こんにちは。いりこです。
9月11日(水)から、イギリスにてリーズ国際ピアノコンクールが開催されています。モントリオール国際音楽コンクール、ゲザ・アンダ国際ピアノコンクールに続いて、早くも今年3つ目のコンクール、目白押しです!来年に控えるショパン国際コンクールの予選免除が与えられる重要な大会です。
狭き門となった第2ラウンドには日本人も2名、牛田智大、丸山凪乃さんが進出しています。2名とも2日目(12日)に登場です。
第2ラウンド最終日は、注目のひとりフィリップ・リノフが登場!
リーズ国際ピアノコンクール概要
公式HP(英語):https://www.leedspiano.com/upcoming-competition/
公式YouTube:https://www.youtube.com/user/leedspiano
開催期間:2024年9月11日(水)~ 9月21日(土)
イングランド北部の都市リーズで開催される国際コンクール。第1回1963年の開催以降、優勝・受賞者にはラドゥ・ルプ、ペライア、アレクセイエフ、オフチニコフ、内田光子、シフ、ロルティなど、錚々たる名ピアニストが並ぶ権威あるコンクールです。直近2021年には小林海都さんが第2位を獲得しています。
上位2名はショパン国際コンクール本大会へ直接駒を進めることができる(ビデオ審査・予備予選が免除される)ことからも、今大会が重要視されていることが分かります。
また今回から、人種・性別・衣装・立ち居振る舞いなどが審査に影響を及ぼすことを避けるため、同大会初の「ブラインド審査」が導入されています。
- 概要
開催地:リーズ(イギリス)
開催間隔:3年に1度(前回:2021年9月、次回:2024年)
歴史:第1回1963年
- 主な優勝者・入賞者
優勝者:ラドゥ・ルプ(1969)、マライ・ペライア(1972)、ドミトリー・アレクセイエフ(1975)、ウラディミール・オフチニコフ(1987)、エリック・ルー(2018)、アリム・ベイセムバイエフ(2021)
入賞者:アルトゥール・モレイラ・リマ(1969年第3位)、アンネ・ケフェレック(1969年第5位)、内田 光子(1975年第2位)、アンドラーシュ・シフ(1975年第3位)、ルイ・ロルティ(1984年第4位)、北村 朋幹 (2015年第3位)、小林 海都(2021年第2位)
スケジュール
第1ラウンド(複数会場開催、60名):2024年3月30日(土)~ 4月8日(月)
第2ラウンド(24名):2024年9月11日(水)~ 13日(金)
9月11日(水)14:00(日本時間 22:00), 19:00(翌3:00)
9月12日(木)14:00(日本時間 22:00), 19:00(翌3:00)
9月13日(金)14:00(日本時間 22:00), 19:00(翌3:00)
セミファイナル(10名):2024年9月15日(日)~ 17日(火)
ファイナル(5名):2024年9月20日(金)~ 21日(土)
2024年3~4月、世界6都市(パリ、ウィーン、北京、ベルリン、ニューヨーク、ソウル)で第1ラウンドが開催されました。今回はリーズで行われる第2ラウンドから取り上げていきたいと思います。
プログラム
第2ラウンド(24名)
- 40分の対照的なプログラムを2つ準備すること
- 各プログラムには、主要な作曲家による重要な作品/作品群を含めること
- 第1ラウンドで演奏した曲は、第2ラウンドで選択することはできない
9月13日(金)14:00(日本時間 22:00)
Pedro López Salas (Spain, 26)
Antonio Soler: Sonata in G minor, R.87
/ソレール:ソナタ ト短調
Antonio Soler: Sonata in D major, R.84
/ソレール:ソナタ 二長調
Frédéric Chopin: Sonata No.2 in B-flat minor, Op.35
/ショパン:ソナタ第2番 変ロ短調
Enrique Granados: El Pelele: Escena Goyesca, Op.11
/グラナドス:わら人形(ゴヤ風の情景)
ソレールはスペインのバロック~古典派の作曲家。グラナドスもスペイン近現代の作曲家。自国の作品を紹介するのってちょっと憧れます。メインディッシュのショパンのソナタはまとまっていて素敵でしたし、グラナドスのわら人形で華々しいフィナーレでした。
Shunshun Tie (China, 23)
Ludwig van Beethoven: Sonata No.31 in A-flat major, Op.110
/ベートーヴェン:ソナタ第31番 変イ長調
Frédéric Chopin: Scherzo No.1 in B minor, Op.20
/ショパン:スケルツォ第1番 ロ短調
Frédéric Chopin: Scherzo No.4 in E major, Op.54
/ショパン:スケルツォ第4番 ホ長調
よく音が飛んだりするのが玉に瑕なんですが、全体的な流れとか雰囲気とかは素敵だなと思いました。
Philipp Lynov (Russia, 24)
Franz Liszt: Selection from Transcendental Études, S.139: 9. La Ricordanza
/リスト:超絶技巧練習曲 第9番「回想」
Robert Schumann: Sonata No.3 in F minor, Op.14
/シューマン:ソナタ第3番 ヘ短調
第1ラウンドの演奏も聴いてみましたが、硬派で重みのある音はとても心地いいですし、大曲シューマンも余裕をもって弾いていたように感じました。
Callum McLachlan (United Kingdom, 25) (セミファイナル進出)
Carl Philipp Emanuel Bach: Sonata in F-sharp minor, Wq.52, No. 4
/カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ:ソナタ 嬰へ短調
Lili Boulanger: Prélude in D-flat major
/ブーランジェ:前奏曲 変ニ長調
Robert Schumann: Études Symphoniques, Op.13
