【2024.9.20~21】第21回リーズ国際ピアノコンクール ファイナル/結果

ピアノコンクール
https://x.com/leedspiano/status/1836162449038246032
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こんにちは。いりこです。

9月11日(水)から、イギリスにてリーズ国際ピアノコンクールが開催されています。モントリオール国際音楽コンクールゲザ・アンダ国際ピアノコンクールに続いて、早くも今年3つ目のコンクール、目白押しです!来年に控えるショパン国際コンクールの予選免除が与えられる重要な大会です。

24名で始まった第2ラウンドから、いよいよ5名まで絞られたファイナル。セミファイナルから2日挟み、会場はリーズの隣町ブラッドフォードへ。
素晴らしい演奏をした牛田さんは惜しくも進出となりませんでしたが、推しのジェイデン・イズィク=ジュルコモントリオール国際のファイナルでも披露したブラームスの2番がまた!)、カイミン・チャン(ベートーヴェン4番)はじめ素晴らしいファイナリストが揃いました。

リーズ国際ピアノコンクール概要

公式HP(英語):https://www.leedspiano.com/upcoming-competition/
公式YouTube:https://www.youtube.com/user/leedspiano

開催期間:2024年9月11日(水)~ 9月21日(土)

イングランド北部の都市リーズで開催される国際コンクール。第1回1963年の開催以降、優勝・受賞者にはラドゥ・ルプペライアアレクセイエフオフチニコフ内田光子シフロルティなど、錚々たる名ピアニストが並ぶ権威あるコンクールです。直近2021年には小林海都さんが第2位を獲得しています。

上位2名はショパン国際コンクール本大会へ直接駒を進めることができる(ビデオ審査・予備予選が免除される)ことからも、今大会が重要視されていることが分かります。

また今回から、人種・性別・衣装・立ち居振る舞いなどが審査に影響を及ぼすことを避けるため、同大会初の「ブラインド審査」が導入されています。

  • 概要
    開催地:リーズ(イギリス)
    開催間隔:3年に1度(前回:2021年9月、次回:2024年)
    歴史:第1回1963年
  • 主な優勝者・入賞者
    優勝者:ラドゥ・ルプ(1969)、マライ・ペライア(1972)、ドミトリー・アレクセイエフ(1975)、ウラディミール・オフチニコフ(1987)、エリック・ルー(2018)、アリム・ベイセムバイエフ(2021)

    入賞者:アルトゥール・モレイラ・リマ(1969年第3位)、アンネ・ケフェレック(1969年第5位)、内田 光子(1975年第2位)、アンドラーシュ・シフ(1975年第3位)、ルイ・ロルティ(1984年第4位)、北村 朋幹 (2015年第3位)、小林 海都(2021年第2位)

スケジュール

第1ラウンド(複数会場開催、60名):2024年3月30日(土)~ 4月8日(月)

第2ラウンド(24名):2024年9月11日(水)~ 13日(金)

セミファイナル(10名):2024年9月15日(日)~ 17日(火)

ファイナル(5名):2024年9月20日(金)~ 21日(土)
9月20日(金)19:00(日本時間 翌3:00)
9月21日(土)19:00(日本時間 翌3:00)

2024年3~4月、世界6都市(パリ、ウィーン、北京、ベルリン、ニューヨーク、ソウル)で第1ラウンドが開催されました。今回はリーズで行われる第2ラウンドから取り上げています。

プログラム

公式サイト(PDF)

ファイナル(5名)

指揮:ドミンゴ・インドヤン
オーケストラ:ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

参加者はグループ1およびグループ2から1曲ずつ選択し、審査員がいずれか1曲を選択し、ファイナリストが発表される際に通知される。

グループ1
J.S. Bach
Concerto in D minor, BWV1052
/J.S. バッハ:協奏曲第1番 ニ短調

Ludwig van Beethoven/ベートーヴェン
Concerto No.1 in C major, Op.15
/ピアノ協奏曲第1番 ハ長調
Concerto No.3 in C minor, Op.37
/ピアノ協奏曲第2番 ハ短調
Concerto No.4 in G major, Op.58
/ピアノ協奏曲第4番 ト長調

Felix Mendelssohn
Concerto No.2 in D minor, Op.40
/メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第2番 ニ短調

W.A. Mozart/モーツァルト
Concerto in E flat major, K271
/ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 「ジュナミ」
Concerto in B flat major, K450
/ピアノ協奏曲第15番 変ロ長調
Concerto in D minor, K466
/ピアノ協奏曲第20番 ニ短調
Concerto in E flat major, K482
/ピアノ協奏曲第22番 変ホ長調

