こんにちは。いりこです。
ショパンコンクール予備予選の盛り上がりも冷めやらぬ中、５月５日からベルギー・ブリュッセルでエリザベート王妃国際音楽コンクールが開催されます。
2025年は大コンクールイヤー！
こちらの記事でまとめた15のコンクールのうち７つが開催されます。そして10月には、つい先日予備予選が行われた最高峰ショパン国際コンクールの本大会も控えます。
バッハ国際、ロン＝ティボー国際に続いて、早くも３つ目のコンクールです。
記事執筆が出遅れておりますが、５月後半からはヴァン・クライバーンも迫っているのでね・・・頑張って追いつくぞ。
エリザベート王妃国際音楽コンクール 概要
【公式HP】（フランス語・英語）https://queenelisabethcompetition.be/en/
【公式YouTube】https://youtube.com/@queenelisabethcompetition
※ライブ配信・アーカイブは公式HPのみ！
ショパン国際、チャイコフスキー国際と並んで世界三大ピアノコンクールと称されているコンクール。
三大コンクールの中で最も歴史が古く、また他２つと異なり特定の作曲家を冠していないのが特徴で、比較的公平だとみなされるようです。
ピアノのほかに、ヴァイオリン・声楽・チェロ（以前は作曲）部門があり、各部門順番で毎年開催されています。
優勝者には第１回ギレリスをはじめ、アシュケナージ、エル＝バシャ、入賞者にはベルマン、ペトロフ、内田光子、カツァリスとなかなか豪華なお名前が並んでいます。前回2021年には務川 慧悟（第３位）／阪田 知樹（第４位）が入賞して話題になりました。
- 概要
開催地：ブリュッセル（ベルギー）
開催間隔：各部門４年に１度（前回：2021年5月（2020年から延期）、次回：2025年）
歴史：ピアノ部門第１回1938年
- 主な優勝者・入賞者
優勝者：エミール・ギレリス（1938）、ウラディミール・アシュケナージ（1956）、アブデル・ラーマン・エル＝バシャ（1978）、ジョナタン・フルネル（2021）
入賞者：ラザール・ベルマン（1956年第５位）、ニコライ・ペトロフ（1964年第２位）、内田 光子（1968年第10位）、シプリアン・カツァリス（1972年第９位）、務川 慧悟（2021年第３位）、阪田 知樹（2021年第４位）
スケジュール
第１次予選（60名）：2025年5月5日（月）～ 5月10日（土）5月5日（月）15:00（日本時間22:00）、20:00（日本時間 翌3:00）
5月6日（火）15:00（日本時間22:00）、20:00（日本時間 翌3:00）
5月7日（水）15:00（日本時間22:00）、20:00（日本時間 翌3:00）
5月8日（木）15:00（日本時間22:00）、20:00（日本時間 翌3:00）
5月9日（金）15:00（日本時間22:00）、20:00（日本時間 翌3:00）
5月10日（土）15:00（日本時間22:00）、20:00（日本時間 翌3:00）
セミファイナル（24名）：2025年5月12日（月）～ 5月17日（土）
ファイナル（12名）：2025年5月26日（月）～ 5月31日（土）
とにかく長丁場！セミファイナル・ファイナルの両方で未出版の課題曲が差し込まれるなど、質・量ともにタフなたたかいとなります。
プログラム
第１次予選（60名）
演奏時間：約25分
- The first movement of a sonata by Haydn, Mozart or Beethoven (up to and including op.31).
／ハイドン、モーツァルト、またはベートーヴェン（作品番号31以前）作曲のソナタの第1楽章 - A work of choice. ／自由選択の作品
The duration of both above mentioned works combined must not exceed 14 minutes.
／上記２作品の合計演奏時間は14分を超えてはならない。
- Four études:／4つのエチュード：
a. an étude by Chopin;／ショパンによるエチュード1曲
b. an étude by Liszt;／リストによるエチュード1曲
c. an étude by Ligeti;／リゲティによるエチュード1曲
d. an étude of choice, written by another composer than Chopin, Liszt or Ligeti.
／ショパン、リスト、リゲティ以外の作曲家による自由選択のエチュード1曲
Each candidate will play the works or excerpts from works that the jury will choose from among the works proposed. The jury’s choice will be communicated to the candidate one hour before the performance. The candidate will choose the order in which he or she will play the different works in his or her programme.
