【2024.9.16】第21回リーズ国際ピアノコンクール セミファイナル 2日目

ピアノコンクール
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こんにちは。いりこです。

9月11日(水)から、イギリスにてリーズ国際ピアノコンクールが開催されます。モントリオール国際音楽コンクールゲザ・アンダ国際ピアノコンクールに続いて、早くも今年3つ目のコンクール、目白押しです!来年に控えるショパン国際コンクールの予選免除が与えられる重要な大会です。

24名となった第2ラウンドから、さらに10名に絞られたセミファイナル。ピアノソロ+室内楽を演奏することとなります。

日本からは牛田智大(1日目に演奏)、そして筆者イチオシのジェイデン・イズィク=ジュルコが無事進出(2日目に演奏)!

リーズ国際ピアノコンクール概要

公式HP(英語):https://www.leedspiano.com/upcoming-competition/
公式YouTube:https://www.youtube.com/user/leedspiano

開催期間:2024年9月11日(水)~ 9月21日(土)

イングランド北部の都市リーズで開催される国際コンクール。第1回1963年の開催以降、優勝・受賞者にはラドゥ・ルプペライアアレクセイエフオフチニコフ内田光子シフロルティなど、錚々たる名ピアニストが並ぶ権威あるコンクールです。直近2021年には小林海都さんが第2位を獲得しています。

上位2名はショパン国際コンクール本大会へ直接駒を進めることができる(ビデオ審査・予備予選が免除される)ことからも、今大会が重要視されていることが分かります。

また今回から、人種・性別・衣装・立ち居振る舞いなどが審査に影響を及ぼすことを避けるため、同大会初の「ブラインド審査」が導入されています。

  • 概要
    開催地:リーズ(イギリス)
    開催間隔:3年に1度(前回:2021年9月、次回:2024年)
    歴史:第1回1963年
  • 主な優勝者・入賞者
    優勝者:ラドゥ・ルプ(1969)、マライ・ペライア(1972)、ドミトリー・アレクセイエフ(1975)、ウラディミール・オフチニコフ(1987)、エリック・ルー(2018)、アリム・ベイセムバイエフ(2021)

    入賞者:アルトゥール・モレイラ・リマ(1969年第3位)、アンネ・ケフェレック(1969年第5位)、内田 光子(1975年第2位)、アンドラーシュ・シフ(1975年第3位)、ルイ・ロルティ(1984年第4位)、北村 朋幹 (2015年第3位)、小林 海都(2021年第2位)

スケジュール

第1ラウンド(複数会場開催、60名):2024年3月30日(土)~ 4月8日(月)

第2ラウンド(24名):2024年9月11日(水)~ 13日(金)

セミファイナル(10名):2024年9月15日(日)~ 17日(火)
9月15日(日)19:00(日本時間 翌3:00)
9月16日(月)14:00(日本時間 22:00), 19:00(翌3:00)
9月17日(火)14:00(日本時間 22:00), 19:00(翌3:00)

ファイナル(5名):2024年9月20日(金)~ 21日(土)

2024年3~4月、世界6都市(パリ、ウィーン、北京、ベルリン、ニューヨーク、ソウル)で第1ラウンドが開催されました。今回はリーズで行われる第2ラウンドから取り上げていきたいと思います。

プログラム

第2ラウンド(24名)

公式サイト(PDF)

  • 75分以内の対照的な2つのプログラム(プログラムAとプログラムB)を準備すること
  • これらのプログラムは、ソロピアノ曲と、2つのグループ(以下参照)から選ばれた室内楽で構成する。各プログラムは全体としての構成に十分考慮して組み立てること。審査員は、参加者が演奏するプログラムを2つのうちから選択し、第2ラウンド終了時、セミファイナリストが発表された際に参加者へ通知する。
  • プログラムAではグループ1(ピアノ三重奏、四重奏、五重奏)から1曲の室内楽を含める
    プログラムBではグループ2(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ)から1曲の室内楽を含める
  • 各プログラムの室内楽以外は、ソロピアノ曲で構成され、指定の20/21世紀の作品リストからを1曲含める必要がある。選択されたソロピアノ曲は、20/21世紀作品を除き、プログラムA/Bで異なるものでなければならない。20/21世紀の作品は、プログラムA/Bで同じ作品を選択することができる。