/シューマン:交響的練習曲
J.S. バッハの次男、カール・フィリップ・エマヌエル。時代的には古典派で、軽快で素敵な音楽でした。今まで聴いてこなかったのが不思議です。ブーランジェの夢想的な時間から、間髪入れずに交響的練習曲へ。彼も、特に途中の変奏で音が飛んじゃっていたのですが、それほどこちらの集中力は削られずに聴けました。この違いはどこからくるんだろうか。とはいえ結構音が当たってなかったのでそこだけ残念ですが、概していい演奏でした。
9月13日(金)19:00(日本時間 翌3:00)
Angie Zhang (United States of America, 28)
J.S.Bach: Prélude and Fugue in D minor, BWV 875
/J.S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 第6番 前奏曲とフーガ ニ短調
W.A.Mozart: Sonata No.2 in F major, K.280
/モーツァルト:ソナタ第2番 ヘ長調
Clara Schumann: Variations on a Theme by Robert Schumann, Op.20
/クララ・シューマン:ロベルト・シューマンの主題による変奏曲 嬰ヘ短調
Fritz Kriesler (arr. Sergei Rachmaninov): Liebesfreud
/クライスラー – ラフマニノフ編:愛の喜び
クライスラーの愛の喜び、アンコール的で素敵でしたし、曲と名前が初めて一致したかもしれません笑。
Xuehong Chen (China, 24) (セミファイナル進出)
Franz Schubert: Sonata No.14 in A minor, D.784
/シューベルト:ソナタ第14番 イ短調
Sergei Rachmaninov: Sonata No.2 in B-flat minor, Op.36
/ラフマニノフ:ソナタ第2番 変ロ短調
なんでしょうこの温かい、しかしどこか不安定で激烈なシューベルト。シューベルトはなかなか聴く機会がないので、いい演奏でお届けしてくれるとありがたいです。そしてラフマニノフ。のっけから激情と超絶技巧でラフマニノフ感全開。こちらもストレスなく曲を楽しめる演奏でした。
Julian Miles Trevelyan (United Kingdom, 24) (セミファイナル進出)Sergei Prokofiev: Sonata in A major, Op.62 No. 6
/プロコフィエフ:ソナタ第6番 イ長調
Frédéric Chopin: Scherzo No.4 in E major, Op.54
/ショパン:スケルツォ第4番 ホ長調
Robert Schumann: Humoreske in B flat major, Op. 20
/ロベルト・シューマン:フモレスケ 変ロ長調
Dmitri Shostakovich: Sonata No.1, Op.12
/ショスタコーヴィチ:ソナタ第1番
フモレスク(フモレスケ)とは、喜び、悲しみ、笑い、涙など、様々な感情が交差したような状態を言い、シューマン自身は、「ドイツ人に特有な〈情緒的と知的とのたくみな融合〉」と言っている(ピティナ・ピアノ曲事典より)だそうです、これを1曲目に演奏。からのショスタコーヴィチ(HP掲載のプログラムとは違うようです)。ロマンチックど真ん中のシューマンからの対比でよりグロテスクさが際立ちます。
Elizaveta Kliuchereva (Russia, 24) (セミファイナル進出)
W.A.Mozart: Sonata No.18 in D major, K.576
/モーツァルト:ソナタ第18番 ニ長調
Frédéric Chopin: Scherzo No.4 in E major, Op.54
/ショパン:スケルツォ第4番 ホ長調
Claude Debussy: Selection from Préludes, Book 2, L.123: 12. Feux d’artifice
/ドビュッシー:前奏曲集第2巻 第12番「花火」
Claude Debussy: La plus que lente, L.121
/ドビュッシー:レントより遅く
Leopold Godowsky: Selection from Symphonic Metamorphosis on themes by Johann Strauss: 2. Die Fledermaus
/ゴドフスキー:J. シュトラウスの主題による交響的変容 第2番「こうもり」
上品ながら親しみやすい、不思議なバランスをもったピアニストだなという印象。そしてこれだけバラバラの曲を集めてよくまとめているなという印象。個人的に大好きな「レントより遅く」がコンクールに登場するなんて想像していませんでした笑。ゴドフスキーのアレンジによる「こうもり」も華麗に弾きこなし、曲数の多いプログラムをすっきりまとめた構成・演奏で面白かったです。
結果発表~第2ラウンド~
セミファイナル進出者(10名)[演奏日]
Kai-Min Chang [9.12]
Xuehong Chen [9.13]
Junyan Chen [9.12]
Jaedan Izik-Dzurko [9.11]
Elizaveta Kliuchereva [9.13]
Khanh Nhi Luong [9.11]
Callum Mclachlan [9.13]
Julian Treveleyan [9.13]
Tomoharu Ushida [9.12]
Ryan Zhu [9.12]
Jaedan Izik-Dzurko、牛田 智大さんセミファイナルへ進出!そしてさすがに名門コンクール、レベルが高い演奏が続きました。今回セミファイナルへ進出した10名はほぼ納得。特にKai-Min Chang、Xuehong Chen、Ryan Zhuあたりが楽しみです。
Carter Johnson、Pedro López Salas、Philipp Lynovなんかはまだまだ聴いてみたかったのですが、今回も非常に狭き門となりました。またどこかでお会いしたい。日本にも来て欲しい!
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