／候補者は、提出したプログラムの中から、審査員が選んだ作品またはその抜粋を演奏する。審査員の選択は、演奏の1時間前に候補者に通知される。プログラム内の演奏順は自由。
5月7日（水）15:00（日本時間22:00）
Seho Young (United States of America, Year of birth: 1997)
Wolfgang Amadeus Mozart: Allegro (Sonata n. 18 in D major KV 576)
／モーツァルト：ソナタ第18番 ニ長調 KV576より アレグロ
Franz Liszt: Etude de concert S 144/3 “Un sospiro”
／リスト：3つの演奏会用練習曲 S.144 より 第3番「ため息」
György Ligeti: Etude n. 10 “Der Zauberlehrling”
／リゲティ：エチュード第10番 「魔法使いの弟子」
Fryderyk Chopin: Scherzo n. 4 in E major op. 54
／ショパン：スケルツォ第4番 ホ長調 Op.54
これがモーツァルトの難しいところというか、ゆったり落ち着いたタッチで丁寧だったのですが、いまいちピンとこないというか、特別な演奏にするのはやはり難しいんだなという印象です。
Fangzhou Ye (China, Year of birth: 2000)
Franz Liszt: St François de Paule marchant sur les flots
／リスト：伝説 第2曲「水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ」 S.175
György Ligeti: Etude n. 15 “White on white”
／リゲティ：エチュード第15番 「白の上の白」
Sergey Rachmaninov: Etude-tableau in D minor op. 39/8
／ラフマニノフ：絵画的練習曲「音の絵」 ニ短調 Op.39-8
Ludwig van Beethoven: Allegro (Sonata n. 10 in G major op. 14/2)
／ベートーヴェン：ソナタ第10番 ト長調 Op.14-2 より アレグロ
ダイナミックな前半から後味さっぱりベートーヴェンまでよかったです。
Aidan Mikdad (The Netherlands, Year of birth: 2001)
Ludwig van Beethoven: Allegro (Sonata n. 6 in F major op. 10/2)
／ベートーヴェン：ソナタ第6番 ヘ長調 Op.10-2 より アレグロ
Aleksandr Skryabin: Etude in A flat major op. 8/8
／スクリャービン：エチュード 変イ長調 Op.8-8
Franz Liszt: Etude d’exécution transcendante n. 10
／リスト：超絶技巧練習曲第10番 S.139-10
Vladimir Horowitz: Danse macabre (after C. Saint-Saëns & F. Liszt)
／サン＝サーンス – リスト – ホロヴィッツ編：死の舞踏
落ち着いたベートーヴェン、遅めのテンポで逆に迫力があります。リストの超絶技巧練習曲も丁寧で好みの演奏でした。昨日も演奏があったサン＝サーンス – リストの「死の舞踏」、今回はさらにホロヴィッツが編曲したものという入り組み様、笑。全体的に安心して聴けたピアニストでした。
Seongwoo Moon (Korea, Year of birth: 2000)
Wolfgang Amadeus Mozart: Allegro (Sonata n. 3 in B flat major KV 281)
／モーツァルト：ソナタ第3番 変ロ長調 KV281より アレグロ
Robert Schumann: Novellette n. 8 in F sharp minor (8 Novelletten op. 21)
／シューマン：8つのノヴェレッテ Op.21 より 第8番 嬰ヘ短調
György Ligeti: Etude n. 10 “Der Zauberlehrling”
／リゲティ：エチュード第10番 「魔法使いの弟子」
Franz Liszt: Etude d’exécution transcendante n. 7 “Eroica”
／リスト：超絶技巧練習曲第7番「英雄」 S.139-7
コンクールを通して聴くようになったシューマン。「ノヴェレッテ」は短編小説が関連しているとされ、シューマンが作った言葉のようです。この８番は10分くらいの中規模曲でいろんな場面が流れ、シューマンっぽさが詰め込まれた曲ですね。
Nicolas Margarit (Australia, Spain, Year of birth: 1999)
Joseph Haydn: Moderato (Sonata in F major Hob. XVI:29)
／ハイドン：ソナタ ヘ長調 Hob. XVI:29 より モデラート
Sergey Rachmaninov: Etude-tableau in G minor op. 33/8
／ラフマニノフ：絵画的練習曲「音の絵」 ト短調 Op.33-8
Franz Liszt: Etude de concert S 145/2 “Gnomenreigen”
／リスト：2つの演奏会用練習曲 S.145 より 第2番「小人の踊り」
Aleksandr Skryabin: Sonata n. 9 op. 68
／スクリャービン：ソナタ第9番 「黒ミサ」 Op.68