ソロピアノ
セミファイナルでは、第1/第2ラウンドで演奏した楽曲は選択できない

  • 各プログラムのソロピアノは、30分以上45分以内でなければならない。最終的な演奏時間は、選択した室内楽作品の時間に応じて参加者の裁量に委ねられる。
  • 各プログラムの総演奏時間は、休憩を含めて75分を超えてはならない。
  • レパートリーには、20/21世紀の作品が含め(楽譜の使用は許可される)、両プログラムで同じ作品を選択することができる。以下のリストから選択すること。

Thomas Ades: Three Mazurkas (9’)
/トーマス・アデス:3つのマズルカ
George Benjamin: Meditation and Relativity Rag (7’)
/ジョージ・ベンジャミン:瞑想と相対性ラグ
Luciano Berio: Sequenza (11’)
/ルチアーノ・ベリオ:セクエンツァ
Unsuk Chin: Etudes (selection up to approx 10’)
/チン・ウンスク:エチュード(抜粋、約10分以内)
Brett Dean: Hommage a Brahms (3 pieces – 8’)
/ブレット・ディーン:ブラームスへのオマージュ
György Ligeti: Selection of Etudes (up to approx. 10’)
/リゲティ・ジョルジュ:エチュード(抜粋、約10分以内)
Sofia Gubaidulina: Chaconne (10’)
/ソフィア・グバイドゥーリナ:シャコンヌ
György Kurtág: Selection of Játékok (up to approx. 10’)
/クルターク・ジョルジュ:遊び(抜粋、約10分以内)
Kate Whitley: Five Piano Pieces (8’)
/ケイト・ホイットリー:5つのピアノ曲

室内楽
グループ1(ピアノ三重奏、四重奏、五重奏)
Johannes Brahms: Piano Quartet in C minor, Op.60 (33′)
/ブラームス:ピアノ四重奏曲第3番 ハ短調
Amy Beach: Piano Quintet in F sharp minor, Op.67 (29’)
/ビーチ:ピアノ五重奏曲 嬰へ短調
Dmitri Shostakovich: Piano Quintet in G minor, Op.57 (35′)
/ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 ト短調
Ludwig van Beethoven: Piano Trio in D major, Op.70 No.1 ‘The Ghost’ (22′)
/ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番 ニ長調 「幽霊」
Fanny Mendelssohn: Piano Trio in D minor, Op.11 (23’)
/ファニー・メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 ニ短調
Maurice Ravel: Piano Trio (27′)
/ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調

グループ2(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ)
Ludwig van Beethoven: Violin Sonata in G major, Op.30 No.3
/ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第8番 ト長調
Gabriel Faure: Violin Sonata No.1 in A major, Op.13 (26′)
/フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番 イ長調
Felix Mendelssohn: Cello Sonata in D Major, Op.58 No.2
/フェリックス・メンデルスゾーン:チェロソナタ第2番 ニ長調
Johannes Brahms: Cello Sonata in E minor, Op.38
/ブラームス:チェロソナタ第1番 ホ短調

9月16日(月)14:00(日本時間 22:00)

Jaeden Izik-Dzurko (Canada, 24) (ファイナル進出) ※第1ラウンド ※第2ラウンド
PROGRAMME A
Ludwig van Beethoven: Piano Trio in D major, Op.70 No.1 ‘The Ghost’
/ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番 ニ長調 「幽霊」
György Ligeti: Selection from Études: 5. Arc-en-ciel; 6. Automne à Varsovie
/リゲティ:エチュード より 5. 虹、6. ワルシャワの秋
Sergei Rachmaninov: Sonata No.1 in D minor, Op.28
/ラフマニノフ:ソナタ第1番 ニ短調

モントリオール国際コンクールでも演奏していたラフマニノフのソナタ1番、今回聴くのは(人生で)2回目。40分にも及ぶ大曲で難解ですが、なんとなく全貌が見えてきました。
特に2楽章は、絶え間なく流れる3連符の中でメロディーが浮かび上がる仕掛けで、とても幻想的で美しい。美しくもどこか陰鬱、陰鬱さも含めて夢見心地。
通して音数も多い、テンポやリズムの変化も大きい、楽譜をチラ見したところとにかくごちゃごちゃしているので、組立て方やら説明力が問われる曲としてハードルが高いんだと思います。
改めてこの曲を明快に演奏しているイズィク・ズュルコの音楽性と技術力の高さを感じることができました。難解ではありますが、ラフマニノフらしいロマンチック性・分厚い和音や名人芸が散りばめられているので聴きごたえがある、というか単純にカッコいいです。このままファイナルへ!