グループ2
Béla Bartók
Concerto No.3, Sz.119
/バルトーク:ピアノ協奏曲第3番

Johannes Brahms
Concerto No.2 in B flat major, Op.83
/ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調

Frédéric Chopin
Concerto No.2 in F minor, Op.21
/ショパン:ピアノ協奏曲 ヘ短調

Franz Liszt
Concerto No.2 in A major, S125
/リスト:ピアノ協奏曲第2番 イ長調

Sergei Prokofiev/プロコフィエフ
Concerto No.2 in G minor, Op.16
/ピアノ協奏曲第2番 ト短調
Concerto No.3 in C major, Op.26
/ピアノ協奏曲第3番 ハ長調

Sergei Rachmaninov/ラフマニノフ
Concerto No.4 in G minor, Op.40
/ピアノ協奏曲第4番 ト短調
Rhapsody on a Theme of Paganini in A minor, Op.43
/パガニーニの主題による狂詩曲 イ短調

Maurice Ravel
Concerto in G major
/ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調

Robert Schumann
Concerto in A minor, Op.54
/シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調

Clara Schumann-Wieck
Concerto in A minor, Op.7
/(クララ)シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調

9月20日(金)19:00(日本時間 翌3:00)

Julian Miles Trevelyan (United Kingdom, 24) ※第2ラウンド ※セミファイナル
Béla Bartók: Concerto No. 3, Sz.119
/バルトーク:ピアノ協奏曲第3番

ファイナルのオープニングを飾ったのは、地元イギリス出身のジュリアン。彼独特の自由律俳句のようなフロー、飾らない自然派スタイルが曲とマッチしていて、非常に心地いい演奏でした。この曲をライブで聴くときは、迫力で押し切ることもできないし、アンサンブルが難しいところがあるんだろうな、という印象があります。が、この演奏に関してはそのようなストレスもなく、おもしろい節回しや色彩豊かな音色も見られましたし、純粋に曲を楽しめるいい演奏でした。正直ここまでムラッ気のある印象ではありましたが、セミファイナルのクインテット然り、演奏曲によってずいぶん印象が変わるものだなあと改めて実感しています。

Kai-Min Chang (China Taiwan, 23) ※第2ラウンド ※セミファイナル
Beethoven Concerto: No. 4 in G major, Op.58
/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調

さて、ファイナリストで唯一グループ1を指定されたカイミン・チャン。ベートーヴェン4番は気品高く円熟した作品ですが、見事な演奏でした。なんというか、特筆することがないくらい、音源やコンサートと言われて違和感のないレベルでした笑。技術の安定性、重みもありときに軽快な音色、格式高い曲想もあいまって、安心して身をゆだねられる時間だったと感じます。

・・・余談ですが、
コンクールでは珍しくない「提出された複数プログラムから、審査員が1つ指定します」方式。どんな意図なんでしょう??出場者的にも必ず優先順位はつくでしょうし(同じ曲は組み込めないため)、そんなところで運要素を組み込むのは公平性からみて良いこと??
特に今大会は、コンチェルトも審査員が指定。古典派以前/以降で分けられている。カイミン・チャンさんはベートーヴェンだったからまだ戦えましたが、ラフマニノフ・プロコフィエフ・ブラームスの中で、バッハを渡されて「これを武器に戦え」と言われても、なんかそれは趣旨が違うような。。。単純な疑問でした。

Junyan Chen (China, 23) ※第2ラウンド ※セミファイナル
Sergei Rachmaninov: Concerto No. 4 in G minor, Op.40
/ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第4番 ト短調

ラフマニノフの協奏曲からはこの4番のみが選択肢となっています。ラフマニノフがアメリカに渡った後に書かれたこの曲、人気の1~3番と比べるといくらか分かりにくい曲。このピアニストも個人的にあまり引っかかってこなかったのですが、セミファイナルでのラヴェルしかり、アンサンブルでの魅力を増幅させることができるピアニストなんだなという印象です。今回オーケストラとの共演でも埋もれない、むしろ引っ張っていくような演奏でした。

9月21日(土)19:00(日本時間 翌3:00)

Khanh Nhi Luong (Vietnam, 27) ※第2ラウンド ※セミファイナル
Sergei Prokofiev: Concerto No. 3 in C major, Op.26
/プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調

この曲は大好きで、今大会の彼女の演奏もステキだったのですが、、、この曲をコンクールであまり聴いたことがなかったですが、やはり難しい曲なんだなあと。1日目ファイナリスト3人の素晴らしい演奏が続いたので、筆者の中でハードルも上がっていたんだと思いますが。。。選曲によってもまた違ったかもしれない?かも??