5月7日（水）20:00（日本時間 翌3:00）
Daumants Liepins (Latvia, Year of birth: 1994)
Ludwig van Beethoven: Grave – Allegro di molto e con brio (Sonata n. 8 in C minor op. 13)
／ベートーヴェン：ソナタ第8番 ハ短調「悲愴」Op.13 より グラーヴェ – アレグロ・ディ・モルト・エ・コン・ブリオ
Claude Debussy: La soirée dans Grenade
／ドビュッシー：「版画」より「グラナダの夕べ」
György Ligeti: Etude n. 4 “Fanfares”
／リゲティ：エチュード第4番 「ファンファーレ」
Sergey Rachmaninov: Etude-tableau in A minor op. 39/6
／ラフマニノフ：絵画的練習曲「音の絵」 イ短調 Op. 39-6
2024年ゲザ・アンダ国際で同率２位となったピアニストですね。そのときは彼の演奏を理解できず、１曲目のベートーヴェンも、、、という感じでしたが、今回のヨーロッパスタンダードに慣れてくると後半の曲はよかったようにも思います。ラフマニノフはダイナミックでよかったですね。
Yuanfan Yang (Great Britain, Year of birth: 1997)
Wolfgang Amadeus Mozart: Allegro moderato (Sonata n. 10 in C major KV 330)
／モーツァルト：ソナタ第10番 ハ長調 KV330より アレグロ・モデラート
Sergey Rachmaninov: Etude-tableau in E flat minor op. 39/5
／ラフマニノフ：絵画的練習曲「音の絵」 変ホ短調 Op.39-5
György Ligeti: Etude n. 5 “Arc-en-ciel”
／リゲティ：エチュード第5番 「虹」
Mikhail Glinka: Valse-fantasie
／グリンカ：幻想的ワルツ
グリンカといえば「ルスランとリュドミラ」序曲は小さいころから大好きですが、それしか知りません。。。どうやったらグリンカのピアノ曲にたどり着くんでしょう。聴きやすく印象的な曲でした。
Yi-Chen Feng (Taiwan, Year of birth: 1997)
Nikolai Medtner: Sonata tragica op. 39/5
／メトネル：忘れられた調べ 第2集 より 「悲劇的ソナタ」 Op.39-5
Fryderyk Chopin: Etude in C major op. 10/1
／ショパン：エチュード ハ長調 Op.10-1
Joseph Haydn: Allegro (Sonate in G major Hob. XVI:6)
／ハイドン：ソナタ ト長調 Hob. XVI:6 より アレグロ
Franz Liszt: Etude d’exécution transcendante n. 4 “Mazeppa”
／リスト：超絶技巧練習曲第4番「マゼッパ」 S.139-4
こちらもコンクールでよく耳にし、勉強したいと思っているメトネル。
Sergey Tanin (Russian Federation, Year of birth: 1995) セミファイナル進出
Wolfgang Amadeus Mozart: Allegro spirito (Sonata n. 7 in C major KV 309)
／モーツァルト：ソナタ第7番 ハ長調 KV309より アレグロ・スピリト
Fryderyk Chopin: Etude in A minor op. 10/2
／ショパン：エチュード イ短調 Op.10-2
Fryderyk Chopin: Scherzo n. 3 in C sharp minor op. 39
／ショパン：スケルツォ第3番 嬰ハ短調 Op.39
György Ligeti: Etude n. 6 “Automne à Varsovie”
／リゲティ：エチュード第6番 「ワルシャワの秋」
なんとも柔らかい音色で、難曲ショパンOp.10-2も非常になめらか。落ち着いていて好感の持てるピアニストでした！
Bo Zhang (China, Year of birth: 2001)
Ludwig van Beethoven: Allegro (Sonata n. 6 in F major op. 10/2)
／ベートーヴェン：ソナタ第6番 ヘ長調 Op.10-2 より アレグロ
Fryderyk Chopin: Etude in A flat major op. 10/10
／ショパン：Etude in A flat major Op. 10/10
Fryderyk Chopin: Ballade n. 3 in A flat major op. 47
／ショパン：バラード第3番 変イ長調 Op.47
Sergey Prokofiev: Etude in D minor op. 2/1
／プロコフィエフ：4つのエチュード Op.2 より 第1番 ニ短調
３日目まとめ
３日目お疲れさまでしたm(_ _)m
１か月にわたる長丁場ですが、一人あたりは20分ちょっとで、課題曲も制約が強いようで選択肢は多いのでバリエーションが楽しめました。
全体的に拮抗している印象で、だれか一人が次に進むなら他の人もいいような気がします。
Aidan Mikdad、Sergey Tanin、それからDaumants Liepinsあたりが印象深かったピアニストです。
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