こんにちは。いりこです。
2025年の大コンクールイヤーも落ち着いた頃、2026年のコンクールシーズンはアルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノコンクールから幕を開けます。
親の顔より見たといっても過言でないくらい、筆者が子どものころから聴いて育った大ピアニストの名を冠したコンクール。
3年に1度、テルアビブで開催され、過去にはダニール・トリフォノフやケヴィン・チェンなど、世界を席巻するピアニストたちが優勝しています。
2026年、日本からは八木大輔さんが出場。そしてこのブログでもお馴染みの注目ピアニストが多く出場します。
最新結果(随時更新)
大会の進行にあわせて随時更新していきます。各ラウンドの通過者・最終結果はこちらの欄にまとめていきますので、ブックマーク推奨です!
ルービンシュタイン国際ピアノコンクール|概要・ライブ配信・公式情報
【公式HP】https://arims.org.il/
【公式YouTube】https://www.youtube.com/@arthurrubinstein
※ライブ配信の視聴方法は追って更新します。
20世紀を代表する巨匠ピアニストアルトゥール・ルービンシュタインの名を冠し、1974年にテルアビブで始まったコンクール。第1回・第2回はルービンシュタイン本人が審査委員長を務めました。
コンクールの大きな特徴は、ファイナルで室内楽(ピアノ三重奏)・古典派協奏曲・グランド協奏曲の3種類を演奏すること。ソロの技巧だけでなく、アンサンブル能力・スタイルの幅広さが問われる、非常に総合力の問われる大会です。
- 概要
開催地:テルアビブ(イスラエル)※2026年は一部ドイツで開催
開催間隔:3年に1度(前回:2023年、次回:2026年)
歴史:第1回1974年
- 主な優勝者・入賞者
優勝者:エマニュエル・アックス(1974)、ゲルハルト・オピッツ(1977)、ジェフリー・ケーヘン(1983)、キリル・ゲルシュタイン(2001)、アレクサンダー・ガヴリリュク(2005)、ダニール・トリフォノフ(2011)、シモン・ネーリング(2017)、ファン・ペレス・フロリスタン(2021)、ケヴィン・チェン(2023)
入賞者:寺田悦子(1977年第3位)、イゴール・レヴィット(2005年第2位)、イリヤ・ラシュコフスキー(2011年第3位)、チョ・ソンジン(2014年第3位)、桑原 志織(2021年第2位)、黒木 雪音(2023年第3位)
ショパンコンクールで活躍したトリフォノフ、ケヴィン・チェンをはじめ錚々たる面々を輩出!直近では桑原志織や黒木雪音など日本人ピアニストの活躍も光ります。
- 審査員(2026年)
アリエ・ヴァルディ(審査員長)/マルタ・アルゲリッチ/ダニエル・バレンボイム/イェフィム・ブロンフマン/海老 彰子/タイシール・エリアス/イアン・ファウンテン(1989年優勝)/パヴェル・ギリロフ/ヨヘヴェド・カプリンスキー/エラ・ミルク=シェリフ/ピョートル・パレチニ/シン・スジョン
アルゲリッチにバレンボイム、ブロンフマンと、こちらもなかなかな豪華な面々!ショパンコンクールでお馴染みの海老さん、パレチニのお名前も。
【重要】開催地について
第18回大会は、現地情勢を踏まえた主催者の判断により、会場が二拠点に分けて開催されます。2026年3月31日に、主催者Arthur Rubinstein International Music Society(ARIMS)より発表されました。
- ステージ1・2(リサイタル/4月28日〜5月4日):ドイツ・クロンベルクアカデミー
主催者は、「イスラエルにおける安全上の継続的懸念(ongoing security concerns in Israel)」を理由として挙げています。 - ファイナル(室内楽・協奏曲/5月8日〜5月15日):イスラエル・テルアビブ
状況によってスケジュール通りに開催できない場合でも、中止ではなく、延期してテルアビブで開催する方針と案内されています。
アーティスティック・ディレクターのアリエル・コーエン氏は、以下のようにコメントしています。
“During a time when reality is complex and fragile, music serves as an anchor. It allows us to keep going, believe, and stay connected.”
「現実が複雑で脆くなっているこの時期にあって、音楽はわたしたちの錨(いかり)となります。音楽は、私たちが歩み続け、信じ、つながり続けることを可能にしてくれるのです。」
▼公式発表(出典)
主催者公式サイト:https://arims.org.il/
世界国際音楽コンクール連盟(WFIMC)報道:In the Face of Turbulence, the Rubinstein Competition Plays On
なぜイスラエルで開催されているの?
このコンクールの創設者はヤン・ヤコブ・ビストリツキー氏。ワルシャワでショパン研究所長やショパンコンクール運営を担ったポーランドの音楽行政家で、1971年にイスラエルへ移住、その3年後の1974年にこの大会を立ち上げました。公式サイトでは「ルービンシュタインの音楽的遺産を次世代に引き継ぐ重要性を認識した」のが創設の動機だったと記されています。
ルービンシュタイン本人もポーランド・ウッチ出身。Steinway & Sons公式によれば、第一次大戦(1914年)以降は生涯ドイツでの演奏を拒否し、自身のユダヤ系・ポーランド系のルーツを誇りに、「ユダヤ系およびポーランド系の大義」のために演奏したとされます。
1924年にはコンサートツアーの途中で当時のパレスチナ地域(テルアビブ=ヤッファ)に初訪問、1927年には現地で初の公式リサイタルを行い、収益はユダヤ民族基金に寄付したと、自伝『My Many Years』(1980)にも記されています。イスラエル公演にはしばしばノーギャラで臨み、その公演料を原資として1963年にエルサレムのヘブライ大学に「Artur Rubinstein音楽学講座」が設立され、同講座は現在も存続しています。
亡くなる9ヶ月前の1982年3月、当時のイスラエル首相メナヘム・ベギン氏に手紙を送り、イスラエルへの長年の支援を改めて表明。ベギン首相はルービンシュタインを「真のイスラエルの息子(a true son of Israel)」と呼んだとのこと(米国議会図書館)。
つまり、ポーランドで音楽行政を率いた人物が、移住先イスラエルで、共通のルーツ(ポーランド出身・ユダヤ系)を持つ世界的ピアニストの名と精神を引き継ぐコンクールを創設した、というのが大会の成り立ちです。ルービンシュタイン自身は晩年、第1回・第2回大会には審査委員長として臨席しました。
補足:メダルにピカソの肖像が刻まれている理由
コンクールで贈られる金・銀・銅メダルには、パブロ・ピカソが描いたルービンシュタインの肖像が刻まれています(Rules & Repertoire: The medals bear portraits drawn by Pablo Picasso)!
ルービンシュタインとはパリ時代からの旧友だったそう。コンクールメダルの肖像はこの友情の歴史を背景としたものです。
注目のコンテスタント
日本からは八木大輔さんが出場!
八木 大輔(やぎ だいすけ/2003)さん、神奈川県出身。「史上最年少」の肩書きが並ぶ異色の経歴で、数々のコンクールで最年少記録とともに第1位を受賞しています。
海外の注目ピアニスト
当ブログがこれまで取り上げてきた中から、特に演奏が印象に残っている/注目している海外勢を紹介します。
- ドミトリー・ユディン(Dmitry Yudin/ロシア、2001)
2024年ゲザ・アンダ国際で第2位(Daumants Liepiņšと同率)。ファイナルでのバルトーク「ピアノ協奏曲2番」を弾きこなす超絶技巧と、2次ラウンドでのモーツァルト「ソナタ18番」で聴かせる様式感の両方を備えた実力派! - ペドロ・ロペス・サラス(Pedro López Salas/スペイン、1997)
欧州各地のコンクールで入賞歴がある実力者。2024年リーズ国際や2025年ショパン国際でも個人的にはもっと聴いてみたいと思ったピアニストでしたので、また聴けるのが楽しみです。 - ロバート・ビリー(Robert Bily/チェコ、1997)
2024年浜松国際第6位、2025年エリザベート王妃国際でも記憶に新しい、独特で芳醇な世界観をもったピアニスト。 - ダウマンツ・リエピンシュ(Daumants Liepiņš/ラトビア、1995)
2024年ゲザ・アンダ国際で第2位(Dmitry Yudinと同率)に輝いた一人。 - シモン・ハジェ(Simon Haje/ドイツ、2005)
2025年クララ・ハスキル国際でファイナリスト。カラッとしていて安定した演奏が楽しみ。 - ティエンヨウ・リー(Tianyou Li/中国)
2025年ショパン国際ファイナリスト+ポロネーズ最優秀賞! - イタマール・ファインバーグ(Itamar Feinberg/イスラエル、2003)
2025年クララ・ハスキル国際で印象に残った一人。 - フィリップ・リノフ(Philipp Lynov/ロシア、1998)
2023年高松国際第1位、2023年ブゾーニ国際、2024年リーズ国際、2025年ショパン国際にも出場した常連格。 - サンドロ・ネビエリッゼ(Sandro Nebieridze/ジョージア、2001)
2025年ブゾーニ国際第2位。
なお、2025年ショパン国際で第5位入賞を果たしたピオトル・アレクセヴィチ(Piotr Alexewicz)は、当初の出場予定リストには名前がありましたが、現時点ではリストにお名前がありません。残念。
スケジュール
ステージ1(40名/ドイツ):2026年4月28日(火)~ 5月1日(金)
4月28日(火)11:00(日本時間18:00)、15:00(日本時間22:00)、19:00(翌2:00)
4月29日(水)10:30(日本時間17:30)、15:00(日本時間22:00)、19:00(翌2:00)
4月30日(木)10:30(日本時間17:30)、15:00(日本時間22:00)、19:00(翌2:00)
5月1日(金)10:30(日本時間17:30)、15:00(日本時間22:00)、19:00(翌2:00)
ステージ2(16名/ドイツ):2026年5月2日(土)~ 5月4日(月)
5月2日(土)11:00(日本時間18:00)、15:00(日本時間22:00)、19:00(翌2:00)
5月3日(日)11:00(日本時間18:00)、15:00(日本時間22:00)、19:00(翌2:00)
5月4日(月)11:00(日本時間18:00)、15:00(日本時間22:00)
ファイナル(6名/イスラエル):2026年5月8日(金)~ 5月15日(金)
室内楽:
5月8日(金)14:00(日本時間20:00)
5月9日(土)11:00(日本時間17:00)
古典派協奏曲:
5月10日(日)20:00(日本時間 翌2:00)
5月11日(月)20:00(日本時間 翌2:00)
グランド協奏曲
5月13日(水)20:00(日本時間 翌2:00)
5月14日(木)19:00(日本時間 翌1:00)
授賞式&優勝者コンサート:5月15日(金)11:00(日本時間17:00)
約2週間半に及ぶ長丁場。2拠点を移動しての開催となるため、例年以上に体力・集中力が問われる大会となります。
ルービンシュタイン国際コンクール 要項抜粋
出場資格:開催年(2026年)の暦年中に18歳~32歳であること。国籍は問わず。
審査員辞退条件:2025年8月1日以降に審査員(マスタークラスを除く)に師事した者は出場不可。
演奏ルール
・室内楽を除き、すべての演奏は暗譜。
・ステージをまたぐ同一作品の重複演奏は不可。
・各ステージで最大3分のアンコールを任意で追加可(演奏時間枠外)。
・指定の制限時間内に演奏が収まる限り、進行が中断されることはない。
放映・録音
・全ステージは公式によりライブ配信され、放送・映像化・CD化等の権利はArthur Rubinstein Societyに帰属。出場者への二次使用料は支払われない。
レパートリー
ステージ1(40名)
Recital. Duration of performance: 35-40 minutes.
/リサイタル形式。演奏時間:35~40分。
The Competitor may choose the repertoire and decide the playing order of the recital program in Stages I and II, but must include, either in Stage I and/or in Stage II, each of the following:
/ステージ1およびステージ2のリサイタル・プログラムにおいて、演奏曲目、また演奏順も自由に選択することができる。ただし、ステージ1および/またはステージ2のいずれかにおいて、以下の各項目を必ず含めること。(ステージ1とステージ2を通算して、以下の条件を満たせばよい):
- A CLASSICAL work/古典派の作品1曲
- A ROMANTIC work/ロマン派の作品1曲
- One mandatory piece to be chosen from a list of three pieces written by Jewish composers from the Holocaust period. The list will be disclosed by 15 January 2026. Duration of the pieces: 10 minutes.
/ホロコースト期のユダヤ系作曲家による課題曲1曲(事務局が示す3曲のリストから選択。演奏時間:約10分)
ステージ2(16名)
Recital. Duration of performance: 50-60 minutes.
リサイタル形式。演奏時間:50~60分。
(ステージ1参照)
ファイナル(6名)
ファイナリストは、下記3カテゴリーから1曲ずつ演奏。
A) Chamber Music/室内楽
下記から1曲。
- Beethoven: Piano Trio in G Major, Op. 1 No. 2
/ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第2番 ト長調 Op.1-2 - Beethoven: Piano Trio in E-flat Major, Op. 38, After the Septet, Op. 20
/ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 変ホ長調 Op.38(七重奏曲 Op.20 編曲) - Beethoven: Piano Trio in B-flat Major, Op. 97 “Archduke”
/ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 Op.97 「大公」 - Brahms: Piano Trio No. 1 in B Major, Op. 8
/ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調 Op.8 - Brahms: Piano Trio No. 2 in C Major, Op. 87
/ブラームス:ピアノ三重奏曲第2番 ハ長調 Op.87 - Dvořák: Piano Trio in E Minor, Op. 90 “Dumky”
/ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲第4番 ホ短調 Op.90 「ドゥムキー」 - Mendelssohn: Piano Trio No. 1 in D Minor, Op. 49
/メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 Op.49 - Ravel: Piano Trio in A Minor
/ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調 - Schubert: Piano Trio in B-flat Major, Op. 99
/シューベルト:ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 Op.99 D 898 - Schubert: Piano Trio in E-flat Major, Op. 100
/シューベルト:ピアノ三重奏曲第2番 変ホ長調 Op.100 D 929 - Rachmaninov: Piano Trio élégiaque No. 2 in D Minor, Op. 9 (1917 revision)
/ラフマニノフ:悲愴三重奏曲第2番 ニ短調 Op.9(1917年改訂版) - Tchaikovsky: Piano Trio in A Minor, Op. 50
/チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 Op.50
B) Classical Concerto/古典派協奏曲
下記から1曲。
- Mozart: Concerto No. 20 in D Minor, K. 466
- Mozart: Concerto No. 22 in E-flat Major, K. 482
- Mozart: Concerto No. 23 in A Major, K. 488
- Mozart: Concerto No. 24 in C Minor, K. 491
- Mozart: Concerto No. 25 in C Major, K. 503
- Mozart: Concerto No. 27 in B-flat Major, K. 595
- Beethoven: Concerto No. 1 or No. 2
- Hummel: Concerto No. 3 in B Minor, Op. 89
- Hummel: Concerto No. 5 in A-flat Major, Op. 113
C) Grand Concerto/グランド協奏曲
下記から1曲。
- Beethoven: Concerto No. 3, No. 4 or No. 5
- Chopin: Concerto No. 1 or No. 2
- Schumann: Concerto in A Minor
- Liszt: Concerto No. 1 or No. 2
- Brahms: Concerto No. 1 or No. 2
- Saint-Saëns: Concerto No. 2 or No. 5
- Tchaikovsky: Concerto No. 1
- Rachmaninov: Concerto No. 2 or No. 3
- Ravel: Concerto in G Major
- Bartók: Concerto No. 2 or No. 3
- Prokofiev: Concerto No. 2 or No. 3
「古典派・ロマン派・ホロコースト期ユダヤ系作曲家」の3本柱という構成は、ファイナルの「室内楽・古典派協奏曲・グランド協奏曲」の三段構えと並んで、本コンクールが「演奏者の総合性」を一貫して問うていることが読み取れます。ヘビーですね。。。
特にファイナルは、室内楽でアンサンブル感覚、古典派協奏曲で様式感、グランド協奏曲でスケール感と表現力——と、三晩で別人格を見せるような対応力が要求される構成です。
ホロコースト期のユダヤ系作曲家|課題曲の背景
ルービンシュタイン国際の大きな特色のひとつが、ホロコースト期(1933~1945年頃)に活躍したユダヤ系作曲家の作品を必ず1曲演奏することです。主催者が用意した3曲のリストから1曲。
この時代の代表的なユダヤ系作曲家には、ナチスによって強制収容所(テレージエンシュタット等)で命を落としたり、国外亡命を余儀なくされた以下のような人々がいます。
- ヴィクトル・ウルマン(Viktor Ullmann, 1898-1944):オーストリア=ハンガリー出身。テレージエンシュタット強制収容所で多くの作品を書き、アウシュヴィッツで亡くなる。ピアノ・ソナタ全7曲(うち5番〜7番が収容所内作)。
- ギデオン・クライン(Gideon Klein, 1919-1945):プラハ出身の若き作曲家・ピアニスト。ピアノ・ソナタ(1943)はテレージエンシュタットで作曲。
- ハンス・クラーサ(Hans Krása, 1899-1944):プラハ出身。子供向けオペラ「ブルンジバール」が有名。テレージエンシュタットで書き継がれた。
- エルヴィン・シュルホフ(Erwin Schulhoff, 1894-1942):プラハ出身。ジャズとクラシックを融合し、20世紀前半に独自の作風を確立。ヴュルツブルク収容所で死去。
賞金・特別賞
賞金
第1位:金メダル+$40,000(約600万円)+キャリア支援基金$10,000
第2位:銀メダル+$20,000
第3位:銅メダル+$10,000
※メダルは、アルトゥール・ルービンシュタインと親交のあったパブロ・ピカソがデザインしたもの。


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