Jaeden Izik-Dzurko (Canada, 24) ※第1ラウンド ※第2ラウンド ※セミファイナル
Johannes Brahms: Concerto No. 2 in B flat major, Op.83
/ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調

解説の方も “gigantic piece(巨大な)” だと紹介していましたが笑、単純に4楽章制50分もあり、そして内容も深く超絶技巧も散りばめられている、大家ブラームス晩年の協奏曲2番をコンクールで弾こうという胆力がすごいと思います。演奏はというと、今回他のファイナリストのライブ感の強い演奏・刺激を覚えていたため、彼はどちらかというと王道タイプで若干”置き”にいってる印象を受けました。それでも演奏が進むにつれて、重みのあるフォルテから、弱音高速パッセージで見せる星のような煌めき、ロマンチックな歌心、しかもミスタッチも最小限(コンクールでは意外と当たり前ではない)など、実力で捻じ伏せられた感じがします。今回も、予選ラウンドからずっとトップグループだったのではないでしょうか!優勝期待大!

・・・

2週間に及ぶリーズ国際ピアノコンクール、お疲れさまでした!応援していたジェイデン・イズィク=ジュルコさんの演奏はやはり圧巻でしたし、カイミン・チャンの完成度も高かった!そしてジュリアン・トレヴェルヤンジュンヤン・チェンさんも素晴らしいファイナルでした。優勝の行方は果たして、、、

結果発表は、21:30(日本時間 5:30)頃!

最終結果

https://x.com/leedspiano/status/1837864467511611704

最終順位
1位:Jaeden Izik-Dzurko (Canada, 24)
2位:Junyan Chen (China, 23)
3位:Khanh Nhi Luong (Vietnam, 27)
4位:Kai-Min Chang (China Taiwan, 23)
5位:Julian Miles Trevelyan (United Kingdom, 24)

賞金
1位:£ 30,000(約580万円)金メダル
2位:£ 18,000(約348万円)銀メダル
3位:£ 12,000(約230万円)銅メダル
4位:£ 6,000(約115万円)
5位:£ 6,000(約115万円)

特別賞
・アレクサンドラ・ダリエスク賞(£3,000):Junyan Chen, China
(女性作曲家による作品の優れた演奏者に贈られる)
・ヤルタ・メニューイン賞(£3,000):Junyan Chen, China
(室内楽の優れた演奏者に贈られる)
・ロイヤル・リバプール・フィルハーモニック協会賞:Kai-Min Chang, China Taiwan
(現代音楽の優れた表現者に贈られる)
・Medici.TV聴衆賞:Tomoharu Ushida, Japan
(Medici.tvを通じたオンライン投票)
・ヘンレ原典版賞(£3,000相当):Ryan Zhu, Canada
(ファイナルラウンドに進出しなかったピアニストで、アーティストとしての可能性が際立っていると映った者に贈られる

ジェイデン・イズィク=ジュルコが優勝という結果に!5月のモントリオール国際から早くも今年2冠を達成しました。インタビューの受け答えもいつも落ち着いており(年下とは思えない)、まさに人間性が演奏に滲み出ている感じがしますね。来年のショパン国際コンクールの出場権も獲得されたので、ぜひ出てくれたらいいな!ショパンもきっと素敵だろうな!!

カイミン・チャン4位ジュリアン・トレヴェルヤン5位という結果に。そうですか、まだまだコンクールを理解するのは難しいです。カイミン・チャンさんはソロから通して素敵な演奏でしたし、トレヴェルヤンさんはなんといってもバルトーク3番がよかったです。これからも応援したいです!

とはいえ、女性陣2人の演奏もよく甲乙つけ難いですね。ハン・ニ・ルオンさんはフォーレのヴァイオリンソナタ、ジュンヤン・チェンさんはラヴェルのピアノトリオとラフマニノフの協奏曲4番が特に印象的でした。

そして何より牛田智大さんが聴衆賞を受賞しました!そうこなくっちゃ。どちらかというと、大衆向けではないのかなと思っていましたが、十分にファンを獲得していて前途洋々ですね!今後の活躍に益々期待です。

個人的にも印象に残った弱冠20歳ライアン・ジュさんが、今後の発展を期待されるピアニストとしてヘンレ賞を受賞!ヘンレ原典版の楽譜(高いヤツ、、)がいっぱい買えるそうです。

・・・

2週間に及ぶコンクール、ご覧になったみなさまもお疲れさまでしたm(_ _)m

さすが歴史も権威もあるコンクール、全体的なレベルも高く見応えがありました。今回の受賞者たちはもちろん、みなさんの気になるピアニストの今後の活躍を期待して、今後も応援していきましょう!