Elizaveta Kliuchereva (Russia, 24) ※第2ラウンド
PROGRAMME A
Modest Mussorgsky: Pictures at an Exhibition
/ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」
György Ligeti: Selection from Études: 6. Automne à Varsovie; 13. L’escalier du diable
/リゲティ:エチュード より 6. ワルシャワの秋、13. 悪魔の階段
Johannes Brahms: Piano Quartet in C minor, Op.60
/ブラームス:ピアノ四重奏曲第3番 ハ短調

展覧会の絵、いいですよね。「プロムナード」(展覧会を回る人=作曲家ムソルグスキーの歩く様子)のなんとも言えない高揚感と悲しみが混ざった感じ。そして最後の「バーバ・ヤガー」から「キエフ(キーウ)」の大門に至る緊張と緩和。一つ一つ丁寧に弾いている感じは伝わってきました。リゲティの「悪魔の階段」も、不気味に駆け上がってくる緊迫感がありおもしろかったです。ブラームスのピアノトリオ3番もよかったですね。若いころに着想されたそうで、ふつふつと中に秘める熱を感じますし、2楽章ではどっと表出しています。そして所々でみせるエモいメロディーと第3楽章。。。また新しい曲の勉強になりました。

9月16日(月)19:00(日本時間 翌3:00)

Kai-Min Chang (China Taiwan, 23) (ファイナル進出) ※第2ラウンド
PROGRAMME B
Sofia Gubaidulina: Chaconne
/グバイドゥーリナ:シャコンヌ
Johannes Brahms: Sonata No.3 in F minor, Op.5
/ブラームス:ソナタ第3番 ヘ短調
Gabriel Fauré: Violin Sonata No.1 in A major, Op.13
/フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番 イ長調

おもしろいシャコンヌでした。現代曲にしては聴きやすかったですね。
そしてブラームスのソナタ3番。彼の第2ラウンドからの印象を俗っぽく表すとしたら「ちょうどいい」です笑。無理をしない、でも緊張感を失わない程度の丁寧さ。スピード感のある硬質な音色も個人的に好みで、曲の“うまみ”を最大限に引き出すような円熟度です。彼も牛田さんと同い年!
フォーレのヴァイオリンソナタも、1日目のKhanh Nhi Luongさんに比べるとワントーン落ち着いた音色で、こちらも心地よかったです(それにしてもKhanh Nhi Luongさんの演奏は体温が上がったのを思い出します!)。

Callum McLachlan (United Kingdom, 25) ※第2ラウンド
PROGRAMME A
Dmitri Shostakovich: Piano Quintet in G minor, Op.57
/ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 ト短調
Thomas Adès: Three Mazurkas, Op.27
/アデス:3つのマズルカ
George Frideric Handel: Suite No.5 in E major, HWV 430/ヘンデル:ハープシコード組曲第1集 第5番 ホ長調
Johannes Brahms: Variations and Fugue on a Theme by Handel, Op.24/ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ

ショスタコーヴィチのクインテットはどこかで聴いたことありました。2楽章の静寂の中、弦が切れてしまい中断するというアクシデントもありましたが、会場が拍手で応援ムードを作っていたのがほっこりでした。そして「調子の良い鍛冶屋」を含むヘンデルと、ブラームス作曲:ヘンデルの主題による変奏曲。第2ラウンドでも交響的練習曲(変奏曲)を弾いてました。ヘンデルの軽快な雰囲気は残しつつ、フーガなどの内容面や華麗な演奏技術も組み込まれている傑作です。全体的に安定していたと思います。