質・使い勝手を比較しました。

▼当ブログでは「お金と時間さえあれば漏れなく行きたい!」と思うコンサートをまとめています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました