【2026.6.8】ブルース・リウ ピアノリサイタル感想 @すみだトリフォニーホール

コンサート日記
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こんにちは。いりこです。
2026年6月8日(月)、すみだトリフォニーホールにて行われたブルース・リウのピアノ・リサイタルに行ってきました!

2021年ショパン国際コンクールの覇者にして、いま世界でもっともチケットが取りにくいピアニストのひとり。今回は8月発売の新譜「ルナリス(LUNARIS)」を彩る“月と夜”のプログラムを、ソロでたっぷり披露してくれました。公演に行かれた方とも、行かれなかった方とも、この感動を共有できたら嬉しいです♪

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2021年ショパンコンクール第1位 ブルース・リウ

1997年パリ生まれ、カナダ・モントリオール育ちのピアニスト。2021年の第18回ショパン国際コンクールで見事第1位に輝き、一躍世界の頂点へ躍り出ました。中国系フランス生まれのカナダ育ちという経歴で、「○○人」という括りがもう意味をなさない、まさに新時代のスターピアニストです。

2021年大会で筆者がいちばん惹かれたのは、その明るく華やかな音色と、スピード感と広がりのある大きな響き。歴代のショパンコンクール優勝者とはちょっと違う方向性でありながら、「コロナ禍で1年延期」という事情の中、世界中の人が待ち望んだ光のような優勝でした。

特に各ステージの“締めの曲”(スケルツォ4番華麗なる大ポロネーズラ・チ・ダレム変奏曲ピアノ協奏曲第3楽章)がピカイチで、強烈な印象を残してくれました。なかでも第3ステージの「ラ・チ・ダレム変奏曲」は、もう彼の代名詞!録音も少ないマイナー曲を大舞台のフィナーレにぶっ込んで華麗に弾ききるあのスター性、鮮やかでした。これらコンクールでの名演は、ライヴ盤『第18回ショパン国際コンクール優勝者ライヴ2021』(SHM-CD)でじっくり聴けます(Amazon楽天)。

▼2021年ショパンコンクールを振り返った記事はこちら

筆者としては、彼の本領はヴィルトゥオーゾ物にあると思います。上述した各ステージ終曲はどれも鮮烈でしたし、一度生で聞いた2023年広島公演でも、ショパンの曲以上に、締めに弾いたリスト「ドン・ジョヴァンニの回想」での鬼気迫る超絶技巧に全部持っていかれて、「こういう演奏をもっと聴きたい!」と唸らされました。正直に言うと、ミスタッチは多めというか、割と大きい演奏をするタイプのピアニストですが、少々のミスは大目に見たくなる。それ以上の興奮と経験を持って帰らせてくれるピアニストなんです。

人柄もどこかお茶目、ファーストネームの「ブルース」はあのブルース・リーから取ったそう。広島公演では3曲もアンコールに応えたあと、「飛行機✈️があるからもう寝る💤」というジェスチャーで客席を沸かせていました、笑。日本にも毎年来日してくれています。

▼2023年に広島で聴いたときの感想はこちら

プログラム/チケット情報

公演情報:ジャパン・アーツ

2026年6月8日(月) 19:00開演 @すみだトリフォニーホール(東京都)

プログラム

  • リゲティ:ピアノ練習曲集 第1巻 より 第4番「ファンファーレ」
  • ベートーヴェン:ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」
  • ショパン:ノクターン 第7番 嬰ハ短調 Op.27-1/第8番 変ニ長調 Op.27-2
  • ラヴェル:「鏡」より 第4曲「道化師の朝の歌」

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  • ドビュッシー:夢
  • ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番 ハ長調 Op.53「ヴァルトシュタイン」
  • モンポウ:「月の光」によるグロッサ
  • アルベニス:イベリア 第1巻 より 第2曲「港(エル・プエルト)」
  • リスト:スペイン狂詩曲

今回のプログラム、注目は8月7日発売の新譜「ルナリス(LUNARIS)」とほぼそのまま重なっていること。「ルナリス」=ラテン語で“月の”という意味で、ベートーヴェンの「月光」を軸に、ドビュッシー「夢」やモンポウ「月の光によるグロッサ」など、月・夜・幻想をめぐる曲を散りばめたコンセプト。つまり、実質、新譜「ルナリス」のお披露目リサイタルと言ってよさそうで、今からワクワクが止まりません。

チケット

S席:9,000円
A席:7,000円
B席:5,000円

リゲティ:ピアノ練習曲集 第1巻 より 第4番「ファンファーレ」

コンクールを追いかけるようになって耳にするようになったリゲティ。生で聴くのは今日が初めてでした。

そして恥ずかしながら、大事なことを忘れていました。。。。彼の大きな魅力は、この“柔らかい音色”だということを!

