【2024.9.17】第21回リーズ国際ピアノコンクール セミファイナル 3日目/結果

ピアノコンクール
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こんにちは。いりこです。

9月11日(水)から、イギリスにてリーズ国際ピアノコンクールが開催されます。モントリオール国際音楽コンクールゲザ・アンダ国際ピアノコンクールに続いて、早くも今年3つ目のコンクール、目白押しです!来年に控えるショパン国際コンクールの予選免除が与えられる重要な大会です。

24名となった第2ラウンドから、さらに10名に絞られたセミファイナル。ピアノソロ+室内楽を演奏することとなります。

日本からは牛田智大(1日目に演奏)、そして筆者イチオシのジェイデン・イズィク=ジュルコ(2日目に演奏)が無事進出!いよいよファイナルに進む5名が選ばれます。

リーズ国際ピアノコンクール概要

公式HP(英語):https://www.leedspiano.com/upcoming-competition/
公式YouTube:https://www.youtube.com/user/leedspiano

開催期間:2024年9月11日(水)~ 9月21日(土)

イングランド北部の都市リーズで開催される国際コンクール。第1回1963年の開催以降、優勝・受賞者にはラドゥ・ルプペライアアレクセイエフオフチニコフ内田光子シフロルティなど、錚々たる名ピアニストが並ぶ権威あるコンクールです。直近2021年には小林海都さんが第2位を獲得しています。

上位2名はショパン国際コンクール本大会へ直接駒を進めることができる(ビデオ審査・予備予選が免除される)ことからも、今大会が重要視されていることが分かります。

また今回から、人種・性別・衣装・立ち居振る舞いなどが審査に影響を及ぼすことを避けるため、同大会初の「ブラインド審査」が導入されています。

  • 概要
    開催地:リーズ(イギリス)
    開催間隔:3年に1度(前回:2021年9月、次回:2024年)
    歴史:第1回1963年
  • 主な優勝者・入賞者
    優勝者:ラドゥ・ルプ(1969)、マライ・ペライア(1972)、ドミトリー・アレクセイエフ(1975)、ウラディミール・オフチニコフ(1987)、エリック・ルー(2018)、アリム・ベイセムバイエフ(2021)

    入賞者:アルトゥール・モレイラ・リマ(1969年第3位)、アンネ・ケフェレック(1969年第5位)、内田 光子(1975年第2位)、アンドラーシュ・シフ(1975年第3位)、ルイ・ロルティ(1984年第4位)、北村 朋幹 (2015年第3位)、小林 海都(2021年第2位)

スケジュール

第1ラウンド(複数会場開催、60名):2024年3月30日(土)~ 4月8日(月)

第2ラウンド(24名):2024年9月11日(水)~ 13日(金)

セミファイナル(10名):2024年9月15日(日)~ 17日(火)
9月15日(日)19:00(日本時間 翌3:00)
9月16日(月)14:00(日本時間 22:00), 19:00(翌3:00)
9月17日(火)14:00(日本時間 22:00), 19:00(翌3:00)

ファイナル(5名):2024年9月20日(金)~ 21日(土)

2024年3~4月、世界6都市(パリ、ウィーン、北京、ベルリン、ニューヨーク、ソウル)で第1ラウンドが開催されました。今回はリーズで行われる第2ラウンドから取り上げていきたいと思います。

プログラム

第2ラウンド(24名)

公式サイト(PDF)

  • 75分以内の対照的な2つのプログラム(プログラムAとプログラムB)を準備すること
  • これらのプログラムは、ソロピアノ曲と、2つのグループ(以下参照)から選ばれた室内楽で構成する。各プログラムは全体としての構成に十分考慮して組み立てること。審査員は、参加者が演奏するプログラムを2つのうちから選択し、第2ラウンド終了時、セミファイナリストが発表された際に参加者へ通知する。
  • プログラムAではグループ1(ピアノ三重奏、四重奏、五重奏)から1曲の室内楽を含める
    プログラムBではグループ2(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ)から1曲の室内楽を含める
  • 各プログラムの室内楽以外は、ソロピアノ曲で構成され、指定の20/21世紀の作品リストからを1曲含める必要がある。選択されたソロピアノ曲は、20/21世紀作品を除き、プログラムA/Bで異なるものでなければならない。20/21世紀の作品は、プログラムA/Bで同じ作品を選択することができる。

ソロピアノ
セミファイナルでは、第1/第2ラウンドで演奏した楽曲は選択できない

  • 各プログラムのソロピアノは、30分以上45分以内でなければならない。最終的な演奏時間は、選択した室内楽作品の時間に応じて参加者の裁量に委ねられる。
  • 各プログラムの総演奏時間は、休憩を含めて75分を超えてはならない。
  • レパートリーには、20/21世紀の作品が含め(楽譜の使用は許可される)、両プログラムで同じ作品を選択することができる。以下のリストから選択すること。

Thomas Ades: Three Mazurkas (9’)
/トーマス・アデス:3つのマズルカ
George Benjamin: Meditation and Relativity Rag (7’)
/ジョージ・ベンジャミン:瞑想と相対性ラグ
Luciano Berio: Sequenza (11’)
/ルチアーノ・ベリオ:セクエンツァ
Unsuk Chin: Etudes (selection up to approx 10’)
/チン・ウンスク:エチュード(抜粋、約10分以内)
Brett Dean: Hommage a Brahms (3 pieces – 8’)
/ブレット・ディーン:ブラームスへのオマージュ
György Ligeti: Selection of Etudes (up to approx. 10’)
/リゲティ・ジョルジュ:エチュード(抜粋、約10分以内)
Sofia Gubaidulina: Chaconne (10’)
/ソフィア・グバイドゥーリナ:シャコンヌ
György Kurtág: Selection of Játékok (up to approx. 10’)
/クルターク・ジョルジュ:遊び(抜粋、約10分以内)
Kate Whitley: Five Piano Pieces (8’)
/ケイト・ホイットリー:5つのピアノ曲

室内楽
グループ1(ピアノ三重奏、四重奏、五重奏)
Johannes Brahms: Piano Quartet in C minor, Op.60 (33′)
/ブラームス:ピアノ四重奏曲第3番 ハ短調
Amy Beach: Piano Quintet in F sharp minor, Op.67 (29’)
/ビーチ:ピアノ五重奏曲 嬰へ短調
Dmitri Shostakovich: Piano Quintet in G minor, Op.57 (35′)
/ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 ト短調
Ludwig van Beethoven: Piano Trio in D major, Op.70 No.1 ‘The Ghost’ (22′)
/ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番 ニ長調 「幽霊」
Fanny Mendelssohn: Piano Trio in D minor, Op.11 (23’)
/ファニー・メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 ニ短調
Maurice Ravel: Piano Trio (27′)
/ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調

グループ2(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ)
Ludwig van Beethoven: Violin Sonata in G major, Op.30 No.3
/ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第8番 ト長調
Gabriel Faure: Violin Sonata No.1 in A major, Op.13 (26′)
/フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番 イ長調
Felix Mendelssohn: Cello Sonata in D Major, Op.58 No.2
/フェリックス・メンデルスゾーン:チェロソナタ第2番 ニ長調
Johannes Brahms: Cello Sonata in E minor, Op.38
/ブラームス:チェロソナタ第1番 ホ短調

9月17日(火)14:00(日本時間 22:00)

Ryan Zhu (Canada, 20) ※第2ラウンド
PROGRAMME B
György Ligeti: Selection from Études: 4. Fanfares; 14. Coloana infinită; 5. Arc-En-Ciel; 6. Automne à Varsovie
/リゲティ:エチュード より 4.  ファンファーレ、14. 無限の円柱、5. 虹、6. ワルシャワの秋
Domenico Scarlatti: Sonata in G minor, K.8
/スカルラッティ:ソナタ ト短調
Domenico Scarlatti: Sonata in G major, K.547
/スカルラッティ:ソナタ ト長調
Robert Schumann: Carnaval, Op.9
/シューマン:謝肉祭
Johannes Brahms: Cello Sonata in E minor, Op.38
/ブラームス:チェロソナタ第1番 ホ短調

このラウンドで半数の5人が選択しているリゲティのエチュード。現代曲に耐性がないもので、筆者にとっては難解な曲も多いのですが、14番「無限の円柱」は凄まじかったです!笑 音が複雑に絡み合いながら上昇し音の円柱を構成していく。。。昨日聴いた13番「悪魔の階段」は階段のように”見える”音のステップを感じましたが、これはもう数学的というか科学的というか、まさに”無限”の繋がりを感じました。おもしろい。
気を取り直してスカルラッティが2曲続きましたが、演奏スタイルもガラっと変わって典雅に弾きこなしていたのが印象的です。そして謝肉祭でも安定した技術と変幻自在のカラフルな音色、実力を遺憾なく発揮していました。第2ラウンドに続いてこれは期待大!
ブラームスのチェロソナタ1番もお初でしたが、なんともオトナ、切なくも色っぽい。。。最初のチェロの低音が体中に染みわたります。好き。

Xuehong Chen (China, 24) ※第2ラウンド
PROGRAMME A
György Ligeti: Selection from Études: 4. Fanfares; 2. Cordes à vide; 10. Der Zauberlehrling
/リゲティ:エチュード より 4. ファンファーレ、2. 開放弦、10. 魔法使いの弟子
Frédéric Chopin: Selection from Préludes, Op.28: 13. Lento; 14. Allegro; 15. Sostenuto; 16. Presto con fuoco; 17. Allegretto; 18. Allegro molto; 19. Vivace; 20. Largo; 21. Cantabile; 22. Molto agitato; 23. Moderato; 24. Allegro appassionato
/ショパン:24の前奏曲 より 第13番 嬰ヘ長調、第14番 変ホ短調、第15番 変ニ長調 「雨だれ」、第16番 変ロ短調、第17番 変イ長調、第18番 ヘ短調、第19番 変ホ長調、第20番 ハ短調、第21番 変ロ長調、第22番 ト短調、第23番 ヘ長調、第24番 ニ短調
Dmitri Shostakovich: Piano Quintet in G minor, Op.57
/ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 ト短調

現代曲リゲティを暗譜で弾いていたのが印象的だとナビゲータの方がおっしゃってましたね。おそらく唯一だと。そしてショパンの前奏曲よかったですね。ヒヤッとするところはありましたが、伸びやかな音色で、多種多様・ドラマチックな前奏曲後半をよくまとめていたと思います。

9月17日(火)19:00(日本時間 翌3:00)

Junyan Chen (China, 23) (ファイナル進出) ※第2ラウンド
PROGRAMME A
Unsuk Chin: Selection from Études: 1. In C, 4. Scalen, 6. Grains
/ウンスク:エチュード より 1. ハ調、4. スケール、6. 種子
Harrison Birtwistle: Oockooing Bird
/バートウィッスル:ウックウ鳥
Harrison Birtwistle: Sad Song
/バートウィッスル:悲しい歌
Franz Liszt: Sonata in B minor, S.178
/リスト:ソナタ ロ短調
Maurice Ravel: Trio in A minor, M.67
/ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調

課題の現代曲(ウンスクは唯一の選曲)+現代曲2つという独特なプログラム。リストのロ短調ソナタは、今大会では牛田さんの第2ラウンド振りですが、やはりずいぶん印象が変わります。牛田さんが朗読なら、彼女は演劇とでも言いましょうか、それくらい違いました。ラヴェルのピアノトリオは初めて聴きましたが、ビビッドさがよりマッチしていたように思います。

Julian Miles Trevelyan (United Kingdom, 24) (ファイナル進出) ※第2ラウンド
PROGRAMME A
György Ligeti: Selection from Études: 1.Désordre
/リゲティ:エチュード より 1. 無秩序
Claude Debussy: Ondine (no. 8 from Préludes Book II)
/ドビュッシー:オンディーヌ(前奏曲集第2巻 第8番)
Ludwig van Beethoven: Sonata No.32 in C minor, Op.111
/ベートーヴェン:ソナタ第32番 ハ短調
György Ligeti: Selection from Études: 6. Automne à Varsovie, 10.Der Zauberlehrling
/リゲティ:エチュード より 6. ワルシャワの秋、10. 魔法使いの弟子
Amy Beach: Piano Quintet in F-sharp minor, Op.67
/ビーチ:ピアノ五重奏曲 嬰へ短調

課題曲のリゲティを2つに分けてソロプログラムを挟む。現代曲でソロプログラムを締めたのは彼だけで、独創的なプログラムが2人続きました笑。ベートーヴェンの1楽章だけはどうしても好きになれませんんでしたが、なめらかな指使いに個性的な表現も見られ、多彩な引き出しをもつピアニストだなと思います。ビーチのピアノ五重奏も牛田さんのセミファイナル振りですが、ピアニスト1つで印象が変わるのがおもしろいですね。もう少し爽やかなイメージがありましたが、この演奏は「ドラマ」でした。

結果発表~セミファイナル~

ファイナル進出者(5名)[演奏日]
Kai-Min Chang [9.16]
Junyan Chen [9.17]
Jaedan Izik-Dzurko [9.16]
Khanh Nhi Luong [9.15]
Julian Treveleyan [9.17]

そうですか。牛田さんはファイナル進出ならず。。。
もちろん同じ日本人としての贔屓目あり、他の演奏者よりも期待・集中して聴いていたということもあると思います。現代曲や室内楽についてもあまりコメントできるほど経験値がないですが、ファイナリスト5人の誰よりも下の順位が妥当かと言われると、、、そんなことはない気がしてしまいます。YouTubeライブページのコメント欄には「ウシダがいないなんて」とのコメントで溢れていたので、日本人に限らず多くの人の心を掴んだのは間違いありません。他にはRyan Zhuのコンチェルトも聴いてみたかったです。

とはいえ、残った5人は素晴らしい面々です。個人的には今年のモントリオール国際で発見した(そして調べてみたら2022年から国際コンクールで優勝しまくってる)ジェイデン・イズィク=ジュルコ(またブラームス2番が聴けるといいな!)、そしてカイミン・チャンさんを応援したいと思います。

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