ぐるぐると循環していく不思議な音階、まるで鍵盤をただ撫でているかのような軽やかで滑らかな弱音で流れていく。その上に、ちゃめっ気のあるメロディがちょこんと乗って、そのまま継ぎ目なく、すうっと「月光」へ。開幕から一気に持っていかれました

ベートーヴェン:ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」

  • 第1楽章 Adagio sostenuto
  • 第2楽章 Allegretto
  • 第3楽章 Presto agitato

子どもの頃から聴いてきて、ピアノを習った人なら一度は憧れるであろう、あの「月光」。
第1楽章からもう、良かったです。メロディの浮かび方も、静かな水面のような三連符も、こんな王道中の王道の曲でも、奇をてらわずまっすぐ勝負できるのは、さすがの一言。

舞曲風の2楽章は楽しそうで、そして上品!これを聴いて、2021年のショパンコンクールで弾いていた彼のワルツがめちゃくちゃに良かったことを、ふと思い出しました。

3楽章は速め。それでももちろん破綻なんてなくズンズン突き進んでいきますが、盛り上がってくるとどこか寸詰まりに感じる瞬間があって、少し気になったところ。

ショパン:ノクターン 第7番・第8番 Op.27

至高

なんなんでしょうか、あの弱音は。。。。音が「出ている」というより「ピアノに吸い込まれている」みたいな。単音より和音の方が弱い音でなっていたりして、なんかそれ「物理的にあり得る??」て感じ。それでいて芯はしっかり「鳴って」いて、客席までちゃんと「届いてくる」。これが同時に成り立っているのが不思議でなりません。

正直、キラキラと華やかな面ばかりが記憶に残っていたのですが……この音色は本当に魅力。というより、コンクールのときより、3年前広島で聴いたときよりも進化しているように感じました。実際、2021年コンクールで弾いた同じノクターン第7番 Op.27-1と聴き比べると、その違いがよくわかります。

ラヴェル:道化師の朝の歌(「鏡」より 第4曲)

一転して、ダンサブルでとても楽しそう。この歯切れのよさはお待ちかねのやつ!耳心地いいんです。

少し寸詰まりに感じる箇所は個人的に気になるところ。でも中間部、あの音の塊まで、フラットで柔らかいまま、ぎゅーっと密度の高い音で鳴らしてくる。さすがでした。

知らなかったのですが、デビュー盤といえる「ウェイブス」ではこの曲含めフランス物を弾いていたのですね。フランス語話者ですしね。あとで聴いてみよう。

ドビュッシー:夢

後半は、ドビュッシーの「夢」で静かに幕開け。

初心者にも親しみやすいレベル感の曲で、あまりプロの実演でで聴く機会のない一曲ですが、ふわりと“月と夜”の世界へ戻してくれました。ここでもね、やわらかーいです、お布団に包まれて文字通り夢見心地でした。

ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番 ハ長調 Op.53「ヴァルトシュタイン」

  • 第1楽章 Allegro con brio
  • 第2楽章 Introduzione: Adagio molto
  • 第3楽章 Rondo: Allegretto moderato – Prestissimo

さて、ハ長調でバキッとしたソナタ。

これがまた上品!筆者の大好きなこのソナタですが、この上品さは、先程の柔らかい音色も相まって、とてつもなく進化した部分じゃないかと感じました。

1楽章の疾走感ももちろんですが、圧巻だったのが第3楽章のロンドですね。。。上品の極み。ガツっと来てほしいところのでの重量感はありつつ、特に終盤は「あれ、そこ、そんなにスピード出して大丈夫なんだっけ?」と思うくらいぐっと加速、オクターブのグリッサンドも何のその笑。

何事もないようにエレガントに走り抜けていく。これがもう彼独特の体験でしたね。ハラハラさせつつも、涼しい顔で弾ききってくれました。

モンポウ:「月の光」によるグロッサ

ここからはスペイン・ゾーン
同じ「月の光」をモチーフにした曲でも、時代の近いドビュッシーと似た香りをまといながら、どこか新鮮な響きがする。その対比がとても面白い一曲でした。

アルベニス:イベリア 第1巻 より 第2曲「港(エル・プエルト)」

「イベリア」は、こうして曲集の流れのなかで聴くと、舞台がぱっと一気に展開する感じがあるんですよね。この「港」は、朝いちばんの港の、あの爽やかな空気をまとった曲。やはりリウのリズム感は冴えていて、聴いていて気持ちがよかったです。

リスト:スペイン狂詩曲

締めくくりは、リストの大技巧曲。
でも、こんなに技巧的な曲でも、やっぱり上品なんです。技術的にずっと余裕が見えるのと、一音一音の“引き出し”の多さと、音の質の良さ。

そして、ここでもやっぱり弱音。普通、あんなにたくさんの和音を一気に鳴らしたり、超高速パッセージをなんて絶対にバタついてしまうはずなんですよ……。それが彼の手にかかると、体感、さっきの「ノクターン」を弾いているのと変わらないんじゃないか、というくらいの余裕すら見える。いやはや、参りました。

さらには華やかさは健在で、この凝ったプログラムをきらびやかに締めてくれました。。いやはや、大満足。

アンコール曲・・・2曲!!

  • ショパン:練習曲 第1番 変イ長調 Op.25-1「エオリアン・ハープ」
  • シューベルト:楽興の時 第3番 ヘ短調 D.780-3

鳴りやまない拍手に応えて、アンコールは2曲!!
分散和音がきらめくショパンの「エオリアン・ハープ」に、親しみ深いシューベルトの「楽興の時」。本編のスケールの大きさから一転、最後は小さな宝石のような小品で、上品さもう一度味わわせてくれました。

そしてカーテンコールの最後は、両手を顔の横に添えての「おやすみ」ポーズ、笑。

3年前の広島公演でも「飛行機があるからもう寝る」ジェスチャーで客席を沸かせてくれましたが、それを3年越しにまた拝めるとは(笑)。ご多忙スケジュールの中お疲れさまでした🙇

ブルース・リウのおすすめ音源

ルナリス/LUNARIS(2026年8月7日発売)

まさに今回のプログラムそのものを収めた最新作。「月光」「ヴァルトシュタイン」を軸に、月と夜をめぐる名曲を集めたコンセプト・アルバムです。発売は公演後の8月7日(金)なので、「あの夜の曲をもう一度」と思ったらこちらを。現在予約受付中です。

ウェイブス〜フランス作品集(2023年)

ドイツ・グラモフォンからの実質デビュー・スタジオ盤。ラモー・ラヴェル・アルカンと、200年にわたるフランス鍵盤音楽をめぐる一枚で、今回弾くラヴェル「道化師の朝の歌」へとつながる、彼のフランス物の魅力がぎゅっと詰まっています。今日のラヴェルが気に入ったら、ぜひこちらも。

※Amazon Musicをはじめ各音楽配信サービスの料金・音質の比較はこちらの記事でまとめています。プログラムの予習にも便利ですよ。

さいごに

全体をとおして、ひとまわりスケールアップしたという印象でした。

彼のいいところは、「有名だけどあまり取り上げられない」くらいのちょうどいい曲も披露してくれるところですね!今回は品のあるドイツもの(「月光」「ヴァルトシュタイン」)から、後半はぐっとスペイン色多めドビュッシーの「夢」からリストの「スペイン狂詩曲」まで、その幅の広さ、ピアニストとしてのスケールの大きさを、まざまざと見せつけられた一夜でした。

そして今日いちばんの発見は、やっぱりあの弱音。華やかな超絶技巧の人、という印象が、いい意味でぐっと更新されました。8月発売の新譜「ルナリス」が届いたら、あの音をもう一度じっくり味わいたいと思います。。。

最後までお読みいただきありがとうございました。公演に行かれた方とも、行かれなかった方とも、一緒にブルース・リウのピアノを味わえたら嬉しいです♪

▼今日のプログラムを予習したり、いろんなピアニストの演奏を聴き比べたいときは、音楽サブスクがとっても便利。料金・音質・使い勝手を比較しました。

▼当ブログでは「お金と時間さえあれば漏れなく行きたい!」と思うコンサートをまとめています。

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